tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

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吉田さらさ著『京都、仏像をめぐる旅』

2008年06月17日 | ブック・レビュー
吉田さらさ著『京都、仏像をめぐる旅』(集英社be文庫 840円)を読んだ。プロローグで著者自らが《要するに、ミーハー仏像マニアによる熱烈ファンブックと思っていただければいい》と書いているように、これはいわば、ヨン様ならぬ「仏さま追っかけ本」である。

しかし決してひとりよがりのマニア本というのではなく、きちんとした知識と経験を踏まえて書かれた格好の仏像入門書であり、手軽な京都案内本でもある。何しろ吉田さんは『お寺に泊まる 京都散歩』(新宿書房)や『奈良 寺あそび、仏像ばなし』(岳陽舎)という本も書かれているのだ。
※参考:吉田さらさ著『奈良 寺あそび、仏像ばなし』(当ブログ内)
http://blog.goo.ne.jp/tetsuda_n/e/c00668a6fdbea0db19d168daf29d70e1

奈良市民として嬉しかったのは、本文の書き出しが《京都へ行く前に、ぜひ見てほしいのは、奈良の大仏様》だったことだ(基礎編その一)。奈良公園の鹿や大仏のカラー写真も登場する。

京都の前に《まずは、日本における仏像始まりの地、奈良に行き、そもそも仏像って何なのかというお話から始めたいと思います》として、螺髪(らほつ=頭のパンチパーマ)、肉髻(にくけい=頭頂の盛り上がり)、白毫(びゃくごう=眉間のほくろ状の毛)や仏像組織図(如来>菩薩>明王>天)の説明がある。それが分かりやすくて面白い。イラストもついているので、仏像に慣れていない人でも、すらすらと頭に入ることだろう。

P28の「基礎編その二」で、やっと《京都の基本四寺を歴史順に巡ろう》となる。基本四寺とは、広隆寺、東寺、平等院、三十三間堂のことだが、これは良いところを突いている。「庭の京都」に対し、「仏像と建築物の奈良」といわれる奈良がライバル視している京都の寺が、この四寺なのだ。


三十三間堂(07.5.26撮影)

吉田さんの自著紹介文には、《京都で仏像を見るコツは、まず、基本的な四つの寺を歴史順に回り、じっくり仏像と対面しながら基礎力を身につけること。その後、その基礎力を使って各自、好きな寺をゆっくり歩きます。この本を持って京都を歩けばこれまでまったく仏像について知らなかった方も、一通りのことがわかる仕組みになっています。仏像の歴史的意義を学び鑑賞法をマスターしたら、各自の感性で、自分だけの素敵な仏像を見つけてください》とある。前著の『奈良 寺あそび、仏像ばなし』と同様、面白くてためになる堂々の仏像手引き書なのである。
http://books.shueisha.co.jp/CGI/search/syousai_put.cgi?isbn_cd=978-4-08-650146-0


鞍馬寺山門(07.3.22撮影)

基本四寺や応用編6コースをたどりながら、話はよく横道にそれるが、それがまた本書の魅力である。平等院ミュージアムショップの仏像トランプや、しば漬けの「ニシダや」(泉涌寺コース)に触れることも忘れない。

著者自ら撮った写真や図版を駆使し、肩肘張らずに読める叙情エッセイである。吉田ワールドの面白さが堪能できるこの文庫本を、ぜひお読みいただきたい。

※冒頭の写真は、花空間けいはんな(京都府相楽郡精華町)で08.6.22撮影。
コメント (2)
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