■ 今年も残すところあと6日、本当に時の経つのは早い。読んだ本の中から、今年2020年の3冊を選んだ。
『桃太郎は盗人なのか?』倉持よつば(新日本出版社2019年)
倉持よつばさんが小学5年生のときに「図書館を使った調べる学習コンクール」で文部科学大臣賞を受賞した作品を書籍化したもの。
**桃太郎が、鬼が島に行ったのは、鬼の宝を取りに行くためだったということです。(中略)宝の持ち主は鬼です。鬼の物である宝を、意味も無く取りに行くとは、桃太郎は、盗人(ぬすっと)ともいえる悪者です。**(14頁) 福沢諭吉がこのように「桃太郎が盗人だ」と非難していることを知り、桃太郎を正義の味方だと思っていたよつばさんは、びっくり(私もびっくり)。
よつばさんは**桃太郎がどうして盗人だと言われているのか、そして、どうして鬼はいつも悪いと一方的に決めつけられているのかを調べてみたくなりました。**(7頁)と研究の動機を書いている。
それからがすごい。図書館の司書に桃太郎本探しのサポート受けて、桃太郎の読み比べをする。よつばさんはあくなき探求心から平成から大正・明治・江戸の本まで、なんと200冊以上の本を読む。
よつばさんは江戸時代の桃太郎は桃からではなく、おばあさんから生まれたことを知り(桃を食べたおじいさんとおばあさんが若返って、おばあさんが妊娠、桃太郎を出産したという回春型)、桃太郎が桃から生まれるのは明治以降ということを知る(果生型)。また、桃太郎が鬼が島へ行くのは、悪い鬼を退治するため、と理由付けがされたのは明治の後半(27年ころ)からで、それ以前は、鬼の宝を取りに行くためとなっていることを知る。それで福沢諭吉の「桃太郎盗人論」に納得する(私も納得)。文献調査の成果だ。
更によつばさんは鬼の正体に迫っていく。このプロセスが分かりやすく書かれていて興味深い。
この本にまとめられているのは研究論文と呼ぶにふさわしい論考だと思う。(2020.01.23の記事再掲)
『はやぶさ2 最強ミッションの真実』津田雄一(NHK出版新書)
はやぶさ2のメンバーは次々難局に直面する。**挑戦のレベルは絶望的に高かったが、メンバーはその状況を良い意味で楽しんでいた。探査機の運用は時々刻々重要な判断を迫られ、一つの間違いが大事故につながる。メンバーはそういうプレッシャーを常に感じながら、その状況を前向きな力に変えていた。(後略)**(256頁)
**あるプロジェクトメンバーが、はやぶさ2がリュウグウを離れるときに、次のような感想を漏らしました。「このミッションは誰もが『自分がいなければ成功しなかった』と思えるミッションだよなあ」私はその言葉に目頭が熱くなりました。**(268頁)
優れた組織(チーム)とはどんな組織か。組織としての意思決定はどのように行われたのか。組織論としても読むこともできるだろう。
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はやぶさ2は想定を大幅に上回る5.4グラムものサンプルをリュウグウから持ち帰っていた。多量のサンプルを分析して、どんなことが明らかになるのだろう。
『流れる星は生きている』藤原てい(中公文庫2008年改版)
「子供を死なせてなるものか」、という母親の執念。終戦直後満州から幼い子供3人を連れて日本に引き上げてきた藤原ていさん。藤原さんの我が子への深い愛情と生き抜くという強い意志に感動。人生の応援本。この本は2009年にも「今年の3冊」として選んでいる。子育てしている特にお母さんにおすすめの1冊。