■ いままでに読んだ葉室麟の時代小説の中で(といってもそれほど多くはないが)もっとも娯楽性のある作品、と感じた。帯にある通り、藩内で一番臆病者と言われている若い男が藩略もあって刺客を命じられる。到底果たせそうにない相手だが。さてどうなるか・・・。
川止めにあって、偶々安宿に居合せた連中は皆何やら訳あり・・・。彼らとの間に生まれる情、この場合は友情という陳腐な表現が一番相応しい。そう、これは楽しく、そしてちょっぴり切ない友情物語だ。
**七十郎は、顔に笑みを浮かべ、遠く青々とした山並みへ向かって足を踏み出した。**
この作家の他の作品と同様、ラストはさわやか、でもなんとなく寂しい・・・。