透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

「成長から成熟へ」

2014-01-03 | A 読書日記



 名コラムニストが遺した日本人へのメッセージ、「成長から成熟へ」と舵をきることの提言。昨日(2日)長野駅前の書店で買い求め、帰りの電車で読んだ。

**人はなぜ福袋を買うのか。答えは簡単で、「買うものがないから」です。「ほしいものが見つからないから」です。でも、「何かが買いたいから」なんですね。**(18頁)

**8・15で成長社会が始まり、3・11で成長社会から成熟社会への転換が始まるという、この二つの日付は、ぼくにとってもこの国にとっても大きな転換点になりました。
が、3・11を契機とするこの国の再生は、まだ遅々として進まない。(中略)政治家の人たちも、憲法をいじったり原発の再稼働をはかったりするヒマがあったら、経済大国や軍事大国は米さんや中さんにまかせて、新しい日本の国づくりに取り組んでほしいのもです。**(210、211頁)

**昔の中国の皇帝は、画家や陶芸家の品等を、専門のスタッフと相談してきめたらしい。で、その一等を〝一品〟といった。(中略)で、以下、二等・三等・・・・・ではなく、二品・三品・・・・・という呼び方で格付けしたそうです。が、中国の面白いところは、その審査のモノサシでは測れないが、個性的で優れていると思われるものは、「絶品」とか「別品」として認めた、というんですね。(中略)
別品。
いいなあ。経済力にせよ軍事力にせよ、日本は一位とか二位とかを争う野暮な国じゃなくていい。「別品」の国でありたいと思うのです。**(211、212頁)

広告を通じて観る消費社会の変遷と終焉、そして成熟社会への展望。


新年早々 良い本に出合った。さて、読みかけの『空海の風景』司馬遼太郎/中公文庫に戻ろう。


「キャプテン・フィリップス」を観た

2014-01-03 | E 週末には映画を観よう


コンテナ船を襲うソマリアの海賊 映画のパンフレットから

 昨年末、「キャプテン・フィリップス」を観た。2009年の4月にソマリア沖で実際に起きたシージャック事件をトム・ハンクス主演で映画化したもの。

コンテナ船の乗組員を救うためにひとり人質となるフィリップス船長。ソマリアの海賊との命がけの駆け引き。ここで発揮される船長の人間力、具体的にはコミュニケーション力。アメリカは船長を救出するために海軍の特殊部隊まで出動させる。絶望的な状況から奇跡的に生還するというテーマは「ゼロ・グラビティ」と同じ。

映画では海賊と化したソマリアの若い漁師たちをひたすら悪として描いているが、何故彼らが海賊と成らざるをえないのか、その社会的背景までは描いていない。注意深く映画を観ていれば、少しだけその説明もなされていることが分かるが・・・。

善悪の単純な対比は映画では分かりやすい。だが、世界の最貧国・ソマリアの若者たちを絶望に追い込んだ理由を想えば彼らに同情すべき点もあることも看過するわけにはいかないだろう。