tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

コロナも落ちつき、これからが観光シーズン、ぜひ奈良に足をお運びください!

恥ずかしながら、テレビ初出演

2009年06月21日 | マスコミに紹介されました!
思いもかけない成り行きで、テレビに登場することになった。当ブログをご愛読いただいている県内在住のディレクターさんから、お声かけいただいたのである。ブログで奈良の情報を全国発信することで、地域おこしにひと役買っている、というストーリーだ。

番組名は「発見!人間力」(ABC)で、関西でのオンエアは7/5(日)午前6時から6時半までの30分である(=大阪の朝日放送の場合。東京のテレビ朝日だと、前日の7/4の同時間と、地域によってオンエア日はすべて違う)。
※参考:番組のホームページ
http://www.tv-asahi.co.jp/ningenryoku/



番組のHPには《魅力ある人の人生は、ドラマチック!挫折を乗り越え、目標に向かって走る姿には、素晴らしい「人間力」が宿っています。人生の達人から学ぶことは多いはず。きっとあなたの傍にもいる、人間力溢れる人を追うドキュメンタリーです》とある。私にはおよそ似合わない立派な解説であるが、「きっとあなたの傍(そば)にもいる」というくだりには納得する。この番組は何度も見ているが、功成り名遂げた有名人が登場する「情熱大陸」(MBS)とは違い、発展途上の素人を紹介するという趣旨である。



かつての「にんげんドキュメント」(NHK)と作り方が似ていて、途中にCMも入らない。「協力 文部科学省」「企画 財団法人民間放送教育協会」という硬派の番組である。




以上の写真は、第2回古社寺を歩こう会(春の飛鳥路をゆく)
http://blog.goo.ne.jp/tetsuda_n/e/05d44a7131fd9f73bbd433402cf513a5

最初にディレクターさんからお話をいただいたのが昨年(08年)12月で、ロケの終了がこの5月と、撮影期間は半年間もの長丁場だった。当ブログ記事と同時進行なので、ブログ愛読者の方がご覧になると「あっ、あのシーンを横でテレビが撮っていたのか」とすぐ気づかれることだろう。

最もスリリングだったのが奈良検定(奈良まほろばソムリエ検定)1級の受験日で、「落ちたらどうしよう」と会場で試験を受けながら、終始ヒヤヒヤものだった。結局、試験を受けているところから、同僚と答え合わせするところまで、終始横でカメラが回っていた。



美味しい料理に舌鼓を打ったり、温泉に漬かっていたり、「古社寺を歩こう会」で皆さんとワイワイ言い合っていたり、と、私の「奈良探索」の様子が、たくさん登場する。また(ブログには書いたことがない)会社での仕事風景や、家でパソコンに向かっているシーンなども初公開される。



ナレーションは、「トリビアの泉」や「英語でしゃべらナイト」でお馴染み、奈良市出身の八嶋智人(やしま・のりと)さんである。出演者もディレクターもナレーターも、全て奈良で固めるという地元密着ぶりである。


以上の写真は、第3回古社寺を歩こう会(柳生まるごと体験)
http://blog.goo.ne.jp/tetsuda_n/e/3837b24535a18420078e0b81f60ca901

撮影もインタビューも多かったので、どのシーンを使ってどのように編集されたのか、また番組末尾のディレクターのコメント部分で、どのようにまとめられたのか、全く見当がつかないので、ドキドキしながら放送日を待っているところである(静岡や広島では6/28にオンエアされるので、もしご覧になったら、最速のご感想をぜひお願いしたい)。

ともあれ、編集が完了した今となっては、運を天に任すばかりである。撮影にご協力いただいた多くの皆様、有り難うございました、オンエアをお楽しみに!
※トップ写真は、ウチのご近所宅のアジサイ(6/13撮影)
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浜矩子教授の「どうなる?世界同時不況の行方」

2009年06月19日 | 日々是雑感
火曜日(6/16)、時事通信社の「内外情勢調査会 奈良支部6月例会」に顔を出させていただいた。この例会(講演会)のことは、当ブログで以前にも何度か紹介したことがある。会員制の組織で、毎月、奈良ホテルで著名講師による講演会が開かれる。
※参考:呉善花さんが語る「日本人の縄文的世界観」
http://blog.goo.ne.jp/tetsuda_n/e/eec9d9a1ee6e06678436f966724f401a

