透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

― 火の見櫓観察入門 脚

2014-01-18 | A 火の見櫓っておもしろい






 火の見櫓観察 今回は私がこだわる脚です。

漫然と眺めていると、火の見櫓のデザインの多様性には気がつかないでしょう。けれども、火の見櫓は十基十色です。例えば脚。こうして並べてみると、そのデザインはみな違います。美脚あり、そうでもない脚あり・・・。

櫓あっての脚、脚あっての櫓。背の高い櫓と低い櫓とでは構造的(力学的)必然としてデザインが異なります。両者不可分の関係ですからだから、櫓と脚を同時に取り上げるべきだとは思います。が、今回はデザインの多様性に注目ということで、脚のみ取り上げます。

注目は円弧状部材の有無。の3基、右の脚部は円弧状部材があることで左右の脚に一体感を感じます。左と中の脚部には円弧状部材がなく、左右バラバラな印象です。

それからトラスの脚か否か。の左と中の違いに注目。中の単材はなんとも貧弱。背の高い櫓は単材では構造的に成立しにくいので、トラス状の脚は必然でしょう。

どのタイプを美しいと感じるかは個々人の感性に因ることですから、工学的な観点から論じることは困難です。


の右の火の見櫓(@辰野町川島小学校の近く)の脚部のデザインはユニークです。

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本稿でいろんな脚があるということを分かっていただけたら・・・。


― 火の見櫓観察入門 手すり

2014-01-18 | A 火の見櫓っておもしろい

 火の見櫓の見張り台の構成要素の内、手すりに注目してみましょう。観察対象を絞ると各々の違いが分かりやすくなります。

シンプルなものから装飾的なデザインが施されたものまでいろいろあることが分かります。


シンプル1

シンプル2


女性的で繊細な曲線と男性的な×の組合せ


リズミカル 繰り返しの美学


エレガント 

探せばこんなに上品で優美なデザインも見つかるのです。


モダンアート(上越市)

火の見櫓の手すり みんなちがって みんないい!


 


― 火の見櫓観察入門 見張り台

2014-01-18 | A 火の見櫓っておもしろい

 目が大きい、二重まぶた、目尻が下がっている、まつ毛が長い、鼻が高い、口が大きい、唇が厚い・・・。そう、顔の観察ポイントなら誰でも直ちに網羅的に挙げることができるでしょう。

火の見櫓の見張り台にもいくつかの観察ポイントがありますが、本稿ではとりあえず事例を挙げるに留めておきます。



















― 火の見櫓観察入門 遠景、近景

2014-01-18 | A 火の見櫓っておもしろい


東御市滋野の火の見櫓 撮影日 130712

 火の見櫓観賞のポイントはまず遠くから見ること、私はそう思います。

上の写真の位置では近すぎます。もっと遠くから見ると、集落の中にすくっと立っている姿を楽しむことができます。火の見櫓は名前の通り、元々は火災を発見したり、火災の状況を把握して、半鐘を叩いてそのことを伝えるためのものですから、集落全体が見渡せるように高く造られています。ですから、逆にランドマーク(その土地の目印)にもなるわけで、遠くからでもよく目立ちます。

そしていろんな方向から見ることです。

でも時間がないとこれは難しいですが・・・。見る方向によって風景が変わりますからその中の火の見櫓の印象も違います。



次、近づいてパーツを見ることです。

まずは屋根。屋根にはかわいらしい飾りがついていることが多いです。屋根の4隅に巻きひげがついています。祭り神輿の場合、これと同じものを蕨手といいます。それに倣ってこの「くるりんちょ」な飾りを私は蕨手と呼んでいます。

屋根のてっぺんには避雷針があります。ここにもいろんな飾りがついています。別にこんな飾りが無くたって機能的には問題ありません。職人さんの遊び心でしょう。



背の高い火の見櫓には踊り場がついています。細身だとこのように踊り場が櫓の外にはみ出していることもあります。カンガルーのポケットみたい、なんて何かに見立ててみるのもおもしろいと思います。

