青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。日々の情景の中を走る地方私鉄を追い掛けています。

もみじきららの秋を往く。

2024年11月16日 17時00分00秒 | 叡山電鉄

(爽秋の貴船口を往く@叡山電鉄900系)

爽やかな風が吹く貴船口の駅近く、鞍馬川の小さな鉄橋を渡って行くのは叡山ご自慢の観光電車「きらら」ことデオ900系。乗降口の部分の窓は天地に長く、そして側面の窓は天井まで巻き込むような位置にもセットされていて、観光電車らしく眺望を重視した大きな窓が特徴。京都盆地の通勤通学輸送と、四季折々の風景を彩る貴船・鞍馬の観光輸送。春の桜や初夏の青葉、夏の新緑に二ノ瀬・貴船の秋の紅葉、そして冬は雪が降り積もることも珍しくない修験の里の鞍馬の山へ。叡山電車の役割は、地元輸送と観光輸送のハイブリッド。出町柳の駅の雰囲気から何となく感じていたのですが、叡山電車には江ノ電っぽさがだいぶ入っているように思う。デオ900系は、そこに箱根登山電車の山登りの要素がチョイと加わった、そんな感じの車両でもあります。

鞍馬行きの電車を見送り、貴船口の駅へ戻ると、折り返したきらら号が紅葉の青葉を横目にやって来た。電制を効かせて山を下りる900系。二ノ瀬~市原間には、通称「もみじのトンネル」と言われる区間があって、秋の紅葉の季節になるとこの「もみじのトンネル」はライトアップされて、その中を車内の照明を消した列車が通り抜ける・・・というのが恒例のイベントになっています。10月の半ばだと、流石にまだ色付く雰囲気すらかけらもなかったですが、青いもみじのトンネルも清々しいものです。そろそろ秋の京都も紅葉の時期になりますが、色付いたらさぞかし素晴らしい光景なのでしょう。まあ、紅葉の時期の京都なんて地獄のように混んでるでしょうから、個人的にはカネ貰っても行きたくありませんが・・・週末なんかは大勢のお客さんで叡山電鉄もかき入れ時になるのでしょうね。

秋深し 紅葉回廊 夜に咲く。

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鞍馬、クラファン、ケーブルカー。

2024年11月11日 22時00分00秒 | 叡山電鉄

(開山1200年の歴史@鞍馬寺)

さて、せっかく鞍馬まで来たことだし、トンボ帰りするのも勿体ないので鞍馬の山にお参りをして行こうと思います。別にそこまで寺社仏閣の類が好きなわけでもないんだけど、どうも旅先ではその土地土地の神社仏閣を訪ねることが多い。これは、日本のいわゆる「中小地方私鉄」というもの、大半の開業理由が1.鉱山型、2.温泉型、3.寺社仏閣型のどれか、というのが実感としてあって、必然的に「沿線で何かをする」ことの中に「お参り」が入ってくることが多いからだ。関東や京阪神の都市間鉄道(例えば新宿~八王子の京王帝都電鉄とか)は概ね大手私鉄になってしまうから、地方私鉄は「確たる目的」を持って作られ、そしてその目的のために生き残っているものが多い。鉱山型・・・は、今残っているので代表的なところでは三岐鉄道(藤原岳からのセメント輸送)ですかね。昔は石炭(三菱大夕張)硫化鉄(同和鉱業片上)とか亜鉛(栗原電鉄)、ニッケル(加悦鉄道)、硫黄(松尾鉱山)などの鉱物を運搬する小私鉄が全国にあったものですが、もはや日本では絶滅危惧種でもある。2。の温泉型は定山渓鉄道、山形交通の湯野浜線、花巻電鉄、北陸鉄道の廃止路線(山中線・山代線)、現役では福島交通(飯坂温泉)、上田交通(別所温泉)、神戸電鉄も祖を辿れば有馬温泉を目指した神戸有馬電気鉄道に行き当たる。

そして3.の寺社仏閣型。なんだかんだこれが一番多いんじゃないですかね。ここ叡山電鉄の鞍馬線がそうだし、同じ関西では水間鉄道(水間観音)、能勢電鉄(妙見山)、南海電鉄の高野線だって高野山への参詣鉄道である。特に関西は、この「お山の神社仏閣」×「鉄道線」×「鋼索線」のコラボというものが異常に多い。高野山も南海電車とケーブル連絡、妙見山も廃止されてしまったが能勢電の妙見口からケーブル&リフトで連絡、近鉄の生駒山(宝山寺)や信貴山にも生駒ケーブル・信貴山ケーブルがあって、そして「叡山」こと比叡山には、京都側からは比叡山ケーブルとロープウェー、そして滋賀県側からは坂本ケーブルが繋がっている。