今回の講師は同志社大学大学院ビジネス研究科教授の浜矩子(はま・のりこ)氏で、演題は、今最も世間が注目する「どうなる?世界同時不況の行方」だった。素晴らしいお話で、目からウロコ、口からタメ息の連続だった。快刀乱麻を断つが如き明快な氏の主張を、以下にまとめて紹介する。

… … … …

最近「景気が底入れした」という声をあちこちで聞くようになった。例えば、G8財務相会合の「世界経済の安定化を示す兆候がある」旨の共同声明(6/13)など。しかしこの認識は「著しく甘い」と言わざるを得ない。今の状態は、幕間の狂言のような小休止状態に過ぎない。

世界同時不況を芝居にたとえよう。4幕に、序幕(プロローグ)と終幕(エピローグ)を加えた6幕の構成になるが、今は第2幕と第3幕の間あたりである。



序幕(プロローグ)は「金融大暴走の幕」(=カネの世界)だった。一人歩きした金融が大失速の末、大暴走した。第1幕は「金融大激震の幕」(カネの世界)。アメリカ大手投資銀行のリーマン・ブラザーズが倒産し、世界最大の保険会社・AIGが国有化された。

第2幕は「生産大縮減の幕」(モノの世界)、第3幕は「雇用大調整の幕」(ヒト
の世界)で、今はこの幕間にある。これからの第4幕は「通貨大波乱の幕」となり、終幕は「新たな夜明けか、永遠の暗闇か」。

始まりつつある第3幕(雇用大調整の幕)では、3つの厄介な問題が待っている。
1つは「自分さえ良ければ病」。個別の合理的な行動が、全体としては悲惨な状況になる(=合成の誤謬)。例えば金融機関の合理的な行動は、貸し渋りや貸し剥がしになる。一般企業だと雇用調整、国だと保護主義だ。その典型がアメリカの「Buy American」(自国製品の優先調達)である。

2つめは「統制経済化」。国がヒト・モノ・カネに口を出して介入すると、統制経済になる。オバマは、どこまで「不本意男」になるのだろう。彼は自分の本意に反して、「不本意ながら」と言いつつ、統制経済化に引っ張られている。GMは、Government Motorsになってしまった。リーマン以後のアメリカ政府の対応は「迷走」だ。

3つめは「元の木阿弥」。各国政府が大規模な経済対策を打ち出し、金融機関に資本を投入すれば、経済が大膨張して生産規模も過大に膨張する。これは結局、国が次のバブルの種をまいているのだ。「山高ければ、谷深し」で、高すぎる山に登ったから、世界同時不況の深い谷に落ちた。しかし「谷深ければ、山高し」とはならない。統制経済で再び高い山をめざせば、とんでもない状況になる。

グローバル恐慌―金融暴走時代の果てに
浜 矩子
岩波新書

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これから第4幕(通貨大波乱の幕)に至るには、2つの道筋がある。1つは、保護主義が蔓延すると自国が有利になるように為替を引き下げる「為替戦争」が起きる。2つめに、国債の格付低下と金利上昇が重なると、各国の財政が悪化し「国家破綻蔓延の懸念」が広がる。仮に皆がドルを手放せば、1ドル=50円があっても不思議ではない。

終幕(新たな夜明けか、永遠の暗闇か)で「新たな夜明け」に向かうには、2つのことが必要だ。1つは、「1人は皆のため、皆は1人のため」という心意気。今は「1人は1人のため」に陥っている。2つめは、「自分さえ良ければ」から「あなたさえ良ければ」への転換。つまり、互いの利益や市場を守るという意識だ。

「狂者の論理」から、強者と弱者が共存する「適者生存の論理」への転換が必要である。ジャングルには、百獣の王・ライオンだけが住んでいるのではない。このグローバル・ジャングルの中で我々は、ほど良いバランスで共生しなければならない。

新たな夜明けを迎えるには、人間の論理が変わらなければいけない。経済活動や景気は人間の意識や精神に大きく左右される。この不況時にこそ発想の転換をして、ライバル同士が互いに支え合うような共存社会を作っていかなければならない。



