tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

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ダイワ産業の「吉野杉開発プロジェクト」

2011年07月04日 | 林業・割り箸
高取町(奈良県高市郡高取町市尾)にダイワ産業株式会社というユニークな会社がある。同社HPには《木に関わって38年。国産木材を使い日本人に愛用される商品をかたくなに製造してきました》《「木を創造する」、この経営理念の基、「木」を通して「和文化」に通じるものを、引き継がれた職人技を使い、また新しい技術を取り入れることによって創り出していきます》とある。

業務内容は《桧すき込み和紙などの天然素材の内装材 国産材による家庭用品の製造販売 国産材による旅館・ホテル・スーパー銭湯・ゴルフ場向けの木製品の製造販売 天然成分を使用した浴室洗浄剤・ひのき消臭剤などの製造販売 ひのき寝具素材の製造販売 その他木製品の企画・製造・販売》である。つまり、さまざまな木製品、木材に由来する製品の製造販売により、日本の木の文化を守り育てることをモットーとする会社である。



6/24(金)、同社代表取締役の中西正幸さんとお会いする機会があった。今、中西さんが取り組んでおられるのは、「吉野杉開発プロジェクト」、つまり杉材に含まれる精油(エッセンシャル・オイル)成分を生活用品に活かす、という商品の開発である。成分の抽出面で同社がタッグを組んでいる有限会社キセイテックのHPによると《樹木に含まれる精油はフィトンチッド成分を多く含みその穏やかで優れた自然由来の効能は防虫・抗菌・消臭・アロマテラピー・建材・香料などの分野でいま大きな注目を集めています》。


上の3枚の写真は、08年10月に開催された展示商談会で撮影

なおWikipediaによるとフィトンチッドとは《微生物の活動を抑制する作用をもつ、樹木などが発散する化学物質。植物が傷つけられた際に放出し、殺菌力を持つ揮発性物質のことを指す。森林浴はこれに接して健康を維持する方法だが、健康だけでなく癒しや安らぎを与える効果もある。フィトンチッドはその殺菌性や森林の香りの成分であるということから良いイメージがあり、森林浴の効能を紹介する際に良く用いられている》というものである。

フィトンチッドには、空気清浄効果、消臭効果、リラックス効果の3つの効果がある。しかし、杉精油の抽出は難しい。キセイテックのHPには《木材中含有量が非常に少ない希少なアロマ、スギ精油。国産スギ材から抽出したスギ精油。トンあたり0.2~0.5%の含有量、かつ揮発性に富む性質のため抽出が困難で、非常に希少な樹木精油です。ヒノキとは趣の違う、ライトで甘いスギ材独特の香りです》とある。


これら3枚の写真は、10年5月に平城宮跡会場で撮影

杉の香りを嗅いだ人ならご存知のとおり、あの香りは心をリラックスさせ、気分をリフレッシュする不思議な効果がある。特に子供は敏感に反応するようで、昨年、平城遷都1300年祭の宮跡会場の建物内に、杉やヒノキの床板を敷き詰めたところ、その上でごろごろ転がり回って遊ぶ子供さんの姿を何度も目にした。もちろん大人も、靴を脱いで上がり込み、長時間座り込んでいた。私は杉の端材をもらって帰り、車の中に入れておいたところ、乗るたびにとても良い香りに包まれた。だから中西社長のプロジェクトの話をお聞きしたとき、「なるほど、これは広く受け入れられそうだ」と直感した。





杉のフィトンチッド成分を得るには、精油を抽出するほか、杉板に切れ目(スリット)を入れ、そこから自然放出させるという方法がある。すでに辻野喜夫氏(大阪府環境農林水産総合研究所)などが研究論文(スギ木口スリット材の大気浄化機能)を発表されているし、社団法人大阪府木材連合会は資料「杉の呼吸が暮らしを変える」を公表している。


「杉の呼吸が暮らしを変える」(社団法人大阪府木材連合会)より

ダイワ産業は、産・官・学さまざまな協力者を得て、吉野杉開発プロジェクトをスタートさせた。リビングや寝室や子供部屋が杉の香りに包まれると…、と想像するだけでも胸がワクワクする。県土の78%が森林という森林王国・奈良県ならではの夢のあるプロジェクトである。ぜひ、成功させていただきたい。

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