上の写真を見ると踊り場から上には「×」の形のものがあります。これはブレースと呼ばれる部材ですが、そんな聞き慣れない名前は別に知らなくても問題なし。もし知りたければ調べるだけのことです。踊り場から下は「×」の交点に「○」があることに気がつきます。リング式ターンバックルと呼ばれるものです。何のため?と疑問がわくかもしれません。張力を調整して櫓のゆがみを修正するためのものです。

カンガルーの袋のような踊り場を支える方杖が2本あります。外側に曲げてありますが、直線のものも内側に曲げてあるものもあります。

火の見櫓の観察にルールなんてありません。観察対象がなんであれ自分なりに観察ポイントを決めて楽しむこと、それでOK。火の見櫓を若い女性に見立てて「火の見ちゃん」なんて呼んでいるおっさんもどこかにいるかもしれません。

私なりにまとめた火の見櫓のチェックポイントはこちらです。(←クリック)


 


― 火の見櫓観察入門 立地

2014-01-18 | A 火の見櫓っておもしろい

火の見櫓観察のポイント(改訂121008)を再び載せます。


1 火の見櫓の立地、環境

10 周辺の状況・環境、観察時の季節や天候、時間など 
11 消防団詰所(屯所)、消防倉庫の有無、火の見櫓との位置関係と両者の形や色などのバランスなど
12 観察者の主観的な印象
13 その他

2 火の見櫓の全体の様子 

20 形式:1本柱、梯子型(2本柱)、櫓型(3本柱、4本柱 その他の型)
21 櫓の高さ、脚の長さ、脚間長さ
22 プロポーション:上方への絞り方(櫓が描く曲線の様子) 総高/脚間長さ、逓減率
23 屋根と見張り台の形、大きさ及びバランス
24 色
25 メンテナンス 損傷の有無 発錆状況など
26 その他


3 火の見櫓を構成する各部の様子

30 屋根の有無 屋根の形(平面形と立体形)と飾り(避雷針と飾り、蕨手、その他)
31 半鐘の有無 半鐘の設置位置、形(梵鐘形(表面の様子)、ドラ形) 半鐘用の小屋根の有無 形
32 見張り台の有無 見張り台の平面形、床の構成、手すりのデザイン
33 踊り場の有無 踊り場の平面形、床の構成、手すりのデザイン
34 櫓の平面形(3角形、4角形、その他)と立体形、構成部材の種類(鋼材、木材、石、コンクリート、その他)、寸法、接合方法(鋼材:ボルト、リベット、溶接)、ブレース(筋かい)の材料と構成  
35 梯子の設置の仕方(櫓の内部、外部、櫓の横架材利用)構成部材 手すりの有無など
36 脚部のデザイン 単脚、複合脚(トラスの組み方やアーチの有無 カーブの様子) 
37 基礎:独立基礎、一体型(塊状)基礎
38 消防信号表示板の有無 銘版の有無と記載内容(製造所名、製造年、寄贈者名など)
39 付加されているもの スピーカー、サイレン、アンテナ、照明、ウインチ、ホース掛けなどの有無  その他


4 その他 

今朝(16日)塩尻市の西条地区の火の見櫓を観察してきました。

本稿では上に挙げた観察ポイントのうち、
1 火の見櫓の立地、環境  
10 周辺の状況・環境に注目してみます。



撮影日130816 以下同じ







 火の見櫓は道路沿いに立っていることが多いです。火災の発生をいち早く伝えるという機能からすればこれは当然のことと言えるでしょう。消防団員が駆け付けやすいですから。辻に立っている場合も少なくありません。道路沿いだと比較的見通しが効きやすいということもあるかもしれません(直線道路ならば)。



中にはこのようなところに立地ているものもあります。まわりの樹木が生長して周囲の見通しが効かなくなっています。この火の見櫓はうっかり見過ごすところでした。

火の見櫓は景観上のアクセントです。にもかかわらず周辺環境と違和感無く調和しているところがすばらしいです。