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寒い、寒いと言っているうちに、もうこんな季節になったのだ。毎日新聞奈良版(2025.2.17 付)「光る関西 モノ・ヒト・ワザ」欄に、〈春告げる逸品 糊こぼし 萬々堂通則=奈良市〉という記事が出ていた。お水取りの「糊こぼし」(椿の造花)にちなんだ椿菓子である。
※写真はすべて、毎日新聞の記事サイトから拝借した
目にも鮮やかな「糊こぼし」は、花芯は黄身餡(きみあん=白餡に卵黄を加えて練り上げたもの)、花びらは練り切り(白小豆粉にもち粉と砂糖を加えて練り上げたもの)である。甘さを控えた上品な味に仕上がっている。ああ、また食べたくなった。では、記事全文を以下に紹介する。
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古都・奈良に春を告げる東大寺二月堂(奈良市)の修二会(しゅにえ)(お水取り)が3月1日に始まるのを前に、市内の和菓子店でツバキの花をかたどった生菓子を見かけるようになる。お水取りの期間中、二月堂内にツバキの造花が飾られるためだ。
近鉄奈良駅の南側、もちいどのセンター街にある老舗「御菓子司 萬々堂通則(みちのり)」には、紅白の花弁が鮮やかなツバキの生菓子が並んでいた。名前は「糊(のり)こぼし」。東大寺開山堂に咲くツバキの愛称で、紅色の花びらに糊をこぼしたような白い斑点があることから呼ばれるようになったという。
こだわるのは口溶けの良さで、ツバキの雄しべは黄身あん、花びらは紅白の練り切りで表現している。店を切り盛りする河野美知子さん(73)は「お水取りの造花に似せて、通常の生菓子よりも鮮やかな赤に仕上げている。あんが柔らかく繊細なため、寒い時期にしか作れない」と話していた。
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店を切り盛りされる河野美知子さん
河野さんの長男通輝さん(45)ら3人の職人が手作りしているため、一つとして同じツバキはない。販売は3月中旬までの予定で、多い日は朝から800個ほどを作るという。ツバキ柄の菓子箱にも引かれ、早速3個入り(箱代込みで1730円)を購入し、家でいただいた。滑らかな黄身あんが口の中で溶け、上品な甘みが広がった。
創業は江戸時代後期と伝わり、明治時代に河野さんの曽祖父が店を買い取って以降、通輝さんで6代目となる。「元々は武士の家系で、1代目は相当苦労をしたようだ」と河野さん。店名の「通則」は2代目の名前に由来し、戦後の材料不足など苦しい時代を乗り越えてきた。
店内を見渡せば、和三盆を使った高級らくがん「青丹(あおに)よし」や、栗まんじゅうの「牡鹿(おじか)」など奈良にちなんだ名前の菓子が目に入る。看板商品の一つ「ぶと饅頭(まんじゅう)」は、春日大社の神事で供えられる唐菓子「ぶと」を現代風にアレンジしたものだ。
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看板商品の「ぶと饅頭」=奈良市で、塩路佳子撮影
小豆のこしあんを包んでからっと揚げているため、油のしつこさはなく、あんこのおいしさにも定評がある。麦飯石でろ過した水を使うなど、小豆以外のこだわりも多い。春日大社からのお墨付きも得ており、包み紙に大社の社紋「下り藤」がデザインされていた。
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干菓子や焼き菓子が並ぶ店内。右奥は「淡味真楽」の書=奈良市で、塩路佳子撮影
店の壁には、東大寺別当(住職)を務めた故・清水公照師が揮毫(きごう)した「淡味真楽」の文字が掲げられている。淡い味を真(まこと)に楽しむ――。そう意味する通り、素材の良さを生かし、誠実に菓子作りを続けてきた萬々堂だからこそ本物の味が楽しめるのだろう。河野さんは「味を落とすことなく、細く長く続けていきたい」と願っていた。【塩路佳子】
御菓子司 萬々堂通則