そして、ここ鞍馬山にも「鞍馬ケーブル(鞍馬山鋼索鉄道)」があって、麓の鞍馬山の山門と本堂近くまでを結んでいる。途中で交換することのない全線単線のケーブルで、搬器も少し小ぶり。鞍馬山で天狗相手に修業を積んだ牛若丸にちなんで「牛若號Ⅳ」という名前が付いている。高低差90m程度、距離は僅か207mしかなく、この鞍馬山のケーブルが「日本一短い鋼索鉄道」ということになるのだそうです。いわゆる一般的なケーブルカーだと、路線の真ん中あたりで上り下りがすれ違いますよね。両方の搬器を釣瓶のようにして動かすことにより重さのバランスを取る訳でありますが、この鞍馬山のケーブルは全線単線。そのため、対になる搬器の代わりに、鋼索にはカウンターウエイト(おもり)を結び付けているのだそうです。

そして、この鞍馬山鋼索鉄道の特異なところと言えば、なんと言ってもお寺(鞍馬寺)が直営している・・・ということ。宗教法人が運営する日本で唯一の広義の鉄道(鋼索線)ということになりますが、そのため、運賃は「御寄進票」ということで寄付扱いになっておるのですね。宗教法人でも営利でやったらその売り上げは課税対象になってしまうから、あくまで鞍馬寺に「御寄進」をいただいた方々に、お礼としてケーブルカーの乗車を認めるという考え方で運営されています。なんかあれだな、寄付への返戻が乗車の権利という考え方は、今流行のクラウドファンディング的な考え方だな(笑)。

ということで、御寄進200円を納めさせていただいて訪れた鞍馬寺なのですが、「来年まで塗装工事中」ということで本堂の姿が全く見えなかった(笑)。なんともまあ締まらない話である。ってかね、夏の大宰府に続いてまたですかという感じで笑ってしまったよ。どうして私は「旅先の寺社仏閣に訪問した際に、そこが何故だか工事中」という輪廻から抜けられないのであろう。なんかこんな感じで方々の神様仏様の覚えが悪かったりするのは、やはり「普段のおこない」ということなのだろうか。悔い改めるべく、線香に火を付けて祈る初秋の鞍馬山。石段を登った背中に、一筋の汗が流れました。

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天狗の山のフトコロへ。

2024年11月09日 08時00分00秒 | 叡山電鉄

(未だ青葉の貴船の森よ@貴船口駅)

宝ヶ池の駅でやって来た鞍馬行きに飛び乗る。京都精華大前駅あたりまでは、学生や沿線住民の乗り降りもあったものの、二軒茶屋の駅を過ぎたあたりからは乗客は貴船や鞍馬方面へ向かうハイカーたちが中心となった。車窓の風景も、それまでの住宅街から洛北の山並みの裾に取りつき、目に飛び込んでくる緑の木々が鮮やかである。叡山電車の駅は基本的に無人で、乗降は車内の運転台脇にセットされたICカードリーダーか、駅のホームに置かれたカードリーダーにタッチするのを車掌氏が目視するというスタイル。乗降扱いをしながら車内と車外を行ったり来たり忙しくしているのだが、「ここから先は山の中に入って参ります、電波が悪くなりますので、モバイル系の乗車券をお持ちの方、チャージなどは早めにお済ませください・・・」という注意喚起の声掛けがあったり。切符を売るような車掌の仕事はなくなってしまったけど、そーいう声かけの仕事が新たに加わっていたりして、現代風だなあと思ったり。

市原から二ノ瀬にかけてまだまだ青葉の紅葉のトンネルを抜け、二ノ瀬で下り列車と交換。貴船口を出るといよいよ列車の目前に山は迫り、小さなトンネルをひとつ抜けると列車はスピードを緩め、終点の鞍馬の駅に到着する。山深く見えて未だに標高は230m程度、出町柳の駅からは180m程度を登って来たことになる。鞍馬の駅は頭端式の1面2線。決して大きくない叡山電車の2両の車体がギリギリに収まる長さのホームは、鞍馬山と対を成す龍王岳の間を流れる鞍馬川(鴨川の上流)との間の谷間にあって、僅かに開けた平地に押し込むように作られた、小さな山の終着駅である。

