tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

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海のない奈良で生まれた柿の葉寿司/毎日新聞「かるたで知るなら」第8回

2021年06月03日 | かるたで知るなら(毎日新聞)
NPO法人「奈良まほろばソムリエの会」は毎週木曜日、毎日新聞奈良版で「かるたで知るなら」を連載している。先週(2021.5.27)掲載されたのは《内陸地域の「祭り食」/吉野町観光案内所》、執筆されたのは同会会員の浅井博明さんだった。

「奈良県の祭り食(行事食)」といわれる柿の葉寿司は、実は和歌山県の伊都地方(伊都郡、橋本市)の祭り食でもある。すると、紀伊水道で獲れたサバは、山越えでなく紀ノ川を遡って運ばれてきたという推測が成り立つのである。では、記事全文を紹介する。

《海のない奈良で生まれた柿の葉寿司》
柿の葉寿司は、紀州(和歌山県)から吉野川(紀ノ川)の舟運(しゅううん)などで運ばれてくる塩サバを3枚におろし、薄くそいだ切り身を一口大に握った酢飯に載せ、柿の葉で包んで押しをかけたものです。

今はお店で買いますが、もともと県内では吉野川流域や流域に近い御所市、高市郡などの各家庭で、夏祭りなど晴れの日に作っていました。県境に隣接する和歌山県の伊都地方でも、秋祭りの時期などに作ります。柿の産地である両地域の伝統的な行事食(祭り食)だったのです。海から遠く離れたこれら地域にとって、川を遡って運ばれてくるサバなどの海産物は、とても貴重なごちそうだったのでしょう。

食通で知られる谷崎潤一郎も、「陰翳礼賛(いんえいらいさん)」で柿の葉寿司を絶賛しています。ただし谷崎が食べた柿の葉寿司は、サバではなく新巻鮭だったそうです。さすがに文豪は、高価な食材を使ったのでした。今ではタイやアナゴの柿の葉寿司も、市販されています。

吉野山では専門店のほか飲食店でも、個性豊かな柿の葉寿司が作られ、販売されています。柿の葉寿司は2007年度、農林水産省の「農林漁村の郷土料理百選」に選定されました。

柿の葉寿司を包む柿の葉は、防腐作用のあるタンニン(ポリフェノール)が多く緑色が鮮やかな渋柿の葉が使われます。口に入れると柿の葉のさわやかな香りが広がり、酢飯とのコントラストが絶妙です。秋には紅葉した柿の葉も使われ、目を楽しませてくれます。(奈良まほろばソムリエの会会員 浅井博明)

【吉野町観光案内所】
(住所)吉野郡吉野町吉野山41の3
(営業時間)9~17時、水曜定休
(電話)0746―39―9237
(交通)近鉄吉野駅下車すぐ
(駐車場)無


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