【寒さの中、木陰で咲き続けるサルビア】
冷たい風雨の中、傘でよけながら短大の図書館へ向かった。梅雨を思わせる降りだが、木々の葉も落ち、枯れ色の芝生に間近な冬が感じられた。
閲覧する文藝春秋ももう新年号だ。今年もまた暮れるのか。
掲載記事は、 『がんを詠う 歌人母娘の往復書簡 河野裕子 永田 紅
お母さん、なぜ自らの病を詠い続けるのですか── 』がよかった。
癌を患いその辛い歌人の母の闘病の日々を、同じく歌人の娘さんと往復の書簡を交わす。歌人なれば、それぞれに繊細なこころで辛かった日々を振り返っていた。今なお抗がん剤治療中だが、その都度、夫や娘の愛に支えられて生きたこころを詠っていた。
同じように大病から助けられた我が身に照らして、自分の入院や手術、闘病中のことをいろいろと思い出した。家族に心配をかけたことなどを、今の健康があることを今更のように感謝しながら振り返った。その頃元気だった母にも、あまり病状を知らせないままに、ずいぶん心配させた。
大病から生還したすぐに闘病記を書いた。いつしか忘却の彼方へ忘れ去られることが辛かったからだ。闘病中の病状や心の動きとともに、いろいろと苦労、心配をかけた妻や子供たちへの感謝の気持ちを残したかったからでもあった。
今それなりに健康を取り戻したものの薬に頼りながら、月一度の病院通いを続けている。そして心身ともに失ったものは多かった。しかし、こうして生かされた現在、失ったもの以上に大切なものに気づかされたと思っている。その一つは一変した人生観だ。
改まって、健康に感謝、人々に感謝の日々だ。残された老後、これまでいただいたご恩に報いたい。そして、家族に支えられ、穏やかに、楽しく過ごしていきたいと思っている。
冷たい風雨の中、傘でよけながら短大の図書館へ向かった。梅雨を思わせる降りだが、木々の葉も落ち、枯れ色の芝生に間近な冬が感じられた。
閲覧する文藝春秋ももう新年号だ。今年もまた暮れるのか。
掲載記事は、 『がんを詠う 歌人母娘の往復書簡 河野裕子 永田 紅
お母さん、なぜ自らの病を詠い続けるのですか── 』がよかった。
癌を患いその辛い歌人の母の闘病の日々を、同じく歌人の娘さんと往復の書簡を交わす。歌人なれば、それぞれに繊細なこころで辛かった日々を振り返っていた。今なお抗がん剤治療中だが、その都度、夫や娘の愛に支えられて生きたこころを詠っていた。
同じように大病から助けられた我が身に照らして、自分の入院や手術、闘病中のことをいろいろと思い出した。家族に心配をかけたことなどを、今の健康があることを今更のように感謝しながら振り返った。その頃元気だった母にも、あまり病状を知らせないままに、ずいぶん心配させた。
大病から生還したすぐに闘病記を書いた。いつしか忘却の彼方へ忘れ去られることが辛かったからだ。闘病中の病状や心の動きとともに、いろいろと苦労、心配をかけた妻や子供たちへの感謝の気持ちを残したかったからでもあった。
今それなりに健康を取り戻したものの薬に頼りながら、月一度の病院通いを続けている。そして心身ともに失ったものは多かった。しかし、こうして生かされた現在、失ったもの以上に大切なものに気づかされたと思っている。その一つは一変した人生観だ。
改まって、健康に感謝、人々に感謝の日々だ。残された老後、これまでいただいたご恩に報いたい。そして、家族に支えられ、穏やかに、楽しく過ごしていきたいと思っている。