tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

コロナも落ちつき、これからが観光シーズン、ぜひ奈良に足をお運びください!

社会実験「奈良公園ぐるっと電気バス」

2008年11月09日 | 奈良にこだわる
11/8(土)・9(日)の両日、午前9時から午後5時まで「奈良公園交通社会実験」が行われている。この実験では、奈良公園内の通行規制、周遊バス・シャトルバスの運行、歩道拡幅が3点セットになっている。とりわけ話題になりそうなのが、奈良公園周辺を回る電気バスだ。
http://www.kkr.mlit.go.jp/nara/yamatokita/pdf/center/4/sanko.pdf

「県政公開ニュース」(9/25)によると《奈良県では、観光客の方々に快適に奈良公園を訪れてもらうため、公園内での観光客の安全性、回遊性を高める施策の導入を検討しています。(中略) そのため、交通規制を実施し、それに伴い発生が予測される交通渋滞に対して、対策の有効性の検証も行います》。

社会実験の内容は《①仮歩道の設置 県庁東交差点~大仏前交差点間の北側車道1車線を仮歩道とし、歩行の円滑性、安全性を確保します。②周遊バスの運行 県庁~東大寺~若草山麓~春日大社を結ぶバスを走行させ、観光客の周遊性を高めます。ガスやCO2を排出しない電気バスも2台走行します(19便)》。

《③パークアンドライド駐車場からのシャトルバスの運行 交通渋滞対策として、奈良市役所、国道24号高架下のパークアンドライド駐車場から県庁、ならまちを結ぶ無料シャトルバスを運行します。周遊バスへの乗り換えもできます。(奈良市) ④交通規制 上記に伴い、県庁東交差点~高畑町交差点間で反時計回りの一方通行規制を実施します。県庁東交差点から奈良公園向きは車両の進入ができません》。
http://www.pref.nara.jp/koho/hodo/h20/html/130900-080922184252_M13929.html

1300年祭を控えた渋滞対策として、また電気バスは環境に配慮した取り組みとして、意義のある実験だ。早速、体験してみることにした。

私の場合、自宅(奈良市西郊)から車で奈良市役所に向かい、そこに駐車(無料)。市役所前から「なら・まちなかバス」(奈良交通の小型バス・無料)に乗りJR奈良駅・ならまち・大乗院庭園を経て、奈良県庁へ。県庁前広場で「奈良公園ぐるっとバス」(電気バス・無料)に乗り換え、浮見堂~新公会堂~若草山麓~春日大社本殿~国立博物館を通り、県庁に戻るというルートになる。おカネは全くかからない。


きれいに色づいたナンキンハゼ(11/8撮影。以下同じ)

朝から出ようとしたが、昨日(11/8)はあいにくの雨だった。お昼前には上がったが、この時間帯は市役所に向かう道が混む。少し時間をズラして午後3時に自宅を出た。市役所の駐車場に着いたのは3時40分。ここで45分発の「まちなかバス」に乗り込んだ。乗客は私を含めて4人(うち1人はこの実験のスタッフ)だった。


私が乗ってきた「なら・まちなかバス」(県庁前)

午後4時10分、県庁前に到着。まもなく「ぐるっとバス」が出発するという絶好のタイミングだった。この「ぐるっとバス」は5台あり、2台だけが電気バス(北陸電力および早稲田大学が所有)だそうで、私は運良く写真の北陸電力の電気バスに乗車できた(4時16分に発車)。






こちらは早稲田大学の電気バス

車内には、電力の使用状況などを表示する液晶パネルがついている。私は会社のプリウスに乗ったことがあるが、よく似た感じだ。プリウスも発進時は電力でスーッと(ニュートラルで坂を降りる感じで)走り出すが、このバスも同じで、とても静かだ。車内では、北陸電力の方の説明があった。日本に電気バスはまだ5台しかなく、そのうち2台が今回の実験で奈良に来ているのだという。このバスの電源は、20cm四方ほどの薄いリチウムイオン電池で、これを1680枚も使っているそうだ。





バスは浮見堂を経て、大仏前交差点を東に入る。朝からの雨に洗われてみずみずしい紅葉・黄葉に、車内で歓声が上がる。







若草山麓(4時30分)から春日大社(35分)を回り、県庁が近づいてきたが、バスで一周するだけで終わっては味気ないので、国立博物館前で下ろしてもらった(4時40分)。正倉院展には、相変わらず長蛇の列ができていた。午後5時に点灯される「なら燈花会(とうかえ)in正倉院展2008秋」に備えて、ろうそくを浮かべるカップが並んでいる(11/7は雨で中止になった)。この夜は、二胡(にこ)の演奏も行われたそうだ。



「まちなかバス」の窓から見えた荒池(奈良ホテルの北東)の風景がきれいだったので、天理街道(奈良天理線)の瑜伽(ゆうが)橋のところまで歩いた。そこで撮ったのが冒頭と下の3枚の写真だ。日が暮れそうだったが、ギリギリ間にあってラッキーだった。





このあと、県庁前に午後5時過ぎに戻り、5時4分発(出発が遅れて14分発)の最終の「まちなかバス」で市役所に戻った(35分に到着)。

バス停には、県庁や奈良市役所の職員がたくさんいて、アンケートにも答えたが、最後にこの実験全体を通じた感想を書いておきたい。

1.この実験は、とても意欲的な試みである。
・現行のパーク&バスライドは(車を閉め出さないから)中途半端で、利用価値がない。結局、バスが渋滞に巻き込まれてしまうのだ。県庁周辺の民間駐車場経営者に、そこまで気を使う必要があるのだろうか。
・公園内をめぐる電気バスは排気ガスを出さないから、鹿にも歩行者にもやさしい。
・あいにくの雨で、せっかく設けた歩行空間(大仏前~県庁東)や無料レンタサイクル(市役所など)に、あまり利用者がなかったのは、お気の毒であった。
・この実験は、あまり広く知られていなかった。もっとPRが必要だった。



2.今回は試行(実験)だから仕方ないが、スタッフ(県・市の職員)に情報が十分共有されていなかったのが残念だった。
・市役所や高架下の駐車場は、当初午後6時まで開いていると聞かされていたが、現地に到着すると「市役所の駐車場は5時に閉まるから、今(3時40分)から行くのはムリです」と言われた。「じゃ、5時に戻りますから」と適当なことを言って車を置いたが、やはり駐車場は6時まで開いていた。
・市役所のバス乗り場では、6時までに戻れるよう(まちなかバスに乗り遅れた場合の)路線バスの無料券まで用意されていた。わずか20mしか離れていない駐車場係とバス停係の間ですら、こんなに連絡が悪かったということになる。
・そもそも実験の時間帯が、役所の窓口のような「午前9時から午後5時まで」という設定にムリがある。観光客に対しては「午前10時から午後6時まで」(夏場は7時~8時まで)くらいの配慮が必要だろう。通行規制の範囲も、あれでは狭すぎる。
・国道24号高架下駐車場の入口がわかりにくい。私は探したが見つけられずに通り過ぎてしまい、市役所まで行くハメになった。サイン類が不足していたのだろう。

ともあれこの試みは、本格的に定着すれば、渋滞が常態化している土日の近鉄奈良~奈良公園周辺の渋滞緩和に、大いに威力を発揮することだろう。奈良県は環境保全活動で他府県に遅れをとっているが、電気バスの導入は、これを一挙に解決し「環境にやさしい奈良」を全国にアピールする良い機会になるだろう。

この実験の成果をもとに、こんどは実用化に向けて、大いに頑張っていただきたいものだ。
コメント (7)
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