… … … …

いかがだろう。現在の世界経済が置かれている状況と今後の道筋が、明確に示されている。比喩が上手いので、スッと頭に入ってくる。「あなたさえ良ければ」という演歌調のフレーズも、気鋭のエコノミストの口から発せられれば、とても新鮮に聞こえる。

講演の冒頭で、司会の常山広氏(時事通信社奈良支局長)から、浜教授の近著『グローバル恐慌――金融暴走時代の果てに』(岩波新書)の紹介があり、面白そうだったので、早速買い求めた。

同書は、「BOOK」データベースに《アメリカのサブプライム危機は、金融市場を麻痺させ、全世界を震撼させている。現在の経済収縮は、金融危機の段階を超え、世界規模の「恐慌」へと歩みを進めているのではないか。危機拡大の要因を解説しながら、事態の意味、世界同時不況のゆくえについて考察。金融の暴走をもたらしたグローバル経済を変革する必要性を強く訴える》とある。

私はまだ読み始めたばかりだが、「あとがき」に教授はこう記している。《誰も誰かを意識的にいじめようとしているわけではない。我が身がかわいいだけである。その人間的な思いがパニックを世界に広める。人間の弱さと手前勝手が恐慌をグローバル化させ、地球経済の傷口を深くする。だが、人間は弱くて手前勝手なだけではない。同時に、優しくて勇気に溢れてもいるはずだ。そして知恵にも富んでいるはずだ。今こそ、優しさと勇気と知恵をもって、弱さと手前勝手を克服すべき時だ》。

「自分さえ良ければ病」を克服する道筋を示唆しているのだが、これはもう、立派な文明論だ。他にも《人間の営みである経済活動の中でも、金融は最も人間的な信用の絆で形づくられている。そうであるはずだった金融の世界から、人間が消えた。(中略) 金融もまた人間による人間のための営みであることを、地球経済が思い出すべき時が来ている》など、含蓄に富んだ指摘が随所にちりばめられている。

今回のブログ記事では、浜教授の主張のごく一部しか紹介できていないので、ご興味のある方には、本書のご一読をお薦めする。私も読み終わり次第、レビューを当ブログで紹介したいと思う。

それにしても、素晴らしい講演会だった。次回の7/22(内外情勢調査会 奈良支部7月例会)は、リクルート社から杉並区立和田中学校校長を経て、現大阪府特別顧問の藤原和博氏である。演題は「『つなげる力』で問題解決」。これも楽しみである。

つなげる力
藤原 和博
文藝春秋

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ならまちで昼食を(13)猿沢荘「グリルやすらぎ」の大和肉鶏照焼丼

2009年06月18日 | ならまちで昼食を
ご存じ「大和肉鶏照焼丼(やまとにくどり てりやきどん)」は、奈良県農林部マーケティング課が推進する「奈良のうまいもの」創作料理7品の1つで、現在、県内25ヵ所で提供されている。

創作料理7品とは、03年(平成15年)に《全国からご応募いただいた337点のレシピやアイデアを基に「奈良のうまいもの」づくり部会で創作した奈良らしい7品のお料理》である。なかでも大和肉鶏照焼丼は、手頃な価格で奈良の特産品である「大和肉鶏」(名古屋種、ニューハンプシャー種、シャモの3品種をかけ合わせた新品種)が味わえる料理とあって、黒米カレーと人気を二分している。
http://www.pref.nara.jp/norinbu/umaimono/vba-htm/modern.html

県内の大和肉鶏照焼丼のうち、私が最も気に入っているのが、この猿沢荘(さるさわそう=猿沢池の南東側)地下1階・グリル「やすらぎ」の照焼丼である。正確には「地方職員共済組合奈良宿泊所 猿沢荘」だが、誰でも利用できる。
※猿沢荘の公式ホームページ
http://www.sarusawa-so.chikyosai.or.jp/

ご覧のように、大和肉鶏照焼丼に、小鉢が2品と味噌汁がついて税込700円と、とてもおトクな価格設定になっている。プラス100円でコーヒーもつく。



たいていの照焼丼は、鶏肉を薄くスライスしてあるが、ここの鶏肉は、唐揚げ用の鶏肉のようにぶつ切りで、しかもたっぷり載っているところが嬉しい。海苔の下から鶏肉が顔を出しているのがお分かりだろうか。

