tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

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すさまじきもの

2006年01月15日 | 日々是雑感
すさまじきもの(興ざめなもの)といえば、『枕草子』第22段である。
「昼吠ゆる犬、春の網代(あじろ)、3、4月の紅梅の衣(きぬ)」で始まる。犬は夜吠えるものだし、網代は冬に氷魚(ひお)を取るもの、紅梅の重ねは11~2月に着るものだ。

この段は後に、牛を亡くした牛飼い、炭の入っていない火鉢、と続く。「みやげ物がついていない地方からの手紙」(ひとの国よりおこせたる文の、物なき)というくだりもあり、清少納言の「おねだり女」ぶりがうかがえて興味深い。

ところで、私が思わず「興ざめだなぁ」とつぶやいてしまうのは、同僚と飲みに行って「だし巻き卵」を注文された時だ。近所のスーパーで、卵が1パック(10個入)120円だったことなどを思い出し「卵を3、4個使って36~48円。ひと皿が500円だから、粗利(売価-原価)は452~464円。粗利率は9割!」などと、たちどころに計算してしまう。
『居酒屋はなぜ潰れないのか?』なら私にも書けそうだ。

小売店で最も粗利の多い業種はメガネ屋だそうだが、それでも粗利率は7~8割どまりだ。これは「技術料」ともいえる。しかし、だし巻き卵を調理する技術料とは、如何。

実は、私はだし巻き卵を焼くのが得意である。焦げ目をつけず、きれいに巻き上げたときの喜びは何ものにも代え難い。少し練習すれば、誰でも簡単に習得できる「技術」である。

辞書によれば「すさまじ」とは「自分の期待や感情が、時期や周囲と調和しないことからくる空白感、そして不快感をいう語」だ。今のように「程度が甚だしい」場合に使うのは「中世以降の用法」だそうだ(『最新詳解古語辞典』明治書院)。

だし巻き卵は「家でカミさんが作ってくれないから、仕方なく外で食べるのだ」と言い訳する朋輩もいて、それでまた、程度の甚だしい「空白感」に駆られてしまうのだが。
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