tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

コロナも落ちつき、これからが観光シーズン、ぜひ奈良に足をお運びください!

スペイン人さんフランス人さん、奈良へいらっしゃい!観光地奈良の勝ち残り戦略(64)

2012年11月27日 | 観光地奈良の勝ち残り戦略
週刊奈良日日新聞(11/16~22号)に、「いまどきの外国人観光客 ラテン系は奈良アモーレ 文化意識ハイレベル スペインにも世界遺産多数」という記事が出ていた。リード文は

奈良はラテンの琴線に触れる!?―。来日するスペイン人の3人に1人、フランス人の5人に1人が奈良県を訪問している。世界最大のマーケット・中国の反日運動を受け、中国人観光客の来県はこの秋、落ち込みを見せ始めており、県の外国人観光客の誘致戦略は軌道修正を迫られている。外国人観光客が奈良のどこに魅力を感じているかを分析し、今後の観光戦略を考える。

スペイン人の奈良好きは、以前にも新聞で取り上げられたことがある。朝日新聞(2011.2.16付)「スペイン人、観光なら奈良! 3人に1人が訪問」によると

来日したスペイン人の3人に1人が奈良県を訪れていることが、日本政府観光局(JNTO)の調査で分かった。中国や韓国、米国の人々と比べて、奈良への関心の高さがうかがわれる。スペイン人を引きつけるものは何か。県によると、2010年に奈良を訪れた外国人観光客は約65万人(推計)。韓国(18万3千人)、台湾(8万9千人)、米国(5万6千人)の順で、スペイン人は「その他」(14万1千人)に分類され、人数は不明だった。

ところが、日本政府観光局が外国人旅行者に訪問先の都道府県を聞き取ったところ、奈良訪問率はスペイン人が32.8%でトップ。もっとも、スペイン人の中では、東京約88%、京都約70%、大阪約36%で、奈良は4番目。国ごとに訪問率に換算したら相対的にトップに立った格好だ。JR奈良駅近くのゲストハウス。会社の同僚4人と来日したボルハ・ボラーノさん(32)は「奈良には古い木造建築がある。明日は東大寺に行く。何と言っても世界遺産だからね」と話した。

東大寺や興福寺、法隆寺などの世界遺産がある奈良。スペインもまた、古都・トレドの旧市街やサグラダ・ファミリア教会をはじめ、42件というイタリアに次ぐ世界2位の世界遺産を抱える。在京スペイン大使館は「スペイン人には芸術や文化を愛する土壌がある。歴史ある建築物や芸術がある奈良に引かれ、訪れる人が多いのは不思議ではない」(広報室)という。



人気を後押しするのは、世界最大の旅行ガイドブック専門出版社「ロンリープラネット社」のガイドブックが「日本の最初の都として見逃せない」と奈良の魅力を伝えることもあるようだ。スペイン本国では今、ちょっとした日本ブーム。大使館によると、「ドラゴンボール」や「名探偵コナン」など日本アニメがテレビ放映され、村上春樹の小説や武道、「健康食」とされる日本食に関心が集まっているという。

通算5年間、スペインに住んだ同志社女子大の渋江由利子講師(スペイン語、言語教育学)はこう見る。「スペイン人は古い文化を守る気持ちが強いが、分析好きの国民性もある。この数年のブームで日本に触れる機会が増え、自分たちとの違いを『分析』したいと奈良を訪れるのでは」(岸上渉、荻原由希子)

〈外国人観光客の訪問率〉 日本政府観光局が国内9カ所の主要国際空港・港で外国人旅行者約2万1千人に、どの都道府県に立ち寄ったかを聞いた。奈良を訪ねたと答えたのは、スペイン人が177人中58人でトップ。2位のフランス人は417人のうち86人が訪問していた。一方、県の調べで奈良を訪れる総数ではトップに立つ韓国人は5569人中418人で、率にすると8%に満たなかった。


画像はWikipedia「スペイン人」より

「スペイン人には芸術や文化を愛する土壌がある」「自分たちとの違いを『分析』したいと奈良を訪れるのでは」とは、興味深い話である。冒頭に掲げた奈良日日新聞には、こんな話が載っていた。

