エッセイ  - 麗しの磐梯 -

「心豊かな日々」をテーマに、エッセイやスケッチを楽しみ、こころ穏やかに生活したい。

虫たちの気持ち

2007-06-20 | 日々の生活
 久しぶりの雨降りだ。梅雨入りも大分遅れているが、数日中に宣言が出されそうである。 しとしと降る雨に、咲き始めた、多分ベニガクだろうアジサイが爽やかに元気に見える。

 こんな雨降りに、チョウやトンボ、ハチたちはどうしているだろうか。昨日まで稼ぎ時の晴天に飛び回ったから、今日は少し身体を休めているのかも知れない。

大好きな作家、北杜夫に「幽霊」という作品がある。青春の頃から、何度読んだか分からない作品だ。北杜夫が23歳の頃の初めての長編小説、その、第1章の書き出しにいつも思い出される文章がある。そこには蚕の気持ちが表現されている。
【 「人はなぜ追憶を語るのだろうか。」・・・・人は知らず知らず、くる年もくる年も反芻し続けているものらしい。・・・・それにしても、人はそんな反芻をまったく無意識につづけながら、なぜかふっと目覚めることがある。わけもなく桑の葉に穴をあけている蚕が、自分の咀嚼するかすかな音に気づいて、不安げに首をもたげてみるようなものだ。そんなとき、蚕はどんな気持ちがするのだろうか。」 】

 いつも、生きとし生けるものにはこころがあると信じている。虫たちがどんな気持ちで雨の庭を見つめているだろうか、ぼんやり考えた。