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田中利典師の「有徳の女性とのお別れ」

2024年12月18日 | 田中利典師曰く
今日の「田中利典師曰く」は、〈徳を積む〉(師のブログ 2017.4.30 付)。94歳のおばあちゃんの死を悼む文章である。師は〈心根がホントに優しいおばあちゃん〉〈なにかしら徳を積んだ人という感じの方だった〉とお書きである。
※トップ写真は、「奈良春日野国際フォーラム 甍~I・RA・KA~」で、2024.12.3撮影

師の息子さんが下宿されていたということもあって、〈親戚のような気持ちでお付き合いをいただいた人だった〉ともお書きになっている。では、以下に全文を紹介する。

「徳を積む」
一昨夜、父の代から長年にわたりお参りいただいた信者様がお亡くなりになった。昨年秋、大腸に癌が見つかり、摘出の手術をされたが、順調に回復されていると聞いていたので驚いている。どうやら手術後の体調はよかったにもかかわらず、先々週に転倒をして大腿骨を骨折され、その術後の容態が急変して、急逝されたらしい。齢94の大往生であった。

ご主人が熱心な御岳(おんたけ)の行者さんだった。そのご主人に導かれて、たまに自坊においでになるようになった。近江の安曇川町で雑貨食料の商店をご夫婦で営まれていて、ご主人は毎月、遠路をお参りいただいたが、お店はやすめないので、店番の奥さんは大祭くらいにしか、おいで頂けなかったのだ。

ところが、もう9年ほど前に、ご主人が亡くなられてからは、ご主人に代わって、毎月ほぼお見えになるようになった。お店を以前ほどは手広くされなくなったことも、要因かもしれない。

とにかくこぎれいな人で、心根がホントに優しいおばあちゃんだった。病気一つしたことがないと自負されるほど、90歳を越えても元気溌剌で、きっと100歳まではこのまま健やかに過ごされるに違いないと思っていた。そういう、なにかしら徳を積んだ人という感じの方だった。

あまり愚痴らしい愚痴も聞いたことがなく、ありがたい、ありがたいが口癖で、お参りされても、こちらが幸せにしていただく、常にそんな風だったのである。

徳を積むとは、別段、すごい修行をするとか、悟りを目指すとか、というのではなく、日々の中で、真摯につましく、穏やかな心根で、誠実に生きることなんだと改めて感じさせてもらえる、お日さまのようなおばあちゃんだった。

愚息がしばらくご自宅に下宿したこともあり、一信者様というよりは、親戚のような気持ちでお付き合いをいただいた人だっただけに、急逝の報に接して、がく然としている。

昨日の朝、病院から自宅に帰られたので、お見舞いに行ってきた方から連絡があった。「今にも笑い出すかの如く、それはそえれは穏やかなお顔でした。権現様のおかげかと思われます」と連絡のファックスに一文が添えられていた。

その笑顔はきっと権現様のおかげでもあり、ご本人のお徳でもあるにちがいない。今夜、お通夜なので、最後のお別れに行かせていただこうと思う。そのお徳に感謝を込めて…。
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