tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

コロナも落ちつき、これからが観光シーズン、ぜひ奈良に足をお運びください!

観光地奈良の勝ち残り戦略(42)限界集落・川上村を元気に!

2010年12月19日 | 観光地奈良の勝ち残り戦略
川上村が、県下市町村で初めて「限界集落」になった。12/4付の読売新聞奈良版に《「2人に1人」川上村65歳超 県内初「限界自治体」に》という記事が載ったのである。限界自治体とは、同紙によると《過疎化や少子化で65歳以上の住民が過半数となった自治体。大野晃・長野大教授が提唱した概念で、税収減と高齢者の医療・福祉関連の費用が増え、財政維持が難しくなるとされる。「限界集落」は同条件の集落》。つまり、早くいえば「限界集落」入りしたのである。
※トップ写真は川上村のチゴロブチで、9/27撮影

10/1の県調査で、川上村は人口1,857人のうち老年人口(65歳以上)は936人で、人口の50.4%に達した。一方、年少人口(0~14歳)はわずか83人(4.5%)。『デフレの正体』(藻谷浩介著)でも指摘されていたが、これでは村の存立すら危ぶまれる。
※デフレの正体(当ブログ内)
http://blog.goo.ne.jp/tetsuda_n/e/8caec4e31d7b10a8cfadf0d4bd9a1afa


水源地の森ツアー(07.7.24)。次の写真も

そんな川上村を元気にする方法はないか。この「観光地奈良の勝ち残り戦略」シリーズでは、第41回で「学生たちの提案」として、県観光振興に関する地元女子大生たちの提案を掲載した。今回は、同じ学生10人が提案した「川上村の活性化策」を紹介する。9/27に村を訪れたあと、9/28に全員で討論会を行い、結果を企画書にまとめて9/29に発表していただいた。10人を4つのグループに分けて、4つの企画書を作ってもらったのである。いずれも、観光業や林業の振興をテコにするものだった。以下、Ⅰ~Ⅳにわけて紹介する。
※学生たちの提案(当ブログ内)
http://blog.goo.ne.jp/tetsuda_n/e/96351107553e87e7370d57aae32ceb7c


岩に、こんなにふかふかの苔が生えている

Ⅰ.テーマ「自然環境と観光を結びつける村づくり」
(4回生のI津さん、I藤さん、O間さん)
[趣 旨]
1.幅広い年代の観光客に、五感で訴える
2.地域の人々の連携
3.豊かな自然環境の県内外への発信
[具体的提案]
1.体験を中心とした観光を(現状は「見学」に偏っているため)
・自転車の貸し出し、サイクリングコースの設定
・スピリチュアル・スポット(パワースポット)のコースの設定
・古民家で地元食材を使った料理づくり体験
・記念植樹をして名前をつけてもらう
2.村民あげての観光むらおこし(村民の意識が低い現状から)
・高齢の村民を観光ガイド(語り部)や体験学習の講師に
・村民の観光振興に関する意識調査をする
3.情報発信(PR)の拡充
・キャラクター(山幸彦)の知名度向上
・メールマガジン(かわかみ満足ガイド)の充実
→割引クーポン、地元食材を使った料理レシピ、川・滝や動物の動画・壁紙、せせらぎの音、グッズなどのプレゼント
[tetsuda評]
村を訪れたとき、ほとんど村人の姿を見なかった。いても観光客には、あまり関心がなさそうだった。その実感からまとめ上げたのがこの提案で、やはり地元民が盛り上がらないと、外からお客は来ない。村内にパワースポットが多いことや、既存のメルマガに付帯サービスをつけようという着眼点が光っている。
※参考:川上村・水源地の森ツアー
http://www.news.janjan.jp/area/0707/0707290034/1.php


「仕出し すぎもと」(川上村大滝)のおにぎり弁当と、追加の惣菜。旨い!(9/27撮影。以下同じ)
http://www.vill.kawakami.nara.jp/kankyokai/kanko/eat_sugimoto/index.html

