朝日村西洗馬の火の見櫓
■ 総高8mほどの小規模な火の見櫓で、3角櫓の3面のうちの1面は横材のみで構成していて梯子を兼ねている。本稿では火の見櫓の細部、構成部材の接合部に注目する。
この火の見櫓は上下2分割して鉄工所でつくられていて、現場で接合して立てたことが柱材の接合部の
様子から分かる。
上の写真で構成部材の接合部の様子が分かる。柱材の等辺山形鋼(L-50×50×4*)を計6本のボルトで接合している。梯子段を兼ねた横架材(L-40×40×4*)と柱材とはリベット接合(写真左)。
ガセットプレート(厚4mm)を5本のリベットで柱材に取り付けて、そこに等辺山形鋼のブレースと水平部材(共にL-40×40×3*)をボルトで接合している。
リベット接合は鉄工所で、ボルト接合は現場で行われた、と考えるのが妥当。
火の見櫓は細い部材で構成されていて、使用鋼材量が少ない。これはそれほど風荷重や地震力を受けないことによるのだろうが、櫓の構造そのものが合理的であることの証左でもあるだろう。
手元の資料には静岡地震(1935年)や阪神・淡路大震災(1995年)で被害を受けることなく無事だった火の見櫓が紹介されている。
*鋼材厚は正確に計測できていない。