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■ 『はやぶさ2 最強ミッションの真実』津田雄一(NHK出版新書2020年11月10日第1刷発行)を読み終えた。本の帯の写真は小惑星リュウグウの表面。一番明るいところの黒点は降下中の「はやぶさ2」の機影。
「着陸可能な領域は一つもありません」
はやぶさ2のメンバーは次々難局に直面する。**挑戦のレベルは絶望的に高かったが、メンバーはその状況を良い意味で楽しんでいた。探査機の運用は時々刻々重要な判断を迫られ、一つの間違いが大事故につながる。メンバーはそういうプレッシャーを常に感じながら、その状況を前向きな力に変えていた。(後略)**(256頁)
はやぶさ2は着陸可能な領域がないと判断された小惑星リュウグウにタッチダウンを2回成功させたが、2回目のタッチダウンの誤差はたったの60センチメートルだったという。この時リュウグウは地球から太陽より遠い2.4億キロメートル彼方。凄いとしか言いようがない。このように凄いとしか言いようがないことがこの本ではいくつも紹介されている。
**あるプロジェクトメンバーが、はやぶさ2がリュウグウを離れるときに、次のような感想を漏らしました。「このミッションは誰もが『自分がいなければ成功しなかった』と思えるミッションだよなあ」私はその言葉に目頭が熱くなりました。**(268頁)
優れた組織(チーム)とはどんな組織か。組織としての意思決定はどのように行われたのか。組織論としても読むこともできるだろう。組織に必要なのはOrganized Chaosだと指摘したのは江崎玲於奈氏だったが、確かにそうだな、と本書を読んで感じた。
年末に「今年の3冊」を選ぶがこの本はその内の1冊になるだろう。