Ⅱ.テーマ「(川上村と吉野材を)知ってもらう!ハマってもらう!買ってもらう!」
(3回生のN本さん、M上さん)
[趣 旨]
1.働き盛りのサラリーマン世代(20~40代)に、林業や環境に関する正しい知識を持ってもらう
2.村の魅力を全国に発信し、生き生きとした村づくりをめざす
3.大企業と連携し、林業の活性化を図る
[具体的提案]
1.企業に働きかけ、(CSR)研修の一環として、川上村に来てもらう。村では、企業のニーズに応じて研修プランを組み、吉野材の魅力や特性を知ってもらう(現状、村のイベントスケジュールが立て込んでいるが、もっとスケジュールに余裕を持たせておく)。都会人と交流することで、村民が気づかなかった吉野材や村の魅力を発見できる
2.村のお年寄りが、来村者をガイドする(村民が生き生きしていると、村が魅力的になる)。来村者にはメルアドを登録してもらい、付帯サービス(四季おりおりの景色、動物の壁紙、自然の音色など)のついたメルマガを送る
3.住宅リフォーム会社や食器メーカーと提携する。内装材などに吉野材を使ってもらう。贈答用に、軽くて丈夫な吉野材の食器を開発・販売してもらう
[tetsuda評]
来村者が、遠足や林間学校で来る児童・生徒や、史跡を巡るシニアに偏っていることに目を付けているところが良い。ビジネスマンに村や吉野材を知ってもらうことの意義は大きい。村で数多くあるイベントも、ターゲット層を見直すべきだろう。吉野材を使った食器というのも、面白い。現在審査中の「暮らしの道具」デザインコンペの趣旨とも合致する。
※「暮らしの道具」デザインコンペ(当ブログ内)
http://blog.goo.ne.jp/tetsuda_n/e/fdd42adb986ada9afe52e09c0bf2f582


もくもく館(川上村)で辻谷達雄さんのお話を聞く

Ⅲ.テーマ「エコ割り箸大作戦~割り箸を使って地球を守ろう!」
(3回生のK村さん、S本さん、N口さん)
[趣 旨]
1.国産の木材のシェアは外材の約5分の1。もっと国産材を使おう
2.林業GDPの低下、就業者数の低下を食い止めよう
3.森林の荒廃が、地球温暖化を促進す
[具体的提案]
1.吉野杉、ヒノキを使った割り箸の利用を推奨する
2.コンビニで吉野割り箸を使ってもらおう
(ローソン全店約1万店で、割り箸5億3千万膳を使用 08年度)
3.吉野割り箸を使うことが、環境教育になる
[tetsuda評]
中国・ロシア産材の入手が難しくなり、国内飲食店の箸が、外国産割り箸からプラスチック箸にシフトしている。しかし、本来は国産割り箸にシフトすべきもの。12/10付の奈良新聞によると、従来はチップにしてきた「細い間伐材」から割り箸を作る取り組みが岐阜県の「ワリバシ・カンパニー」で始まり、1膳の価格は、従来の廉価品より50銭安い2円50銭で製造できる。中国産は1円前後から値上がり傾向にあるし、プラ箸は飲食店での洗浄コストが約3円だから、十分競争できるという。奈良県内には間伐材から割り箸を作る機械も工場もないが、この取り組みを見習って、吉野の間伐材割り箸を普及させてほしいと願う。
http://www.eco-online.org/eco-news/forest/20100807168.php


春増薫さん(春亮木材代表取締役)のお話を聞く(次の写真も)

Ⅳ.テーマ「吉野材の需要拡大」
(4回生のS井さん、S郷さん)
[趣 旨]
1.企業との連携による吉野材製品の開発・販売
2.「使わないからエコ」から「使うことによるエコ」への転換
3.「使うエコ」「吉野杉・ヒノキ」をWebでPR
[具体的提案]
1.企業が扱う商品とセットにして、吉野材を使った木製品を売ってもらう(石鹸と吉野杉の石鹸箱、日本酒と吉野杉のぐい呑み など)
2.木製品を使うことがエコになるという知識の普及。環境保全をしているということでの企業のイメージアップを図る。
3.企業のホームページに、吉野材の木製品を扱うサイトへのリンクを貼ってもらう
[tetsuda評]
林野庁は「木づかい運動」を展開している。日本の森では樹木がどんどん茂っており、伐られるのを待っている状態である。特に杉・ヒノキの人工林は、伐採して新たに植えないと、CO2固定化(吸収)の効果が得られない(老木はほとんど光合成をしないため)。割り箸に限らず、木製品を使うことがエコにつながる(森が若返り、若木はCO2をよく吸収する)。既存の製品とセットにして販売する、というのは、女性らしい面白いアイデアである。どこか関心を持つ企業さんは、いないだろうか。



以前、「ないもの作り」より「あるもの探し」が大切だ、と書いた。川上村には、南朝の史跡やパワースポットになるような観光資源もあれば、都会人には絶好の「癒し」になる源流の森もある。清流の水も美味しい。これらを組み合わせれば、絶好の観光コースが生まれる。村特産の吉野材(杉、ヒノキ)も、丸太で出荷するだけではなく、木製品に仕上げて売れば付加価値がつき、コストも回収できるだろう。

都会では失業者があふれ、特に大学新卒者で就職口が見つからない人が多い。空気も水も美味しい川上村は、若い働き手を待っている。最近、アニメおたくの学生たちが、高知県の中山間地域で農業に励んでいるというニュースが流れていた。竹林を伐採して作った竹炭に土をまき、堆肥と混ぜてエコ野菜を栽培しているという。川上村で、パワースポットの観光ガイドや、木工クラフトをやりたいという若者はいませんか~!
コメント (4)
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