tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

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金田一先生の日本語おもしろ塾

2008年01月29日 | 日々是雑感
方言の話が出たので、続けて言葉づかいの話を。1/21(月)、テレビでおなじみの金田一秀穂(きんだいち・ひでほ)さんの講演を聞いた(時事通信社「内外情勢調査会奈良支部」1月懇談会)。タイトルは「金田一先生の日本語おもしろ塾」だ。

金田一さんの祖父は京助氏、父は春彦氏である。秀穂さんは杏林大学外国語学部教授で、NHKの「知るを楽しむ」や日本テレビ系の「世界一受けたい授業」などで広く知られている。

講演の最初はクイズだった。「三つ辻」の意味の日本語は、「ていじろ」と「てぃーじろ」のどちらが正しいか。

私はこれだけ間違えてしまった。正しくはていじろ(丁字路)だそうだ。つまり甲乙丙丁の「丁」だ。ローマ字の「T」ではない。もちろん辞書には両方出ているが、例えばNHKの7時のニュースなどでは「ていじろ」と言うことになっているそうだ。

あと、シミュレーションかシュミレーションか、アボカトかアボガドか、「流れに掉さす」は流されるのか逆らうのか、「気のおけない人」と言われて喜んで良いのかいけないのか…など。この正解は、すべて前者であった。

しかし金田一さんは、あまりこういう細かいことに気を回す必要はない、意味が通じれば(共通理解・共通認識があれば)それで良いという。大切なのは、心地よい日本語を使うことなのだそうだ。言葉は時代と共に変化するものだから、気持ちに一番ピッタリくる言葉で話せば良いのだ。

言語は変化する(変化しないのは、ラテン語のように生きている人が使わないような言語だけ)。だから今の若者言葉も、言葉が乱れていると嘆くのではなくて、言葉が変化していると理解すれば良い。

よくやり玉に挙げられるコンビニの接客用語もそうで、例えば「こちらは新発売の缶コーヒーになります」の「~になります」は、「~です」と「~でございます」の中間の丁寧表現。「~です」ではぞんざいだし「~でございます」はバカ丁寧。だから「~なります」と言う。大阪弁なら「~でおます」で済ますところだが、そういう中間的な言葉がないので「~になります」となる。

「~の方」(ほうほう言葉)というのもそうで、ズバリの実体を指す代わりに方向を示すことで丁寧さを表現している。これは昔からあった表現で、「この人は」の代わりに「こちらは」「この方は」、「きみ」の代わりに「あなた(貴方)」というのと同じ。

「大丈夫ですか?」(~で良いですか?)も同じく、やや距離を置いた言葉。またコンビニに入店したときの店員のあいさつ「いらっしゃいませ~」は、語尾が下がる投げやりな発音だが、学生に聞くと「いちいち誠意を込めて言っていると、体が持たない」という。それも理にかなったことである。

金田一さんは、これらは言葉が変化していることの表れなのだから、いちいち目くじらを立てる必要はないという(それより、ビジネス用語の「御社」とか社名に○○さん、とさん付けする方が気味が悪い、とおっしゃる)。

締めくくりに金田一さんは、野口英世の母からの手紙を例に「あなたが一番 伝えたい人に対して、“伝えたい”と強く願う気持ちが大切で、その気持ちがこもった言葉、日本語こそが相手にとって心地よくもあり美しい」と、改めて“心地よい日本語”の大切さを強調されていた。

とかく私たちは「今の若者言葉はなっとらん」と嘆いてそれで終わっているが、さすが金田一さんは、深く考察されている。中年には、とても参考になった講演会であった。
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