透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

大井町駅

2007-09-17 | B 繰り返しの美学


 アートな週末東京 番外編。

「繰り返しの美学」からしばらく遠ざかっていました。このシリーズ、再開です。繰り返しの美学を意識して街を歩くと結構目に付くものです。

ここは大井町駅のホーム。土曜日は駒沢公園に程近い叔父の家に宿泊。日曜の朝は自由が丘にバスで出て、そこから電車を利用したという次第。

駅のホームは長い直線的な空間ですから「繰り返しの美学」が頻出してもおかしくありませんが、経済性優先なのかホームに掛けられたすっきりフレームを見ることはあまりありません。

ホームの中心に建てられた円柱からヤジロベーのように片持ち梁が掛けられていて、鋼管の方杖が取り付けられています。そのフレームの繰り返し。

この方杖は構造的に有効であることは経験的に分かります。そして繰り返しを視覚的により強く印象付ける効果もあるような気がします。屋根面を構成するフレームがもっとすっきりしていれば更に美しくなったと思います。

東京駅には未だに木造のトラスを使った架構が残っていますが、残念ながらいろんなものが邪魔をしてきちんと見通すことができません。撮影を諦めました。

コルビュジエを学ぼうかなと思って購入した本

2007-09-17 | A あれこれ



 コルビュジエについて書いた本、コルビュジエが書いた本はたくさん出版されている。 展覧会に合わせた企画だろうか、東京駅前、オアゾ内の丸善ではコルビュジエ関連の本のコーナーが設けられていた。

建築関係の本は発行部数も少なく図版を多く載せることなどからだろうが、値段が高い。何冊か欲しい本があったが結局ル・コルビュジエの住宅をめぐる公開講座の記録を収めたこの本を買い求めた。

中村好文、鈴木了ニ、鈴木恂、八束はじめ、伊東豊雄、富永譲、以上6人の建築家がそれぞれ異なる観点からコルビュジエの作品を論じていて興味深い。

昨日帰りの電車の中で読もうとしたが、夕食で飲んだワインが効いてついうとうとしてしまって、結局ほとんど読むことができなかった。

カバンに入れて持ち歩いて空き時間に読もう。


横須賀美術館 2

2007-09-17 | A あれこれ

 アートな週末東京 4

昨日(16日)、今春開館した横須賀美術館まで出かけた。品川から京浜急行で約1時間、馬堀海岸駅からバスで約10分。

後方を緑の山に囲まれ、前方には海が広がるという絶好のロケーション。なだらかな芝の斜面の向こうにガラスの外皮に包まれた透明感溢れる美術館が見える。塩害から守るために考えられたダブルスキン。ガラスの外皮と鉄板の内皮との間に細い部材で構成されたトラス梁が透けて見えている。今までに見たことのない軽やかなシーン。



細長いコンクリートブロックが敷きつめられたアプローチ。玄関を入ると吹き抜けの常設展示ギャラリーにブリッジが掛けられている。ブリッジを渡って正面のエントランスホールでチケットを購入。

展示スペースがそれぞれ独立してはおらず空間的に繋がっていて、変化に富んだシーンが続く。壁から天井へ連続している鉄板の白い内皮。天井高は約12メートルだと図面を見て知る。

鉄板の壁にあけられた丸い穴からレストランが、海が見える。天井の穴からは柔らかな自然光が注ぐ。館内には美しいシークエンスが展開している。作品の展示スペースとしてのみ在るのではない心地良い空間。入れ子のように重なる空間構成が非日常性を演出している。 

まつもと市民芸術館の壁に穿たれた「あわあわな開口」とは違って美術館の外のシーンを取り込む丸窓、それは海を行き交う船の窓を思わせる。

屋上広場に出てみると屋根の外皮までがガラスで造られていることが分かる。乳白色のシートを挟んだ合わせガラスと網入りガラスから成るペアガラスのジョイントはシール納めだが、シール材の寿命は短いからメンテナンスが大変だろうな、とも思う。

この美術館は夕景も綺麗だろう。内部の光があちこちから外部にもれて、建築を緑の丘に浮かび上がらせるに違いない。



 館内のレストラン「アクアマーレ」のテラス席にはキャンドルが用意されていた。夕方になると幻想的なシーンが浮かび上がるだろう。

山本理顕さんの作品を実際に見るのは今回が初めてだが、なかなかオシャレな空間だった。

気になったことも書いておく。

内藤廣さんは現代建築には時間という視点が欠如していると批判した。使用する材料や構法に経年変化に対する配慮がなされておらず、竣工時が最も美しく次第に汚れ、劣化していく建築。