ホームでゆっくり終着駅の雰囲気を味わいたかったのだが、列車別改札で乗降を区切っているようで、駅員氏から「早く出てください」と駅からの退去を命ぜられて、すごすごと駅の外に出る。鞍馬の駅は「近畿の駅100選」にも選定された由緒ある駅で、鞍馬寺の参詣駅として社寺建築を模した造りになっている。駅前は鞍馬寺への参詣客と、周辺の山々をトレッキングするハイカーたちで賑わっていた。ちょっと人の引けた隙にこの一枚を撮影しているのだが、好天に恵まれた三連休の午前中ということで乗客は多かったですね。そしてさすが京都、その半分くらいが外国人のグループでインバウンドの勢いがハンパない。そして、折角の雰囲気のある駅なのに、駅の脇には観光客が残していったであろう山と積まれたゴミがあって殺風景である。ここ鞍馬でも、オーバーツーリズムの問題は顕在化しているのかもしれない。

奈良時代に鑑禎上人によって開山され、1200年の歴史を誇る鞍馬山。駅前は、何軒かのお土産屋と喫茶店が肩を寄せ合う小さな門前町であった。鞍馬山自体が、京の都の遠く北にある深山の霊山として崇められていたためか、華やかさとは無縁の、ひっそりとした山里という趣だ。駅前からしてお土産屋さんの雰囲気がいい。華美ではなく、どっしりした瓦屋根の二階家。鞍馬名産・木の芽煮と松茸昆布。京都らしいお土産だ。松茸・・・なんて言われるとそれなりのお値段を想像してしまうのだが、店先を冷やかしてみるとそうでもなかった。どのくらい松茸が入っているのかは定かではないが、流石に輸入ものだろう。京都は丹波を中心に松茸が有名だが、そんなところの天然ものを使ったらそれこそ目の玉が飛び出るような値段になってしまうに違いない。

そうそう、鞍馬と言えば、「鞍馬天狗」の故郷。かの牛若丸こと源義経も、若き頃に鞍馬山にこもり、鞍馬天狗の手ほどきを受けて武術を学んだのだそうな。「♪京の五条の橋の上 大の大人の弁慶は 長い薙刀(なぎなた)振り上げて 牛若めがけて 切りかかる・・・」。童謡「牛若丸」に唄われた「京の五条の橋」は、現在の国道1号線の五条大橋のこと。鞍馬から五条大橋までは、今では出町柳で京阪電車に乗り換えて清水五条まで45分程度ですが、その昔の昔、京の都から鞍馬の山は、それはもう遠く離れた山奥の修験場というイメージであっただろう。鞍馬天狗の正体は、鞍馬山大僧坊と呼ばれた伝説の修験者であるとされますが、その正しいところはよく分かっておりません。

大きな鞍馬天狗のお面の奥、ちょっと目立たないところに、昭和の時代の叡山電車のエースとも言える「デナ21」のカットモデルが置かれていました。叡山電車と言えばこのモスグリーンにベージュのカラーリングですよね・・・。「京都の名車御三家」と言えば、個人的には京阪京津線の80形、京都市電の1900形、そして叡山電鉄のデナ21じゃないかと思っておるんですがどうでしょう。京都電燈時代からの歴史ある車両ですから、惜しむらくはカットモデルじゃなくて丸で保存しておいていただきたかったと思うのですけど、財政の厳しい中ではそれはなかなか難しかったのでしょうかね。

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宝ヶ池で考えた。

2024年11月04日 13時00分00秒 | 叡山電鉄

(ばっさりとした分岐駅@宝ヶ池駅)

叡山電車の宝ヶ池駅。ここで、鞍馬線と叡山本線が分岐します。複線から複線をバサッと分けるこのシンプルな配線がなんとも関西の私鉄っぽさっがあるよね。これは感覚的なものなのかもしれないけど、関東の私鉄って駅を出てから本線と支線が分かれて行くけど、関西の私鉄って駅の前で本線と支線の系統が分かれて行くイメージがある。代表的なのが阪急電車(能勢電鉄を含む)の配線なんですけど、南海の岸里玉出とか、京阪の中書島とかもそうだよね。関東の場合は、東京へ向かう本線筋に対して従する支線筋という明確な主従の関係があるけれど、関西は京阪神+奈良・和歌山という拠点がそれぞれの求心力を持ってネットワーク化しているから、どっちが主従ということもないからなのかな。あと、系統別で複々線を採用する区間が多いってのもあるかもしれない。