ただしご注意いただきたいのは、猿沢荘のランチメニューは日替わり(1日1メニュー)で、大和肉鶏照焼丼は月に2度しか回ってこない(今月だと10日と17日のみ)。営業時間は12:00~13:00の1時間限定で、しかも土・日・祝日はお休みである。


猿沢荘正面外観。地下レストランへは、東側の階段から直接入店できる

日替わりのランチメニューには、他にも黒米カツカレー、マグロ丼、上海カニ玉、煮込みハンバーグなど、美味しいメニューが並んでいる(すべて700円)。お店に行けば月間の予定表がもらえるので、これを見て訪ねるのも良いし、電話で確かめるのもアリだし、いきなり行って出てきたメニューを味わうのも楽しい。

大和肉鶏照焼丼は、月に2度しか味わえないレアものメニューであるが、いちどチャレンジしていただきたいと思う。

※猿沢荘(グリルやすらぎ) 奈良市池之町3 TEL: 0742-22-5175・5176
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新聞の将来

2009年06月16日 | 意見
土曜日(6/13)付のフジサンケイビジネスアイ1面トップを飾ったのは、「新聞 有料配信の将来性」という記事だった。新聞が、新聞業界の問題を1面トップで取り上げるのは、極めて珍しいことだ。ピックアップすると、

《景気後退による広告の激減や無料インターネットサイトでのニュース閲覧の普及による部数減などを背景に、米国と日本の新聞業界が揺れている。頼みのネット事業の飛躍を目指し、携帯電話や専用端末への配信など有料サービスの構築を模索する動きが本格化しそうだ》。
http://www.business-i.jp/news/sou-page/news/200906130029a.nwc

《国内では全国紙5社のうち、朝日新聞社と毎日新聞社が単体業績で営業赤字に転落、毎日新聞は最終損益でも15年ぶりの赤字となった。日本経済新聞社の場合、景気悪化で経済情報を求める読者が増え、「部数は堅調」(広報グループ)だったものの、広告収入の落ち込みで利益を減らした。産業経済新聞社も、夕刊フジやサンケイスポーツの販売部数減少が響いた。業績悪化の理由は、広告収入の激減にある》《新たな広告収入を見込んだネットのニュース配信も広告単価が下がり、着実に収益をあげるには至っていない》。



これは深刻だ。最近、新聞業界をめぐる問題が、雑誌などによく取り上げられる。週刊新潮が報じた「部数水増し」記事も、その一環だろう。

《「部数水増し」報道に抗議 朝、毎、読3社》《新聞業界が販売部数を水増しして公表、広告料金をつり上げているとした「週刊新潮」6月11日号の掲載記事を事実無根として、朝日、毎日、読売新聞の各社が同誌編集部あてに抗議文を送ったことが4日、分かった。新聞広告で「読売18%、朝日34%、毎日57%が配られずに捨てられていた」としており、各社は同日付の紙面で「実態と異なり、全く信用できない」などと反論。各社は訂正や謝罪を求めるとともに、「損害賠償を含む法的措置を検討する」(毎日)などと通知した》(6/4 共同ニュース)。
http://www.47news.jp/CN/200906/CN2009060401000185.html



しかし週刊新潮は、最新号(6/18号)でも続報(短期集中連載の2回目)を掲載している。《今朝も販売店から配られずに棄てられた「部数水増し」の動かぬ証拠》の見出しに、《新聞社が“実売”だと言い張る部数のうち、かなりの割合が、実際には読者に配られないまま棄てられている「押し紙」問題。連載第1回に対し、大手新聞各社は猛烈な抗議文を送りつけてきた。ならばお見せしよう。これが「部数水増し」の動かぬ証拠である》と、今回も挑戦的である。

この号では動かぬ証拠とばかりに、押し紙を回収しているトラックを撮影し、さらに追跡してリサイクル業者へ運んでいくところまで確認している。かつての写真雑誌「FOCUS」ばりの取材ぶりである。



押し紙については、すでに週刊ダイヤモンドの「新聞・テレビ複合不況」特集(08.12.6号)などでも大きく取り上げられていたが、今回は「損害賠償を含む法的措置を検討する」(毎日)とあるので、実態は司法の場で明らかにされるだろう(新聞社は全面否定しているから、実態が明らかにされても問題はないはずだし)。

「部数水増し」問題はさておくとしても、新聞というメディアの危機については早くから報じられていた。2年前のITmedia News(06.5.26付)には《新聞に生き残りの道はあるか 新聞社サイト、アクセス伸びず》という記事が出ていた。



《新聞の読者は目に見えて減っており、新聞社サイトの読者数の伸びも鈍い――ネットレイティングスの萩原雅之社長はこんな現状を紹介し、「新聞社はもっと危機感を持つべき」と警告する》。

《NHK放送文化研究所の「国民生活時間調査」(2005年版)によると、新聞を読む人はここ10年で大きく減った。特に、30~50代の働き盛り男性の落ち込みが激しい。「おそらくネットのせいだろう」10年前と比べると、男性30代、40代で26ポイント、50代で18ポイント減っている。接触時間の落ち込みも、男性40代、50代で著しい》。

《新聞社(全国紙)サイトのユニークユーザー(UU)数はここ5年間、ゆるやかに伸びているが、「ネット人口が5年で4~5倍になったことを考えると、もっと伸びてしかるべき」(萩原社長)で、成長は鈍い。その一方で、新聞社などから配信を受けた記事をピックアップして掲載する「Yahoo!トピックス」のUU数は急激に伸びている。「若い人はみんな、世の中の情報をYahoo!トピックスから得ていると考えていいだろう」》。



しかも、これまでどのメディアも報じて来なかったもっと大きな問題がある。それは木材資源(=紙)の費消問題である。地球環境に世間の関心が集まるなか、これは大問題である。

日本製紙連合会のHPによると、2007年度の紙の生産量は19,192千トン、うち新聞用紙は3,802千トンと約2割(19.8%)を占める。これは印刷情報用紙の11,666千トン(60.7%=約6割)に次ぐ高い比率である。
http://www.jpa.gr.jp/states/paper/index.html#topic02

私たちは毎日オフィスで、ちまちまと紙の節約をしている。両面コピーをしたり、使用済み用紙の裏面をもう一回使ったり、A3をA4に縮小したり、と。しかしその一方で新聞紙が何の疑いもなく印刷され、しかも週刊新潮が報じるように、その日の新聞が販売店に到着するや否や、約3割をトラックが回収し、リサイクル業者に持ち込んでいたとしたら…。

消費者が新聞のような紙媒体から、Yahoo!トピックス、Googleニュース、個人ブログ、SNS日記などのネット媒体に情報源をシフトしているのは、エコロジー的にも正しい行動なのである。



だからといって私は、新聞社は衰退産業だなどと決めつける気はない。当ブログのネタ元だって(今回のように)たいていは新聞である。冒頭に紹介したフジサンケイビジネスアイの記事は、次のように締めくくられている。

《日経新聞は1月、日経産業新聞の携帯サイトを月額利用料2100円で立ち上げたほか、産経新聞も米アップルの「アイフォーン」向けに新聞全体の電子データを配信するサービスの有料化を検討している。米国での報道によると、ニューヨーク・タイムズやワシントン・ポストなどは、長期の購読契約を前提にアマゾン社の開発した「キンドル」と呼ばれる電子端末を廉価に提供するサービスを今夏にも始めるという》。

《こうした取り組みについて、野村総合研究所情報・通信コンサルティング部の阿波村聡主任コンサルタントは「単に紙媒体をネットに置き換える意識では小さなパイを奪い合う」と指摘。専門性の高い情報に、別途情報料を徴収することや、記事に対応した携帯広告の配信など複合的な収益モデルが不可欠としている》。



経済評論家の勝間和代は『効率が10倍アップする新・知的生産術』(ダイヤモンド社刊)で、《マスメディア情報を減らし、実体験、他者体験、良書を3大情報源》とせよ、と書くが、よく読むと、この場合の(減らすべき)マスメディア情報の例にはテレビと雑誌は入っているが、新聞は除外されている。

ネット媒体へのシフト、広告料の減収、押し紙報道に地球環境問題と、新聞をとりまく課題は山積しているが、新聞社が持つ知的・人的資源の価値は極めて高い。これをテコに「複合的な収益モデル」をぜひ作り上げ、良質な報道を続けていただきたいと思う。

※写真はすべて「花空間けいはんな」(京都府相楽郡精華町)で07.7.7撮影。
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まろやか味のうどんが食べたい!(2)カップ麺・東西比較

2009年06月14日 | グルメガイド
今回は、(1)のうどん屋さんの話から少し横道にそれて、カップ麺(カップうどん)の話を紹介したい。必要あって、東京に住む知人のTさんから何種類かのカップ麺を送ってもらっていた。これをもとに、東西のカップうどんを食べ比べてみたのである。
※参考:まろやか味のうどんが食べたい!(1)ツユが辛くなった?
http://blog.goo.ne.jp/tetsuda_n/e/aa196121a45bd3b1996339623e8936bf

まずはカップうどんの代表格、トップ写真のどん兵衛(日清食品)と赤いきつね(東洋水産)の東西比較から。どん兵衛は、東京版(Aのマーク=茨城県取手工場で製造)は液体ツユ、関西版(Oのマーク=滋賀県栗東工場で製造)は通常の粉末ツユだったが、塩加減に変わりはないだろう。なお液体ツユは、食べる直前に入れることになっている。


どん兵衛。向かって左が東京版(液体ツユ)、右が関西版(粉末ツユ)
ツユの色がよく見えるように、油揚げは取り除いてある

これは見た目で明らかだろう。関西版は、薄口醤油を使い昆布ダシ(アミノ酸)を利かせたまろやか味で、ほんのり甘みがある。東京版は、濃口醤油を使い鰹ダシを利かせたこってり醤油味。お餅につける砂糖醤油で仕上げたような濃厚なツユで、食べ慣れない関西人の私にはキツい。油揚げの味も違うように感じる。よく「東京のうどんは、色は濃いが決して辛くない」という人がいるが、どん兵衛に限ってはそれは当てはまらない。やはり東京版の方が辛い(とりわけ醤油辛い)のである(麺・かやく・スープの含有ナトリウム量も少し多い)。
http://www.nissinfoods.co.jp/utility/customer/faq.html


左は茨城県取手工場製、右は滋賀県栗東工場製

日清食品のHPには《1976年に誕生したどん兵衛は、他のカップうどんとの明確な差別化をはかるため、開発段階から、綿密な戦略が立てられていました。その戦略とは、マーケティングの手法を取り入れること。日清食品では1976年にマーケティング部を組織し、そして、製品開発の発想の起点を「お客さまのニーズと社会的な要請に応える」ことに改めたのです。その結果、「日清のどん兵衛」は、地域ごとの嗜好の違いをも考慮した、当時としては非常に画期的な製品となったのです》とある。なるほど、綿密なマーケティングの末、この味にたどりついたのである。
http://www.nissinfoods.co.jp/knowledge/madeby/donbee/index.html


どん兵衛のツユ比較

なおパッケージにある「べっぴんうどん」とは、08年に改良されたふっくら・ストレート麺のことで《従来よりめんを厚く、長さを約2倍にして、すすり心地の爽快さ、のどごしのよさ、もっちりとしたコシのある、生めんのうどんにさらに近づきました》という。
http://www.nissinfoods.co.jp/knowledge/madeby/donbee/pinsoba.html

赤いきつねは、東京版(丼には東を示すEの表示がある)のフタには「鰹だし!香る!うまい!こだわりのつゆ」、関西版のフタには「昆布だし!鰹だし!うまい!こだわりのつゆ」とあり、すでに差別化ができている。また関西版には「関西」との表示がある。


赤いきつね。左が東京版

こちらも写真の通り、ハッキリした差があった。関西版ツユには、ほんのり煮干しの味もする。塩・醤油味は、東京版の方が辛い。赤いきつねでも「東京のうどんは、色が濃いだけで辛くない」という俗説は覆されたのだ。誰がこんなウソを言い出したのだろう。なお赤いきつねの東京版に甘みは少なく、そこが甘辛さの際だつどん兵衛(東京版)と違う点で、私にはこちらの方が食べやすかった。


赤いきつねのツユ

さてここまでの話は、読者の皆さんの想定の範囲内だったと思う。私もそうだ。肝心なのは以下の話なので、もう少しお付き合い願いたいと思う。

東京から取り寄せたカップ麺のなかに日清食品の「ごんぶと きつねうどん 生タイプめん」(Fのマーク=静岡県焼津工場製)と「どん兵衛 特盛りかき揚げうどん」(Oのマーク=栗東工場製)があった。近くのスーパー(奈良市内)で同じ商品を買い求めたところ、製造工場のマークは同じだった。食べてみても味は同じで、どちらも関西風に昆布ダシを利かせたまろやか味だった(特に「ごんぶと」はマイルド)。

