**目の前に現れたのは、化粧気のない、清楚な大学院生のような人だった。**
藤原正彦さんは、取材のために研究室に現れた小川さんの印象をこう書いている。『博士の愛した数式』のカバーの折り返しの写真からもそんな雰囲気が伝わってくる。
『アンネの日記』、おそらく世界で一番読まれている日記だろう。小川さんが、『アンネの日記』と初めて出会ったのは中学一年の時だったという。そしてその出会いが、作家を志すきっかけとなったとのことだ。
『アンネ・フランクの記憶』角川文庫を読んだ。小川さんがアンネの足跡をフランクフルト、アムステルダムなどに訪ねた旅の記録。
アンネが日記を書いた隠れ家、強制収容所などを訪ねた時の心の動きを静かに丁寧に書いている。アンネの親友や彼女の家族を当時助けた人達との面会の様子などを読んで、涙ぐんでしまった。
作家としての原点を確認する旅。 川上弘美さんが「新刊が出たら必ず買う」という作家の一人が小川洋子さんだという。硬質な筆致で描かれている小川さんの小説は川上さんの小説とは随分雰囲気が違う。
私が新刊が出たら必ず買うのは川上さんだけ。小川さんの作品は文庫になったら必ず買うことにしている。