この美術館もそのような建築になる可能性があるのではないか。海に面する敷地の環境は厳しい。台風の直撃を受けることもあるだろう。塩害対策としてガラスで覆ったということだが、そのクリーニングも大変ではないだろうか。先に書いたがシール材の劣化も気になるところ。屋外に使われているスチール材の塗装も頻繁に必要になるだろう。

メンテナンスフリーな建築など在り得ない。この美術館を管理する横須賀市には相当の覚悟が必要だ。


 


横須賀美術館 1

2007-09-17 | A あれこれ


■ 屋上から眼前に広がる海を見る。


■ ガラスのケースに収められた美術館、丸い「穴


■ 繰り返しの美学な庇 総延長100メートル


■ 丸い「穴」の向こうに見える海


■ 丸い穴の向こうのレストラン


■ ダブルスキンを支えるトラスの向こうに海が見える

「展示室内の撮影はご遠慮ください」という案内表示がりました。それ以外の場所ではOK、と理解して撮りました。


 


創造の軌跡を観る

2007-09-17 | A あれこれ

 アートな週末東京 3

新宿から地下鉄で六本木に移動。森美術館で開催中の「ル・コルビュジエ展」を観た。この建築家の知名度の高さ故か、土曜の夕方の会場は混んでいた。

展覧会が10のセクションで構成されていたことをパンフレットで知った。展示作品数が多く、じっくり鑑賞するにはかなり時間がかかる。 

コルビュジエが午前中絵を描いて過ごしたというパリのアトリエ、代表作の一つユニテ・ダビタシオン(集合住宅)、コルビュジエが晩年を過ごした小さな休暇小屋が会場内に原寸大で再現されていて、それらの空間を体感できるようになっていた。

最後のセクションに再現されていた休暇小屋はわずか8畳の広さ、簡素なワンルーム。室内にはソファとしても使えるベッド、サイドテーブル、本棚とテーブル、トイレなど生活に必要な最低限のものが設えられている。正方形のピクチャーウインドーの向こうは地中海・・・。

多くの作品のなかには知っている作品もいくつかあったが、最後の作品だという「サン・ピエール教会」など初めて観るものも何点かあった。この教会はコルビュジエの没(1965年)後40年経った2006年にようやく完成したという。丸みを帯びた四角錘台のユニークな外観。このプロジェクトは全く知らなかった。

コルビュジエはイスなどの家具や終の棲家となった休暇小屋から壮大な都市計画まで様々なスケールの空間の創造に才能を発揮して20世紀の巨匠と評価されているが、色彩豊かに描かれた抽象的な絵画にも優れた作品をたくさん残した。タペストリーもあった!

私はコルビュジエのリトグラフが好きで、大学の研究室に在籍していた頃、作品集に納められた好きな作品を接写レンズを使ってきちんと接写してプリントを手元に置いていたが、その所在は分からなくなってしまった。

この展覧会でル・コルビュジエの作品についてよく知らないということを再認識した。近代建築の始祖の作品を勉強しなくては・・・。

でもその想いはいつまで続くことやら。


心の深層を知る

2007-09-17 | A 読書日記



 アートな週末東京 2

東京の街を一望する超高層ビル上階のレストランで友人と食事を済ませたあと、東京オペラシティの1階で行なわれたトークサロンに参加した。テーマは「建築と心理学をつなぐ」。

建築家の連健夫さんは設計の際、発注者にコラージュ(切り貼り絵)をしてもらい心の深層、無意識の中の想い、願いを読み取って設計に反映させる手法を10年間実践してきた方。

心理療法の現場では「箱庭療法」が知られているが、クライアントの心の深層を知る方法として「コラージュ」も同類だろう。明快な方法だと思う。

コラージュのなかの特徴的なもの(例えば芝の斜面に作られた滑り台や十字架など)を直喩的に建築に採用することもしておられる。

コラージュを前にして会話を交わしながら心の奥底を読み解く作業、そしてそこに在る願いを建築に反映し具現化する・・・。

興味深い話を伺った。


闇に浮かぶ果物たち

2007-09-17 | A あれこれ



さくらんぼと青い鉢 1976

 アートな週末東京 1 

今回はまず浜口陽三の銅版画。新宿から大江戸線、半蔵門線と地下鉄を乗り継いで水天宮前駅3番出口の目の前、ミュゼ浜口陽三・ヤマサコレクションへ。

カラーメゾチントという技法で表現された浜口陽三の銅版画を観た。浜口は身近な果物をモチーフにした作品を創った。さくらんぼやぶどうなどの果物が闇に浮かんでいる。静寂の世界。グラフィックな表現は私の好み。

ちょうど「永遠の交響詩展」という企画展の期間中で他の作家の作品も展示されていたが、やはり浜口作品の奏でる詩情性豊かな独特の世界が圧倒的な存在感を示していた。

闇に浮かぶ胡桃 「くるみ 1978」は展示されていなかった。また機会を見つけて訪れたい。