透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

GWな日に考えたこと

2006-05-06 | A あれこれ

昨日、安曇野ちひろ美術館に出かけてきました。同行者達はもちろん展示作品を熱心に観賞していましたが、私は作品は二の次で、天井を見上げたり、壁を見たり・・・。

外観の印象。この美術館は安曇野の風景に歓迎されているな~、美術館も居心地がよさそうだな~ 要するにこういう印象なのです。

内藤廣さんの設計意図がよく分かります。 内藤さんは昨年の「新建築」10月号の巻頭論文でこう書いています。

**スペースモダニズムという言葉を使ってモダニズムを批判したことがある。人工環境を携えてどこにでも着陸する月面着陸船を思い浮かべたからだ。モダニズムは場所を選ばない。場所の特殊性を拒絶し、歴史の個別性を無視する。**

この一文を読んで、あの美術館を思い浮かべました。金沢21世紀美術館。 **まるで宇宙船のようだと斬新なデザインが話題になっている**

と建築雑誌が報じていました。かたちは直径113mの真円、確かに巨大な宇宙船。

ふたつの美術館のデザインは対極にあります。 内部空間。ちひろ美術館の天井は、カラ松材の棟木とタル木のシンプルな構成の繰り返し、化粧野地板もムクのカラ松板。壁は珪藻土塗り、くし引き仕上げ。そして床は、カラ松のフローリング。材料の質感をストレートに表現しています。

一方の金沢21世紀美術館。フラットな天井はアルミパネルなどにたぶん塗装した仕上げ、壁は継ぎ目無しの鋼板に白のペンキ仕上げ。床、コンクリート金ゴテ仕上げ。

この極端な違い、建築デザインの多様性を実感します。 ところで、「建築は設計者の知性と感性の統合の所産」であり「建築は利用者の知性と感性によって受容される」と私は考えています。ここは敢えて難しい表現、というか平易に表現できないんです・・・。

設計者も利用者も両者のバランスが皆違います、当然ですが。 知性的な建築を成立させるための技術の指標は具体的で分かりやすいのです。例えば壁の仕上げ、できるだけフラットに。対して、感性に訴える建築の技術的な指標は曖昧です。壁の仕上げはもっと柔らかい雰囲気でというように・・・。

先のふたつの美術館、どっちがどっち? 当然、ちひろ美術館が感性優位な設計、利用者の感性に訴えてくる建築。金沢21世紀美術館が知性優位な設計で利用者の知性に訴えてくる建築。

どちらが優れているとかではなくて、どちらが好みかと捉えておくべきかも知れません。