スペインから女性3人で奈良を訪れたラウラさん(41)、ジェニサーさん(41)、インマーさん(45)は「わたしたちの国にも世界遺産がたくさんあるが、奈良の古い社寺も美しい」と話し、興福寺の五重塔にカメラを向けていた。「帰国したら皆に(写真を)見せてあげる。他の国と違い、日本の写真はみんなが『見せて~』と言ってくれるから」と話してくれた。また、県内の世界遺産は「すべて見たい」とも話した。カナダから訪れた20歳代の女性グループも、奈良公園周辺を散策。「奈良は文化と自然が素晴らしいところ、春か秋に行くべきと聞いた。たくさんのお寺を見て回りたい」と笑った。

県の同課(観光局国際観光課)は「巡り方に各国の違いがある。たとえば、中国は団体で本州を縦断するようなツアーが多く、奈良での滞在時間は1時間に満たないこともある。ヨーロッパは長期休暇の風習があり、奈良に長く滞在してくれる」と話す。

スペインの世界遺産にはサンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路があり、これは世界で初めて道が世界遺産になったケース。その後、道の登録は奈良県を含む紀伊山地の霊場と参詣道。同課は「道として登録された世界遺産見物に、スペインの需要がある。北部だけでなく、南部にも足を伸ばしているのがヨーロッパの特徴」としている。

月山さん(=刀匠。桜井市茅原)は「通訳の人と一緒に山辺の道を歩いてきたというフランスの方が増えている。5、6人のグループで歩いているようです。道場で刀を見て、喜んでくれている」と話す。県観光局国際観光課は「フランスやスペインの人たちは日本を好いてくれている。文化力の高い国の人たちが、日本、その国のはじまりの奈良の文化や精神に興味を持ってくれているようだ。道という文化遺産に価値を見いだしてくれるのは、そういうことではないか」と解説する。

画像はWikipedia「フランス人」より

森井さん(=奈良日仏協会会員)が観光ガイドを務めるフランス人観光客の多くはリピーター。懇意にしている30歳代のフランス人女性は「日本の風土や伝統文化、精神が肌に合うし、日本人の気質にも魅力を感じる」と話し、今も母国で次の奈良旅行を計画中という。この女性をはじめ、森井さんが観光ガイドなどで知り合ったフランス人観光客らは、茶道や書道、漢字などに興味津々。田んぼや静かな田舎町を好み、田植えなどの体験についてうれしそうに話す観光客も跡を絶たない。

「禅が体験できるお寺に連れて行って」とガイドをせがむフランス人も多くいる。森井さんは「フランス人観光客は日本人以上に、日本の文化や伝統、精神に理解、関心を示している。観光地を訪れるというよりも、日本古来の空気を肌で感じたいのではないか」と話している。


なるほど、だいたい感じがつかめてきた。スペイン人やフランス人は、奈良の自然や田園風景、静けさ、日本古来の精神文化、古代の雰囲気に関心を寄せているのである。コンテンツ・日本ブランド専門調査会のサイト(首相官邸のHP)に「各国における分野ごとの日本に対するイメージ」という資料が出ている。「スペイン」はなかったので「フランス」のところを見ると、

伝統文化
・日本のイメージとして、「豊かな伝統・文化を持つ国」と思っているのは、8.74ポイントである。(10段階)(EU4カ国に対する対日世論調査2007)【外務省】
・伝統芸能では、和太鼓は各地のフェスティバルなどで演奏される機会はある。また、能の認知度は高く、パリでは公演される機会も比較的多く、満席になるのが普通である。それに比べて頻度は少ないが、歌舞伎、文楽、日本舞踊、雅楽、邦楽等が紹介されることもあり、切符の入手は困難とされている。個人で実践できる日本の伝統文化として、書道、茶道、生け花等は、日本人の指導者により定期的に受講可能な教室も開催されている。また、象徴的な日本文化として紹介されがちな、昔ながらの盆栽や日本庭園の人気も根強い。【国際交流基金】

その他
・日本製品や日本食、アニメ・芸能といった日本文化など、日常的に「日本」に触れる機会が多く、日本に対するイメージは概して好意的。(JNTO訪日旅行誘致ハンドブック2007/2008)【国土交通省】

フランス人は日本の伝統・文化に関心が高く、日本へのイメージも好意的なのである。これは有り難いことだ。インバウンド(外国人旅行客誘致)というと中国、韓国というのが定番になっている。他府県はいざ知らず、わが奈良県は目を欧米に転じるべきではないだろうか。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする