巷で評判の「モードスパニッシュレストラン アコルドゥ(akordu)」(奈良市富雄北1-1-1)を、初めて訪れた。このお店はオープンするや否や、「Hanako West」の2008年グランプリに選ばれた。「あまから手帖」や「家庭画報」に紹介されるとともに、麻生玲央(あそう・れお)が「All About」の「関西グルメ」欄に詳しいレポートを寄せた。なおモードスパニッシュレストランとは、新感覚スペイン料理店、akorduとは、バスク語(スペイン)で記憶という意味である。
麻生によると《富雄駅のすぐ前に、大正時代から歴史の荒波と風雪に耐えて生き延びたレンガ造りのクラシックな建物があります。この建物が、今年6月から他では食べることのできないヌエバ・コシーナ(新スペイン料理)を味わえるモード・スパニッシュレストランに大変身を遂げました。その名は「アコルドゥ(akordu)」。シェフは川島 宙(かわしま・ひろし)さん。有名ホテルを皮切りにスペインに渡り、あの「ムガリツ」で修業された後、3年余りの場所探しの末、遂にお眼鏡に叶うこの建物と出会われたとのことです》。この「ムガリツ」は、スペイン・バスク地方の二つ星レストランである。
《中に入ると、まず高い天井とクラシカルな内装が造りものではない、本物の古き佳き時代を呼び戻してくれます。凝った木彫りのカーテンボックス、暖炉、ステンドグラス、石膏の廻縁などは、この建物が変電所として創建された大正3年当時のまま。しばし創建時に思いを馳せて見とれてしまいます。川島シェフが追及するのは「ウマい」「安い」だけではありません。「すべての感覚を研ぎ澄まして、美術館に足を運ぶように、このレストランの扉を開けて入ってきてもらいたい」と言われる川島シェフ。目指すは「より自然でより哲学的な、記憶に残る不思議な料理」、この空間に身を置く客のほうも料理を通して、しばしシェフの哲学に向き合い身をゆだねる気持ちが必要と言えるでしょう》。
《以下は、メッセージカードに書かれていたシェフからの言葉です(一部抜粋)。「その扉を開け一歩足を踏み入れたその瞬間から再び元の世界へ戻る時まで、全てを忘れ、そして全てを思い出し、平常心で、そしてすべてを研ぎ澄まし感じてください。私たちと過ごすその僅かな時間が、いつまでもあなたの記憶に残りますように」》。
ランチ(2,940円)のメニューは半月ごとに変わるそうだ。私が訪れた日の前菜は、ズッキーニのクロケッタ(クリームコロッケ)と小エビのソテ、トマトのガスパチョ(冷製スープ)とセロリのグラニサード(シャーベット)。このスープには驚いた。小さなグラスの底にセロリのシャーベットが沈み、その上にトマトのスープが乗っかっているのである。これを小さなスプーンで少しずつすって食べては、料理をつつくのである。口の中に野菜のうま味(グルタミン酸)が広がったところに、コロッケやエビを味わうわけで、これは理屈が通っているし、実際にとても美味しいのである。
お次は、九條ネギと鶏レバーのリゾット。ネギで臭味を消しているので、レバーのうま味だけがよく出ている。こんな味のリゾットをいただくのは初めてである。量は少ないがこってりしているので、腹持ちがいい。
続いて、メイン料理(トップおよび上の写真)、アナゴのフリット(フリッター、揚げ物)とブロッコリ、グレープフルーツとワサビのエラード(アイスクリーム、ジェラート)。ワサビ味のアイスクリームは、生まれて初めていただいた。熱あつのフリッターに冷たいアイスや野菜を組み合わせるとは、心憎い演出である。噂で「量が少ない」と聞いていたので、パンを1回お代わりした。これでちょうど適量だった。
デザートは、焼いたパイのアイス イチジクのソテと五香粉の香りのパリパリ ヴィンコット(ワインを煮て作る甘味料)エッセンス。パリッと焼けた香ばしいパイ皮とアイスクリームがよく合う。中華で使う五香粉の香りがいい。イチジクも、美味しく焼けていた。締めにはたっぷりのコーヒーと小菓子をいただいた。
デザートを上から見たところ。電灯が反射して、不思議な模様が出ている
何とも不可思議だがいい気分である。食材としてはそんなに珍しいものはないのだが、調理法やスパイス、その組み合わせ方が絶妙なのだ。大正レトロ調の室内と庭の木々が、そんな気分を高めてくれる。よほどのイマジネーションがないと、こんな料理もお店も、思いつかない。これが川島ワールド、「より自然でより哲学的な、記憶に残る不思議な料理」なのだ。ブログ「膳-sai」をお書きのおぜんさんは、もう16回もお訪ねになったそうだが、その気持ちはよく分かる。
麻生玲央は「All About」のレポートをこんな言葉で締めくくっている。《最先端でありながらも、自然に寄り添い、地の食材を使って表現することで、記憶に刻み込まれる料理達。舌だけではなく、五感のスペックをフル活動させて、川島シェフの料理(哲学)世界を堪能していただきたいですね。今後はさらに個性的な進化・変化を遂げていかれることでしょう》。
ここは、きっとミシュランで星を獲得することだろう、私はそう確信してお店を後にした。ランチの予約は取りにくいが、奥様連中が敬遠する夏場はねらい目である。皆さん、ぜひお試しください。
モードスパニッシュレストラン「アコルドゥ」
〒631-0076 奈良市富雄北1-1-1
[ 営業時間 ] ランチ:11:30~ ディナー:18:00~
[ 定休日・月曜日 ]
「食べログ」の同店サイトはこちら
麻生によると《富雄駅のすぐ前に、大正時代から歴史の荒波と風雪に耐えて生き延びたレンガ造りのクラシックな建物があります。この建物が、今年6月から他では食べることのできないヌエバ・コシーナ(新スペイン料理)を味わえるモード・スパニッシュレストランに大変身を遂げました。その名は「アコルドゥ(akordu)」。シェフは川島 宙(かわしま・ひろし)さん。有名ホテルを皮切りにスペインに渡り、あの「ムガリツ」で修業された後、3年余りの場所探しの末、遂にお眼鏡に叶うこの建物と出会われたとのことです》。この「ムガリツ」は、スペイン・バスク地方の二つ星レストランである。
《中に入ると、まず高い天井とクラシカルな内装が造りものではない、本物の古き佳き時代を呼び戻してくれます。凝った木彫りのカーテンボックス、暖炉、ステンドグラス、石膏の廻縁などは、この建物が変電所として創建された大正3年当時のまま。しばし創建時に思いを馳せて見とれてしまいます。川島シェフが追及するのは「ウマい」「安い」だけではありません。「すべての感覚を研ぎ澄まして、美術館に足を運ぶように、このレストランの扉を開けて入ってきてもらいたい」と言われる川島シェフ。目指すは「より自然でより哲学的な、記憶に残る不思議な料理」、この空間に身を置く客のほうも料理を通して、しばしシェフの哲学に向き合い身をゆだねる気持ちが必要と言えるでしょう》。
《以下は、メッセージカードに書かれていたシェフからの言葉です(一部抜粋)。「その扉を開け一歩足を踏み入れたその瞬間から再び元の世界へ戻る時まで、全てを忘れ、そして全てを思い出し、平常心で、そしてすべてを研ぎ澄まし感じてください。私たちと過ごすその僅かな時間が、いつまでもあなたの記憶に残りますように」》。
ランチ(2,940円)のメニューは半月ごとに変わるそうだ。私が訪れた日の前菜は、ズッキーニのクロケッタ(クリームコロッケ)と小エビのソテ、トマトのガスパチョ(冷製スープ)とセロリのグラニサード(シャーベット)。このスープには驚いた。小さなグラスの底にセロリのシャーベットが沈み、その上にトマトのスープが乗っかっているのである。これを小さなスプーンで少しずつすって食べては、料理をつつくのである。口の中に野菜のうま味(グルタミン酸)が広がったところに、コロッケやエビを味わうわけで、これは理屈が通っているし、実際にとても美味しいのである。
お次は、九條ネギと鶏レバーのリゾット。ネギで臭味を消しているので、レバーのうま味だけがよく出ている。こんな味のリゾットをいただくのは初めてである。量は少ないがこってりしているので、腹持ちがいい。
続いて、メイン料理(トップおよび上の写真)、アナゴのフリット(フリッター、揚げ物)とブロッコリ、グレープフルーツとワサビのエラード(アイスクリーム、ジェラート)。ワサビ味のアイスクリームは、生まれて初めていただいた。熱あつのフリッターに冷たいアイスや野菜を組み合わせるとは、心憎い演出である。噂で「量が少ない」と聞いていたので、パンを1回お代わりした。これでちょうど適量だった。
デザートは、焼いたパイのアイス イチジクのソテと五香粉の香りのパリパリ ヴィンコット(ワインを煮て作る甘味料)エッセンス。パリッと焼けた香ばしいパイ皮とアイスクリームがよく合う。中華で使う五香粉の香りがいい。イチジクも、美味しく焼けていた。締めにはたっぷりのコーヒーと小菓子をいただいた。
デザートを上から見たところ。電灯が反射して、不思議な模様が出ている
何とも不可思議だがいい気分である。食材としてはそんなに珍しいものはないのだが、調理法やスパイス、その組み合わせ方が絶妙なのだ。大正レトロ調の室内と庭の木々が、そんな気分を高めてくれる。よほどのイマジネーションがないと、こんな料理もお店も、思いつかない。これが川島ワールド、「より自然でより哲学的な、記憶に残る不思議な料理」なのだ。ブログ「膳-sai」をお書きのおぜんさんは、もう16回もお訪ねになったそうだが、その気持ちはよく分かる。
麻生玲央は「All About」のレポートをこんな言葉で締めくくっている。《最先端でありながらも、自然に寄り添い、地の食材を使って表現することで、記憶に刻み込まれる料理達。舌だけではなく、五感のスペックをフル活動させて、川島シェフの料理(哲学)世界を堪能していただきたいですね。今後はさらに個性的な進化・変化を遂げていかれることでしょう》。
ここは、きっとミシュランで星を獲得することだろう、私はそう確信してお店を後にした。ランチの予約は取りにくいが、奥様連中が敬遠する夏場はねらい目である。皆さん、ぜひお試しください。
モードスパニッシュレストラン「アコルドゥ」
〒631-0076 奈良市富雄北1-1-1
[ 営業時間 ] ランチ:11:30~ ディナー:18:00~
[ 定休日・月曜日 ]
「食べログ」の同店サイトはこちら
ランチ、いらっしゃったんですね。この日から新しいランチです。
2週間ずつかわり、メインがお魚、お肉と変わるんです。
あなご、美味しそうですね。川島さんらしいお料理。
デザートが、これまた美味しそう。
アコルドゥのデザート、はずれなし!
お料理も、デザートも、香りの奥深さがとにかく素晴らしいと思ってます。
夜のメニューはランチとはまた違い、素晴らしいですよ。次回は是非ディナーメニューを。
> あなご、美味しそうですね。川島さんらしいお料理。デザートが、
> これまた美味しそう。アコルドゥのデザート、はずれなし!
アナゴのフリッターにワサビ味のアイスを組み合わせるところが、すごいと思いました。デザートは、たっぷりいただきました。
> 夜のメニューはランチとはまた違い、素晴らしい
> ですよ。次回は是非ディナーメニューを。
はい、それまでは節約に努めたいと思います。異空間で味わうイマジネーション豊かな料理の数々は、仏教の曼荼羅の世界を彷彿とさせてくれます。ここは魔法のレストランならぬ、魔力のレストランです。
上品な感じ♪ 私も奈良に行った時に是非とも行ってみたいです! 又奈良でよいお店があれば、教えて下さいね。
> とても美味しそうで、お料理の写真に釘付けになっていましたo(^-^)o
> 上品な感じ♪ 私も奈良に行った時に是非とも行ってみたいです!
とても美味しいです。早めに予約を入れて、ぜひお訪ねください。
レンガ造りの玄関、富雄駅前 なつかしい写真が出てきましたね
この建物は大正3年近鉄変電所として創設され、活躍していたが、任期を終えてからは商業施設として頑張ってきた。しかし、新しいものしか受け入れられない風潮の当時はいつも採算が取れず、駅前に道路拡張計画ができて取り壊しを検討されたもので(西側の増築部分はその時取り壊された)保存のために商業施設誘致や他の活用方法はないかと、建物保存で直接仕事をして何度も足を運んだことがなつかしく、それだけに建物にふさわしいレストランに様変わりして人気を博しているのは本当にうれしいです
本物のレトロはお金では買えません
時間(時)の積み重ねでしか得られないもので、この建物はまさに本物です
容れ物と中身がしっくりとコンビを組めた今、これを育てるのは亭主とお客様です
新名所になってほしいですね
頑張ってください
> 商業施設誘致や他の活用方法はないかと、建物保存で直接仕事をして
> 何度も足を運んだことがなつかしく、それだけに建物にふさわしい
> レストランに様変わりして人気を博しているのは本当にうれしいです
一時はホームセンターでしたが、いい人(川島宙さん)が現れて良かったです。鉄道用の変電所なので駅前ですし、立地も抜群です。
> 本物のレトロはお金では買えません 時間(時)の積み
> 重ねでしか得られないもので、この建物はまさに本物です
その通りです。奈良には、まだまだこのようなスゴい「本物レトロ」がたくさんあります(若林さんの今井町が、その典型ですが)。もっと新名所を開拓したいです。