ヌートリアをはじめて見たのは10年ほど前だったか。仕事上の遠出長距離ドライブ中に『あーまたタヌキがはねられているなぁ』と思いながら横を通り過ぎしな、『お、なんか違うな、もしかして、もしかして・・・幻のニホンカワウソか!?』と思ったのだ。車を止めて、降りて、観察して、『これはヌートリアだ』と確信した。
戦争中に防寒用毛皮確保のため、さかんに飼われていたが、敗戦後は軍隊用の毛皮は必要なくなって、放されたり逃げたりしたのが野生化したという記事を何十年か前に読んだことがあった。いつかこの巨大ネズミを見てみたいと思っていたが、お初にお目に掛かるのが轢死体とは。
その後、バードウォッチングに一時凝ったときに、桂川で生きているのを見ることができた。泳ぐのも見たし、中島になっている陸でくつろいでいる姿も観察した。そのとき河川敷の畑で仕事してる人にヌートリアの被害はないのかと聞いてみたが、ヌートリアがいることも知らないようだった。そして、そこから4Kmほど上流にある観光名所渡月橋あたりにいるヌートリアの、草を食っている姿がテレビニュースで流されたのは、その2~3年後だったと記憶している。
もう京都でヌートリアは、自然観察好きな人の目に馴染みになっているだろう。画像のものは私の散歩コースの山科川で撮った。対岸に近い中島付近を泳いでいるのを見つけて、私の旧式になったデジカメのズームを一杯にして、手すりにカメラを押し付け、息を詰めてようやくものにした。『あれは何ですか』と私に聞く人がいたので説明したら、「あんなのがいるんですか」と驚いていた。
川に隣接して京都市のゴミ焼却場と下水処理場がある。下水処理場から処理水が放出されている付近はいつも臭い。そんな環境でも大きなニゴイはたくさんいるし、鴨も鷺も川鵜もいてヌートリアもいる。少し下流の木幡池にはヌートリアがいると聞いていたが、山科川では初めて見た。つい3日前のことだ。その日は別のひと回り小さい個体も見た。増えすぎると農作物を荒らしたり、田んぼのあぜに穴を明ける被害を出して駆除されるそうだ。願わくは人知れず知る人ぞ知るマスコットでいて欲しい。