見わたせば柳桜をこきまぜて都ぞ春の錦なりける
素性(そせい)法師『古今和歌集』
素性(そせい)法師『古今和歌集』
前回の「辯天宗 宗祖御廟の桜」に続き、今度はウチの周辺(奈良市西郊)の近隣公園の桜を紹介する。なお近隣公園とは「およそ500メートル以内の近隣の住民を対象として、休養・散策に供する公園」(大辞林)で、以前はよく児童公園と呼ばれていた。
※トップ写真は、近隣公園の中でたった1本だけ見つけたヤマザクラ(2020.4.6撮影)。
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以下、撮影は日付順。こちらは「見頃」を迎えたソメイヨシノ、3月30日(月)の撮影
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新型コロナ騒動で外出自粛がいわれるが、時々の散歩やジョギングはOKとされている。桜の時期、私は積極的に近所を散歩した。歩ける範囲内で3ヵ所ほどの公園があり、うち2つはとても広い。ここで私は朝の散歩と称して、3月30日(月)~4月9日(木)の間の4日間、桜ばかりを撮り続けた。
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最初はただ歩くだけだったが、ある時ふと「足に錘(おもり)をつけてみようか」と思い立った。昨年秋に他界した母が、やはり晩年には脚力が弱って車椅子になったことを思い出したのだ。ずいぶん以前、ゴルフショップで見つけ、しばらく足に着けて歩いていたこともあった。「アンクルウエイト」と呼ばれるその錘は、いろんな重さが選べる。
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こちらは4月5日(日)の撮影。葉の出ているのが、シロヤマザクラ
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まずは片足1kgのものを通販で取り寄せたところ、これはとても具合がいい。短時間の散歩でも、ちょっとしたトレーニングをした気分になれるのだ。つまり「散歩+トレーニング+写真撮影」を同時にやったことになる。
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桜にはどれほどの品種があるのだろう。『日本大百科全書』には《日本の山野にはヤマザクラなど約10種類を基本にして、変品種をあわせると100種類ほどのサクラが野生しており、また、これらから生まれた200~300の園芸品種が知られている》。
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ここからは4月6日(月)の撮影
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《江戸時代には品種が区別され、天和(てんな)元年(1681)に出た水野元勝(もとかつ)の『花壇綱目(かだんこうもく)』には「桜珍花異名の事」として40品種のサクラが載せてある。近年のものでは『最新園芸大辞典』巻5(1970、誠文堂新光社)が305品種を載せ、『サクラの品種に関する調査研究報告』(1982、日本花の会)には193品種が図説されている》。
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さらに《花を観賞の対象とする習わしは万葉時代からみられる。『万葉集』にはサクラを詠んだ歌が42首載るが、そのうちの4首ははっきりと庭や宿のサクラを詠んでおり、当時すでに観賞用として栽培下にあったことが知れる。最古の品種はナラノヤエザクラで、聖武(しょうむ)天皇が奈良の三笠(みかさ)山で発見して移植したと伝えられる》。
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近隣公園の桜は1本を除いてすべてソメイヨシノだった。ソメイヨシノはクローンなので、同時に咲いて同時に散るといわれるが、それでも個体差があることに気づいた。日当たりとか、近くに川が流れているとか以外では、若木は遅く咲き始めて遅く散る、ということが分かった。
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おしまいは4月9日(木)。そろそろ「散り初め」になってきた
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桜のシーズンが終わり、散歩する意欲は衰えてしまったが、外出自粛は続く。また何か口実を見つけて、出かけないと。