つまり、東京でも関西風のうどんが売られていたことになる。うーん、これは困った。せっかくスッキリと東西の区別ができたというのに、東京で関西風が受け入れられては、筋が通らなくなる。


東京で売っていたごんぶと(静岡県焼津工場製)

この話を別の知人にしたところ、わざわざ有料記事検索をかけてくれて、以下の情報が集まった。まずは7年前の産経新聞の記事「近ごろ都に流行るもの 讃岐うどんチェーン 東京人の味覚に変化!?」(02.8.31付)から。

《「東京のうどん」といえば「真っ黒なしょっぱい汁にソフト麺」が定番だ。だが、その牙城(?)に「透明な薄味汁にシコシコ麺」という讃岐うどんの進出が目立ってきた。今月25日にはJR恵比寿駅構内に、来月6日には「百円讃岐うどん」を展開する香川の業者が渋谷に乗り込んでくる。東京人の味覚も変化したのか?》。

JR恵比寿駅構内の《「あじさいの客は、そば8割に対してうどん2割でしたが、従来の濃いつゆに加えて薄味の関西風も選べるようにしたところ、うどん客のほぼ全員が薄味を選ぶ現象が現れた。関東圏でも、関西風志向が強まっている。麺もダシも本格的な讃岐うどんなら、潜在的なうどん需要がもっと掘り起こせると思った」と日本レストランエンタプライズでは話す》。


讃岐うどんを意識したごんぶと。まろやかで美味しい

同じ産経新聞の「ヒガシマル醤油の関西風味『うどんスープ』発売40周年 首都圏でブレイク」(04.3.31付)から。《淡口(うすくち)しょうゆの全国シェア4割を占めるトップメーカー、ヒガシマル醤油が出す関西風味のうどんつゆの素(もと)、「うどんスープ」の首都圏での売り上げが、ここ2年間で倍増した。1昨年来の讃岐うどんブームが需要急増の引き金になった。4月で発売40周年を迎えるロングセラー商品だが、同社ではさらに上積みを狙って首都圏での販売促進活動を本格化させた》。

このように、2002年からの「讃岐うどんブーム」の影響で、東京でもまろやか味が受け入れられるようになったのだ。だからマーケティング戦略に長じた日清食品などは、讃岐風に《透明な薄味汁にシコシコ麺》のごんぶとを発売したり、一部のどん兵衛を関西風味にしたのである。讃岐うどんのパワーは、すごい。


東京で売っていたどん兵衛(滋賀県栗東工場製)

さらに最近の調査では、こんな結果も出ていた。日経消費ウォッチャー「エリアマーケティング最前線 『地域発』だから売れたこんな品<特集>」(09.3.10)によると《濃い味を好むとされている東北地方であっさりしたスープ味のうどんが好まれたり、地域色が濃いとされてきた味噌の味も全国的に平準化する傾向が強まってきている。すき焼きの調理法も東日本と西日本の違いが薄らいでいる》。

《「うどんのつゆ」。一般に東日本や北日本で濃い味が好まれるといわれてきたが、「(濃い口しょうゆを使った)色が濃い」つゆが一番好きだと答えた人の割合と、「(薄口しょうゆを使った)色が薄い」つゆが一番好きだと答えた人の割合を比べると、「色が濃い」が「薄い」を明確に上回ったのは北海道だけだった》。

《「濃い」が好きだと思われがちな東北では「薄い」ほうにむしろ支持が集まっており、北関東や甲信越北陸ではほぼ拮抗している。近畿以西の西日本では圧倒的に「薄い」に支持が集まっており、これは伝統的な西日本の味とマッチしている。東・北日本で伝統的なし好が崩れているともいえるが、「薄味志向が健康イメージとあいまって拡大していることの影響を受けた可能性もある」(平林教授)》。

讃岐うどんが引き金となった「うどんつゆのまろやか化」が、健康志向と相まって全国に広がっているという構図である。すると、このシリーズの(1)で書いた「関西のうどんが辛くなっている」という私のリサーチ結果と矛盾することになる。もう少し、うどん屋さんでのリサーチを進め、次回(3)で報告させていただきたい。
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