7/5に告示される奈良市長選挙・奈良市議会議員選挙を控え、奈良新聞1面で「県都の課題」という連載(4回)が始まった。執筆されているのは、奈良市政担当記者の竹内涼香さんである。7/1の第1回は「JR奈良駅前ホテル開発」、7/2の第2回は「観光」と続く(7/3は、掲載なし)。私が気になったのは、7/2の記事で、見出しは「集客戦略待ったなし」だ。
《「観光客の総数1393万人(平成15年)を3年間で10%増加させます」。平成17年の奈良市長選挙で当選した藤原昭市長がマニフェストに掲げた数字だ。しかし、平成19年の市への観光客入込数は1388万人。藤原市長就任後は、増えてはいるものの市の地域経済を支える観光客の数はここ数年伸び悩んでいる》。

私の知人のコメントも紹介されている。《「奈良にはまだまだ潜在能力がある。大事なのは見せ方」。市内で旅館業に携わる金田充史さん(46)はこう話す。「観光客は普段と違う雰囲気を求めて観光に来る。だから、せめて中心市街地くらいは建物は木造2階建ての瓦ぶき、車も通行止めにすべき。われわれはプレーヤー。行政にはシステムづくりをお願いしたい」と言う》。
その実践例としてならまちが紹介される。《「ならまち格子の家」(同市元興寺町)では、(都市景観形成地区)指定前の平成5年は約3万9千人だった利用者が平成18年は約7万6千人とほぼ倍増している》。

《奈良町情報館の藤丸正明さん(25)は「春と秋で客層が違いターゲットを絞らないといけないし、トイレも不足している。景観も中途半端」と奈良町の問題点を指摘。また「町家を保全していくためには奈良町の経済を組み立てなければならない」とも話し、奈良町の存続・発展には課題が山積する》。
奇しくも、同日(7/2)の奈良日日新聞も「県都決戦 奈良市長選」の特集で、「奈良市の課題(3)観光産業」が掲載されている。5月の新型インフルエンザ問題で修学旅行生のキャンセルや延期が相次いだが《最も大きい問題は「天災」で甚大な被害をもたらす修学旅行生頼みのビジネスモデルだ》とズバリ指摘する。《基幹産業であるはずの「観光産業」はその脆弱性を浮き彫りにした》。
奈良市内の宿泊者のうち《修学旅行生は15年度の12万8287人から昨年度の9万4034人と減少の一途。少子高齢化で従来の修学旅行向けのビジネスモデルは先細りしていく一方だ》。これは少子高齢化だけでなく、修学旅行の多様化も大いに影響している。いわば、ダブルパンチなのである。

藤原市長が公約を果たせず《観光客の数はここ数年伸び悩んでいる》という原因の1つも、修学旅行客の伸び悩みである。これは県外温泉観光地が団体客の減少に悩んでいるのと同じで、早くから指摘されていたことであるし「団体・修学旅行客から個人客・外国人客へ」の流れへの対応(転換)を怠ったことのツケが回ってきたとも言える。
それは《市が増改築した旅館・ホテル事業者の融資に対して行う利子補給制度の利用件数も平成18年度から5件以下の状況が続く》(奈良日日新聞 同記事)という実態とも符合する。その意味で《今求められるのは、長期的な客室数増加のビジョン、多様な観光客を受け入れるための事業者のボトムアップ》なのである(同)。

普段奈良の町を歩いている私の実感としては、修学旅行生は確かに減っているが、かわりに外国人客、特に欧米人の姿がよく目につくようになった。新型インフルエンザ騒動の時期などは、私の周りにいる観光客すべてが外国人、というシーンもあった。
ランチタイムの日本料理店で、外国人団体客を「刺身を食べられる人はこちら、食べられない人はあちらへ」と手際よくさばいている様子などもよく目にする。しかし彼らを宿泊施設がどのように受け入れているのか、はなはだ心許ない。結局は、京都や大阪へ流れているのかも知れない。

その一方で「観光はソフト。なかなか答えが出ない」(奈良新聞 同記事)という市観光協会のコメントなどを読むと、危機意識の薄さに呆れてしまう。
1988年のなら・シルクロード博は、リピーターを呼べなかったことが、その後の奈良観光の足を引っ張った。観光客数は、シルク博前より減少したのだ。それに気づいているのか《市観光企画課の島岡佳彦係長も「1300年祭が一過性で終わらないよう、訪れた人に価値を提供し、リピーターを増やしたい」と意気込む。この好機をつかむ観光戦略を早期に練らなければならない》(奈良新聞 同記事)。

行政は、行政の役目をきちんと果たさなければならない。依然として入込観光客数の発表は遅いし、肝心の実数把握さえあやふや(本当に実態を反映しているのか誰も分からない)というこの現状は、早期に改善しなければならない。「なかなか答えが出ない」とぼやいている場合ではない。
事業者は事業者の仕事をやり遂げなければならない。魚佐旅館など数軒の旅館はタッグを組み、楽天トラベルのサイトを利用して熱心なPR活動を展開しているし、センスが良く使いやすいHPで集客している料理旅館もある。
※「奈良町の宿 料理旅館吉野」のホームページ
http://www.yado-yoshino.com/
創意工夫で奈良が勝ち残る選択肢は、いくらでもある。「ゆでガエル現象」のたとえもあるが、まず必要なのは、危機感の共有だ。
※参考:観光振興(7/3付 朝日新聞奈良版)
http://mytown.asahi.com/nara/news.php?k_id=30000140907030001
※写真は、奈良の旧市街他で7/2撮影。
《「観光客の総数1393万人(平成15年)を3年間で10%増加させます」。平成17年の奈良市長選挙で当選した藤原昭市長がマニフェストに掲げた数字だ。しかし、平成19年の市への観光客入込数は1388万人。藤原市長就任後は、増えてはいるものの市の地域経済を支える観光客の数はここ数年伸び悩んでいる》。

私の知人のコメントも紹介されている。《「奈良にはまだまだ潜在能力がある。大事なのは見せ方」。市内で旅館業に携わる金田充史さん(46)はこう話す。「観光客は普段と違う雰囲気を求めて観光に来る。だから、せめて中心市街地くらいは建物は木造2階建ての瓦ぶき、車も通行止めにすべき。われわれはプレーヤー。行政にはシステムづくりをお願いしたい」と言う》。
その実践例としてならまちが紹介される。《「ならまち格子の家」(同市元興寺町)では、(都市景観形成地区)指定前の平成5年は約3万9千人だった利用者が平成18年は約7万6千人とほぼ倍増している》。

《奈良町情報館の藤丸正明さん(25)は「春と秋で客層が違いターゲットを絞らないといけないし、トイレも不足している。景観も中途半端」と奈良町の問題点を指摘。また「町家を保全していくためには奈良町の経済を組み立てなければならない」とも話し、奈良町の存続・発展には課題が山積する》。
奇しくも、同日(7/2)の奈良日日新聞も「県都決戦 奈良市長選」の特集で、「奈良市の課題(3)観光産業」が掲載されている。5月の新型インフルエンザ問題で修学旅行生のキャンセルや延期が相次いだが《最も大きい問題は「天災」で甚大な被害をもたらす修学旅行生頼みのビジネスモデルだ》とズバリ指摘する。《基幹産業であるはずの「観光産業」はその脆弱性を浮き彫りにした》。
奈良市内の宿泊者のうち《修学旅行生は15年度の12万8287人から昨年度の9万4034人と減少の一途。少子高齢化で従来の修学旅行向けのビジネスモデルは先細りしていく一方だ》。これは少子高齢化だけでなく、修学旅行の多様化も大いに影響している。いわば、ダブルパンチなのである。

藤原市長が公約を果たせず《観光客の数はここ数年伸び悩んでいる》という原因の1つも、修学旅行客の伸び悩みである。これは県外温泉観光地が団体客の減少に悩んでいるのと同じで、早くから指摘されていたことであるし「団体・修学旅行客から個人客・外国人客へ」の流れへの対応(転換)を怠ったことのツケが回ってきたとも言える。
それは《市が増改築した旅館・ホテル事業者の融資に対して行う利子補給制度の利用件数も平成18年度から5件以下の状況が続く》(奈良日日新聞 同記事)という実態とも符合する。その意味で《今求められるのは、長期的な客室数増加のビジョン、多様な観光客を受け入れるための事業者のボトムアップ》なのである(同)。

普段奈良の町を歩いている私の実感としては、修学旅行生は確かに減っているが、かわりに外国人客、特に欧米人の姿がよく目につくようになった。新型インフルエンザ騒動の時期などは、私の周りにいる観光客すべてが外国人、というシーンもあった。
ランチタイムの日本料理店で、外国人団体客を「刺身を食べられる人はこちら、食べられない人はあちらへ」と手際よくさばいている様子などもよく目にする。しかし彼らを宿泊施設がどのように受け入れているのか、はなはだ心許ない。結局は、京都や大阪へ流れているのかも知れない。

その一方で「観光はソフト。なかなか答えが出ない」(奈良新聞 同記事)という市観光協会のコメントなどを読むと、危機意識の薄さに呆れてしまう。
1988年のなら・シルクロード博は、リピーターを呼べなかったことが、その後の奈良観光の足を引っ張った。観光客数は、シルク博前より減少したのだ。それに気づいているのか《市観光企画課の島岡佳彦係長も「1300年祭が一過性で終わらないよう、訪れた人に価値を提供し、リピーターを増やしたい」と意気込む。この好機をつかむ観光戦略を早期に練らなければならない》(奈良新聞 同記事)。

行政は、行政の役目をきちんと果たさなければならない。依然として入込観光客数の発表は遅いし、肝心の実数把握さえあやふや(本当に実態を反映しているのか誰も分からない)というこの現状は、早期に改善しなければならない。「なかなか答えが出ない」とぼやいている場合ではない。
事業者は事業者の仕事をやり遂げなければならない。魚佐旅館など数軒の旅館はタッグを組み、楽天トラベルのサイトを利用して熱心なPR活動を展開しているし、センスが良く使いやすいHPで集客している料理旅館もある。
※「奈良町の宿 料理旅館吉野」のホームページ
http://www.yado-yoshino.com/
創意工夫で奈良が勝ち残る選択肢は、いくらでもある。「ゆでガエル現象」のたとえもあるが、まず必要なのは、危機感の共有だ。
※参考:観光振興(7/3付 朝日新聞奈良版)
http://mytown.asahi.com/nara/news.php?k_id=30000140907030001
※写真は、奈良の旧市街他で7/2撮影。