tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

コロナも落ちつき、これからが観光シーズン、ぜひ奈良に足をお運びください!

「演芸カフェ奈良町落語館」がオープン!

2009年06月03日 | 奈良にこだわる
昨日(6/2)、ならまちの一角(奈良市中新屋町)に「演芸カフェ奈良町落語館」がオープンした。おめでとうございます 運営されるのは、写真の田中宏一(たなか・こういち)さんである。

奈良新聞「寄席にぶらり訪れて」(5/24付)によると《有志でつくる「落語タウンならまち実行委員会」(林啓文委員長)が計画を進めてきた。メンバーの1人、田中宏一さん(57)が喫茶兼展示スペースとして運営する鶉屋倶楽部の2階を提供、白木の高座も完成した》《笑福亭純瓶(じゅんぺい)さん(46)ら10人の「レギュラー噺家」が交代で出演、奈良町の新たな名所となりそうだ。奈良町には既に9カ所の地域寄席があり、昔懐かしい町並みと落語の調和が大勢のファンを集めている》。
http://www.nara-np.co.jp/20090524131203.html

《定期寄席は毎月第2、4土曜の午後2時半に開演。ワンドリンク付き1500円で二席の落語が楽しめる。「レギュラー噺家」には笑福亭純瓶さんのほか、県内出身の桂文鹿(ぶんろく)さんら10人が名を連ねた。宿泊施設や学校、企業への出前寄席も受け付ける。大人向けの落語教室や寄席文字の体験教室も開く予定だ》。 なお建物の1階は「旬彩 ひより」である。
※ならまちで昼食を(3)旬彩 ひより(当ブログ内)
http://blog.goo.ne.jp/tetsuda_n/e/b878f64ebf6d67cec27b5eb166bfbd55


「旬彩 ひより」の前に出ているこの看板が目印

《プロデューサーでもある純瓶さんは「よそ行きの京都と違い、庶民的な奈良の雰囲気は落語に合う。観光客がティータイムに落語を楽しみ、地元の人も気軽に入り、他府県から落語を目的に集まってくる―。そんな場所にしていきたい」と意気込む》。

《田中さんは「将来は夜の寄席も充実させ、観光活性化につなげたい」と話している。第1回の定期寄席は6月13日。申し込みは鶉屋倶楽部内の事務局、電話0742(22)7227》。
※奈良町落語館の情報が載った「落語タウンならまち」のホームページ
http://rakugo-town.com/index.html

田中さんの生家である鶉屋(うづらや)は、文化3年(1806年)創業の晒・呉服屋である。早くから「落語によるならまちの活性化」に取り組んでこられた。奈良リビングの特集記事「笑の効用」(07.2.16付)によると《奈良町では1980年ごろから新しいまちづくりが進められ、観光地として成熟してきました。しかし「飽きられないためには見てもらうだけでなく、伝統的なイロモノが必要」と話すのは、長年まちづくりにも携わってきた鶉屋(うづらや)倶楽部代表の田中宏一さん(55)。田中さんが目をつけたのが落語でした。以前から奈良町ではあちらこちらで寄席が行われ、2004年当時で6カ所で定期寄席が行われていました》。
http://www.naraliving.com/special/spe_070216.html


笑福亭純瓶さんとツーショット

《「寄席が始まる前はスタッフも観客も緊張して固くなっていますが、演目が始まって笑いが起こるとすぐに観客同士も打ち解けています」と田中さんは話します。イベントの時だけでなく落語のある状態が日常になり、毎日のようにどこかで寄席が開かれ、笑いが起きているのが理想。最終的な目標は定席小屋を作ることです。そのためには、まず定期寄席の充実が必要です》。

《また新しいイベント「来て見てきいてならまちでCHU」を開催します。これは芸能に興味のある素人による寄席で「レベルが上がり、将来プロを目指してくれれば、奈良発の大衆芸能が生まれる」と田中さんも期待しています。プロの落語家とのジョイントも予定されているそうです。奈良町を拠点に20年活動を続けているアマチュアの落語家グループもあります。「一緒に奈良の伝統芸能として全国に発信していきたい」と田中さん。奈良町の新しい魅力として、笑いのあるまちづくりが進んでいます》。


食べているのはうどん?そば?

ならまちを現在のように発展させて来られた最大の功労者は、田中宏一さんと林啓文さん((財)ならまち振興財団専務理事)である。お二人は「一緒に棺桶に入りたい」(田中さん談)という文字通りの刎頸(ふんけい)の友である。私は10年以上前から、お2人とは「奈良町座」の月例会でご一緒させていただいている。林さんの紹介は日を改めるとして、田中さんのロングインタビュー が『自治体チャンネル+』(三菱総研)に掲載されているので、かいつまんで引用する(「キーパーソンに聞く」06.12.4付)。
http://www.mri.co.jp/REPORT/LOCAL/2006/12/20061201_bsc02.pdf

《本誌 まちづくりに対するお考えをお聞かせください》《田中 「くらし」を第一に思っています。まずは暮らしありきです。それから「なりわい」、経済力がなければそこに住めません。そして「たたずまい」、つまり雰囲気ができあがっていくと考えています》《まちづくりをする者が、そこに住みながら、そこに誰が住んでいるのかまでわかる範囲で、何が必要なのかを落とし込んでいくことが重要です》。

《そうやって、必要なものが自然にできていく。まちづくりをする者というのは、バランスシートを毎日のように見つめながら対応していく。そういった日々の気づきが重要です。現実を見ないで単に自分の夢だけを追い求めると、とんでもないものができてしまいます。そして、問題をみつけた場合は、徹底してぶつかっていく。自分達のお金を集めてでもです》。

早くもここで、落語のことが出てくる。《本誌 今後の抱負をお聞かせください》《田中 お年寄りと若者、子ども達が日常的な関わりを深めていくために、語り部をつくっていこうと考えています。落語を通じて、日常的に語り合いながら、歴史を学び、伝えていこうと考えています》《できるかできないかはわかりませんが、やるんです。こうやってアクションすることにより、問題点や、次に何をすべきかというヒントが出てきます》。


ま新しい白木の高座の前で

「インタビューを終えて」のところでインタビュアーの木村武史氏がこんなエピソードを披露している。《インタビューの途中、近所の方が田中さんにお酒を届けに見えられました。後で伺ったところ、昨日田中さんがホームセンターで手すりを買って来て、一人暮らしをしているお婆さん宅の階段に取り付けてあげたそうで、そのお礼を届けに来られたとのことでした。何気ないことと思いつつも、最近薄れてきたと感じられもする、こうした地域の助け合い、心のこもったコミュニテイという“地域力”が、まさに奈良町活性化の根源なのだと実感したひとコマでした》。

心優しい田中さんらしいエピソードだ。「くらし」「なりわい」「たたずまい」というキーワードにも説得力がある。ならまちの江戸時代の町並みには、落語がよく似合う。自宅兼店舗ビル(3階建て)をこのように改装して開放するとは、なかなかできないことである。

先のインタビューで田中さんは、「こうなるまでに27年かかりました」「70歳までは動けるかなぁ、動かなあかんなと思っています」と語っている。57歳の田中さんが70歳まで、あと13年。ぜひ林さんとともにラストを飾っいてただきたいし、後継者も育てていただきたいと思う。皆さん「奈良町落語館」に、ぜひ足をお運びを。
コメント
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