tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

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このごろ私あほや/広報「かわかみ」2020年6月号(吉野郡川上村)

2020年06月17日 | 奈良にこだわる
勤務先に届いた川上村の「広報かわかみ」(2020年6月号)をぱらぱらとめくっていると、「清流」という随筆欄にふと目が止まった。NPO法人「奈良まほろばソムリエの会」会員で、ガイドグループに所属している前田景子さんが寄稿していたのだ。

前田さんは村の「ホテル杉の湯」のフロント係だが昨年、髄膜腫(脳腫瘍の一種)を発症し、手術されたと聞いていた。いつもてきぱきと仕事をこなす前田さんが、ぽかミスを連発したり、同僚の名前を間違えるなど言動がおかしいので、同僚の勧めでMR検査を受けたところ、腫瘍が見つかったのだ。手術は成功しすでに退院していて、冬の「氷瀑(ひょうばく)ツアー」準備のお手伝いをされるほど回復している。

前田さんは俳句もされ、この広報誌にも「背山より妹山(いもやま)望み椎(しい)の花」の句を投稿されている。なので「清流」の文章も、俳味というか軽妙で洒脱な味わいがある。快気祝いとして、以下に全文を紹介する。

このごろ私あほや。物忘れが多いし、何か鈍い。動作も緩慢やし、年のせいかな。もう60歳も過ぎたしなあ…とか思いながら、いつものようにお弁当を作って主人を送り出し、仕事のシフト時間に合わせての忙しい朝を迎えていた。

昼前の出勤なら帰りは8時から9時頃で、仕事の時間、家事の時間、自分の趣味などの時間と、特に家事の時間は適当にして布団に入るとすぐに寝る。そんな日が退職するまで続くはずだった。ところが、ここにきてちょっと立ち止まった。職場の仲間にも勧められ病院へ行った。

問診を受けMR撮影を受ける。「年齢のせいです。心配いりません。まあゆっくり生活してください」くらいの返事が返ってくるとばかり思っていたが、MRの脳の画面を前に、「検査の結果、ここのところに色の変わっているものがありますが、これは腫瘍により押されて色が変わっているものです」と…

えっ…まさか…ほんまに…。ことばが出てこなかった。「明日の朝入院の用意をして家の方と一緒に来てください」と言われても信じられなかった。私が脳腫瘍?いつからそんなものが出来ていたの?考えても仕方ない。手術して取るだけだ。職場に事情を伝え、翌日からの入院、10日後の手術と続いた。

病名は髄膜腫。名前は聞いたことがあったが、我が身には起こらないものと思っていた。幸い手術の結果は良性で、頭の傷痕だけが残り、2カ月の入院生活を終え無事退院となった。本人びっくり、家族もびっくりの大事件だった。

それから6カ月、おかげさまで私は順調に回復している。その間の新型コロナウイルス騒ぎもあり思いがけない時間を得て、ゆっくりとした生活となった。手術は全身麻酔だったため、手術室の記憶が全くない。自分のことなのに、ドラマのような体験が記憶にないのは、まことに残念だ。 前田景子
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