宝ヶ池の駅は3面4線。叡山本線と鞍馬線がそれぞれ相対式にホームを持ち、その間に挟まれたホームは島式。関東の私鉄だと、2面4線にしてそれぞれのホームで八瀬比叡山口・鞍馬行きの上下の電車を発着させそう。前述しましたが、分かりやすく言えば関東は「方向」でホームを分けるけど、関西は「系統(路線)」でホームを分ける傾向があるので、違うホームから同じ行き先の電車が出ることがある。これが関東から来ると慣れんのよね。ここ宝ヶ池駅と関東代表として東武動物公園駅小平駅をどちらも公式のHPのリンクで見比べていただきますが、宝ヶ池の駅から出町柳行きに乗ろうとすると、駅の案内をよく見ないと「次の出町柳行きはどっちのホームから出るかが分からん」ということになる。関東だと、だいたい方向別にまとまっているから同じ行き先の電車は同じホームから出発するんだけど、割と関西は「系統別」のホーム分離も幅を利かせていますよね・・・その極め付けが阪急の大阪梅田とか十三なんですけど。

本線・鞍馬線の分岐を渡って宝ヶ池の駅に進入する叡電の800形。大きな窓に前面の後退角、ストライプのデザインと居並ぶ抵抗器が、調べなくても絶妙に平成初期の電車のテイストって感じがする車両である。ここらへんがストライクゾーンの人って結構多そう。鞍馬の山を登り降りするために、強力なモーターと制御装置を備えているオール電動車編成。標高で言えば出町柳が約50m、宝ヶ池で90m弱、終点の鞍馬で230m強。比高では180m程度なるも、二の瀬駅周辺からは50‰の勾配を示す場所もあって、洛北の登山電車という感じの重装備を施してあります。当然、叡電も「パーミル会」に所属しています。

宝ヶ池では、鞍馬の山から下って来た叡山電車のエース「きらら」ことデオ900形と並びました。この「デオ」という型式、叡山電車独特のもので、電動車の「デ」、大型車の「オ」で=「デオ」という型式が採られています。じゃあなにかい、小型だと「デコ」なのかい。と思わず江戸っ子のクマさんが身を乗り出して来そうなのですが、「デコ」という型式の採用は過去の叡電の歴史上でもありません。その代わりと言っちゃあなんですが、昔の叡電の車両にはもう一つ「デナ」という型式がありましてな。デは分かるけど、ナってなんだよって思うじゃないですか。これが「中型(ナカガタ)」の「ナ」のことなんだそうです。思わず「チュウガタじゃないんかい!」って言いたくなりますよね。そういうもんらしいです(笑)。

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秋の京都、洛北に続く鉄路へ。

2024年11月02日 17時00分00秒 | 叡山電鉄

(カップルの聖地@秋の鴨川)

長々と夏の九州遠征の話をしていたら11月になっていた。まあ、夏の九州遠征以降大したことをしていなかったからいいんだけどさ。秋になると、やたらと三連休があるのがいいとこでもあるけど、特に9月は最近天候が安定しない+半期の締めで仕事が忙しい+夏にお金を使い過ぎてサイフが寒いという三重苦で実質何も出来ないことが多いんですよね。少し前までは秋は富山に行くことが多かったのだが、富山は8月のアタマに行ったのでちと間隔が短いなあと。ここのところはリピーター路線もいいのだけど、意識して「乗っていない路線」を潰し込むことも大事かなあってんで、初秋の京都に行ってきました。毎度おなじみ新横浜始発の「ひかり533号」で2時間。あっという間の京都である。初秋、って言っても10月の三連休なんだが、気温とか木々の色付きなんかは9月だったような。自分の子供の頃と比べて、季節の進みが一ヶ月遅いんだよね。夏が5月と9月に出っ張って来てて、その分春と秋が引っ込んでる。

