■ 松本市美術館の「子供創作館・情報交流館」(写真)で開催中の第一回松本安曇野住宅建築展を観た。住宅建築の設計が好きな人たち7人の作品展。写真と模型の展示、スライドの上映。
木造住宅。木の架構あらわしの内部空間、オープンキッチン、スキップフロア、無垢板のフローリング、左官仕上げの壁、暖炉・・・。
これらの要素は多くの展示作品に共通しているが、それぞれの個性が異なった空間を創り出している。皆さん「建築」が大好きなんだな、一つひとつの作品を観ながらそう思った。
Hさんの作品、内と外の繋がりを重視したと思われる非常に開放的でシンプルな空間。端正なデザインにますます磨きがかかってきた。
Aさん、この人はとにかく上手い。自然素材の魅力を充分引き出してる。ざっくりとした、心地良い空間。
Oさんとは初対面だった。とにかく器用な人、完成写真は自分で撮るとのこと、きちんとあおってゆがみを修整した写真はプロ。美しいアングルをきちんと抑えている。自作の模型も精度よくできていた。
敷地に立つ。環境の文脈を読み取る。建築をそこにどう位置付けるか・・・。スケッチを繰り返す。スタディ模型を作る。曖昧なイメージが次第に具体的な形になっていくプロセス・・・。
この過程にも興味がある。次回は設計のプロセスも公開してもらえないだろうか。
芝生の中庭、これは何だろう・・・。オブジェか?
ワークショップで子供たちが木と縄を使って作った「建築」だそうだ。自立するように棒を上手く使っている。トンネルがあったり小屋状のものがあったり、子供たちが楽しんで作ったことが伝わってくる。
空間体験することで、自分達を取り巻く環境に興味を持ってもらえたらいいな。
■ 芥川賞の選考委員を務める作家のうち、高樹のぶ子さんの作品は読んだことがなかった。20年以上も前に芥川賞を受賞した『光抱く友よ』新潮文庫をようやく読み終えた。
優等生の相馬涼子とアル中の母親と暮らす「不良」の松尾勝美、二人の女子高生の友情物語。
具体的な作品は浮かばないが、このような組み合わせは特にめずらしくはないように思う。でもいまどきの小説では取り上げないテーマのような気がする。
**屋根すれすれに飛んできた黒い小さな鳥が、見えない空気のかたまりをひょいと乗り越え、校舎の向こう側に落ち込んだ。**(途中省略)**ガリ刷りしたばかりの会計報告書のインクの匂いが、夕刻の冷たい大気に混じって鼻をついた。** 小説の書き出しを読んで、しばらく積読状態にしていた。こういう表現はどうも好きになれない。
そのまま書棚に納めてしまおうかとも思ったが、長編でもないので、何とか読み終えた。涼子が松尾の家に遊びに行って、母親との荒んだ生活を目の当たりにするあたりの描写は、この作家の凄さを感じさせた。
『アサッテの人』の選評で高樹さんは「細部のリアリティ、生理感覚」をこの作品の成功理由に挙げている。この評価は彼女自身の作品『光抱く友よ』にもあてはまる、読了後そう思った。
やはり自身の文学観に合った作品を選ぶ、そういうことなのだろう。