奈良市橋本町34。午前10時~午後6時、木曜不定休。2、3月は休まず営業し、木曜日は午後5時まで。干菓子や焼き菓子などは、ホームページからも注文できる。電話(0742・22・2044)。
※写真はすべて、毎日新聞の記事サイトから拝借した
目にも鮮やかな「糊こぼし」は、花芯は黄身餡(きみあん=白餡に卵黄を加えて練り上げたもの)、花びらは練り切り(白小豆粉にもち粉と砂糖を加えて練り上げたもの)である。甘さを控えた上品な味に仕上がっている。ああ、また食べたくなった。では、記事全文を以下に紹介する。
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古都・奈良に春を告げる東大寺二月堂(奈良市)の修二会(しゅにえ)(お水取り)が3月1日に始まるのを前に、市内の和菓子店でツバキの花をかたどった生菓子を見かけるようになる。お水取りの期間中、二月堂内にツバキの造花が飾られるためだ。
近鉄奈良駅の南側、もちいどのセンター街にある老舗「御菓子司 萬々堂通則(みちのり)」には、紅白の花弁が鮮やかなツバキの生菓子が並んでいた。名前は「糊(のり)こぼし」。東大寺開山堂に咲くツバキの愛称で、紅色の花びらに糊をこぼしたような白い斑点があることから呼ばれるようになったという。
こだわるのは口溶けの良さで、ツバキの雄しべは黄身あん、花びらは紅白の練り切りで表現している。店を切り盛りする河野美知子さん(73)は「お水取りの造花に似せて、通常の生菓子よりも鮮やかな赤に仕上げている。あんが柔らかく繊細なため、寒い時期にしか作れない」と話していた。
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店を切り盛りされる河野美知子さん
河野さんの長男通輝さん(45)ら3人の職人が手作りしているため、一つとして同じツバキはない。販売は3月中旬までの予定で、多い日は朝から800個ほどを作るという。ツバキ柄の菓子箱にも引かれ、早速3個入り(箱代込みで1730円)を購入し、家でいただいた。滑らかな黄身あんが口の中で溶け、上品な甘みが広がった。
創業は江戸時代後期と伝わり、明治時代に河野さんの曽祖父が店を買い取って以降、通輝さんで6代目となる。「元々は武士の家系で、1代目は相当苦労をしたようだ」と河野さん。店名の「通則」は2代目の名前に由来し、戦後の材料不足など苦しい時代を乗り越えてきた。
店内を見渡せば、和三盆を使った高級らくがん「青丹(あおに)よし」や、栗まんじゅうの「牡鹿(おじか)」など奈良にちなんだ名前の菓子が目に入る。看板商品の一つ「ぶと饅頭(まんじゅう)」は、春日大社の神事で供えられる唐菓子「ぶと」を現代風にアレンジしたものだ。
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看板商品の「ぶと饅頭」=奈良市で、塩路佳子撮影
小豆のこしあんを包んでからっと揚げているため、油のしつこさはなく、あんこのおいしさにも定評がある。麦飯石でろ過した水を使うなど、小豆以外のこだわりも多い。春日大社からのお墨付きも得ており、包み紙に大社の社紋「下り藤」がデザインされていた。
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干菓子や焼き菓子が並ぶ店内。右奥は「淡味真楽」の書=奈良市で、塩路佳子撮影
店の壁には、東大寺別当(住職)を務めた故・清水公照師が揮毫(きごう)した「淡味真楽」の文字が掲げられている。淡い味を真(まこと)に楽しむ――。そう意味する通り、素材の良さを生かし、誠実に菓子作りを続けてきた萬々堂だからこそ本物の味が楽しめるのだろう。河野さんは「味を落とすことなく、細く長く続けていきたい」と願っていた。【塩路佳子】
御菓子司 萬々堂通則
奈良市橋本町34。午前10時~午後6時、木曜不定休。2、3月は休まず営業し、木曜日は午後5時まで。干菓子や焼き菓子などは、ホームページからも注文できる。電話(0742・22・2044)。
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