朝もはよから元気なカップルとインバウンドだらけの鴨川を渡って、やって来たのは出町柳駅。はい、今日は京都の洛北・鞍馬や比叡山に向かう叡山電車に乗りに来たんですよね。叡山電車、昔は京福電気鉄道の傘下にあって、出町柳からの叡山本線と鞍馬線、そして四条大宮と北野白梅町から嵐山へ向かう嵐電が京福電鉄の「京」の部分を担っておりました(「福」の部分は現在のえちぜん鉄道)。隣県とはいえ、路線を接することなく鉄道事業を行っていた経緯は、両社が「京都電燈」という電力会社の傘下にあったことによります。京都電燈は、京都では蹴上発電所、福井では九頭竜川水系の水力発電所を経営しており、安定した電力の消費先としてそれぞれの府県での鉄道経営が選ばれた・・・と言う訳です。それにしても、新幹線で京都着いてから出町柳って行くのめんどくせえよな。JR京都→地下鉄烏丸線で烏丸御池→地下鉄東西線に乗り換えて三条京阪→京阪鴨東線に乗り換えて出町柳が正しいんだろうけど、乗り換えも面倒だし京阪電車の運賃も勿体ねえから地下鉄烏丸線の今出川から出町柳まで歩いてしまったよ。歩いても同志社大学の前を通って20分くらいだし。

叡山電車の出町柳の駅は、串型ホームの4面4線。何となくこう、せせこましさの中にホームごとの乗降機能を切り分けている感じに、江ノ電の鎌倉駅がフラッシュバックする。どちらも古都を走る伝統の中小私鉄、という共通点がそうさせるのであろうか。地下には京阪電車の鴨東(おうとう)線の出町柳駅があって、京都市内中心部や大阪方面へのアクセスを担っています。京阪電車が三条~出町柳間の2.3kmを開通させたのは1989年(平成元年)のことですが、1978年(昭和53年)の京都市電全廃以来、叡山電車は長いこと鉄道線との接続のない離れ小島となっていました。離れ小島となった叡山本線・鞍馬線は当然ながら経営が傾き、1985年に京福電気鉄道からの分社化によって経営の立て直しを図るもはかばかしい効果は得られませんでした。89年、悲願の鴨東線開通により客足の回復は図られたものの、最終的には積み上げてしまった累積の負債を解消するために1991年(平成3年)に京阪が大幅な出資比率の引き上げをおこない叡電を救済。2003年に100%出資となり、叡山電鉄は京阪の完全子会社となっています。

駅のホームの右側は、鞍馬まで行く2両編成が止まるホーム。左側の短いホームは、途中の宝ヶ池から分岐して八瀬比叡山口に向かう1両編成の電車が止まるホーム。この2系統が交互に発車していくダイヤになっていて、分岐駅の宝ヶ池までは日中でもかなりの頻繁運転がおこなわれています。ちなみに、1両より2両の方が格上っぽい感じもありますが、実際は出町柳~宝ヶ池~八瀬比叡山口が叡山「本線」で、宝ヶ池~鞍馬は鞍馬線なのであくまで支線の扱いなんですよね。なんにせよ「叡山」電鉄なので、比叡山に向かう線路が本線筋という理解になる。鞍馬方面と比叡山方面、ただ、どっちのほうがお客さん多いんだろう・・・と考えると、宝ヶ池から先も京都市内の住宅街になっている鞍馬線の方が沿線住民+観光客の効果で乗客の流動が強いように思う。だからこそ鞍馬行きが2連の運用なんだろうし。

どっちに乗って行くか決めかねていたのだが、とりあえず先に出る八瀬比叡山口行きに乗ってみることに。寺社仏閣だらけの古都の駅でも、ホームにハロウィンの飾りつけは日本らしいよなあ。深い藍色の単車は叡山電鉄の700系。叡電の旧型車や京阪電鉄京津線で余剰となった旧型車などの足回りを使い、新造のボディを乗せて阪神電鉄傘下の武庫川車両工業で仕上げたワンマン対応の車両。現在は京阪の子会社ですが、叡電自体の車両は京福電鉄時代から繋がりのある武庫川車両工業のものが多いみたいです。福井の京福も、阪神電鉄から譲り受けた車両を結構使ってましたからねえ。

好天の秋の三連休ですから、単行の車内は観光客と地元の乗客と学生でほぼ満員の混雑。
洛北に続く鉄路を、ひとまず宝ヶ池まで乗ってみます。

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