撮影日2021.08.31 3無33型
火の見櫓が身にまとうドレスはいくつになってもハデハデ
■ 松本と新島々を結ぶアルピコ交通上高地線、8月14日に松本駅からほど近くの田川橋梁が被災した。大雨で田川が増水、河床が削られ、コンクリート製の橋脚が傾いて橋桁が大きく歪んだ。このために松本―新村間が運休、アルピコ交通は同区間をバスによる代行運行で対応している。
SNSパネルに納まる太田さん
上高地線をこよなく愛する太田 岳さん(過去ログ)が上高地線の早期復旧を願ってプロジェクトを立ち上げた。多くの人にSNSパネルで顔写真を撮ってもらい、#はしれ僕らの上高地線 をつけてメッセージを発信してもらうというプロジェクト。これには上高地線の早期復旧はみんなの共通の願いであることを可視化、強調するという意図があるのだろう。太田さんは###が線路に見えるというからかなりの鉄道好きだと思う。
このプロジェクトは複数の地元メディアでも紹介された。同じパネルに納まった顔写真が何枚も何枚も投稿されることを想像すると、なんだか楽しそうだし、大きな力になると思う。
文庫本が整然と並ぶ書架 『鉄道会社の経営』佐藤信之(中公新書2013年)を買い求めた。
太田さんは上高地線を舞台に本を通じた交流を と考えて何年か前から上高地線の電車内で古本市を開催していたが、コロナ禍で中断せざるを得なくなり、今年(2021年)の4月に下新駅で「本の駅・下新文庫」を始めた。毎月1回2日間、下新駅で文庫本を200冊ほど、書架に並べて販売している。この活動にみんなで上高地線早期復旧の願いをアピールするという上記のプロジェクトを加えたというわけだ。彼の行動力に拍手。このすばらしい活動が多くの人たちに広がることを願っている。
こちらの記事を是非ご覧ください。→しましま本店《本の駅・下新文庫》
「愛してる」なんてカンチューハイ2本で言えるなら こんなに苦労しねってことよ
■ 寅さんシリーズ第40作「寅次郎サラダ記念日」を観た。今回の舞台は長野県の小諸と早稲田大学。マドンナの真知子(三田佳子)が小諸病院の医師で、真知子の姪の由紀(三田寛子)が早大生、という設定。
小海線の電車で日本酒の小瓶を窓台に置き、寅さんが車窓を流れる景色を見ながらちびちび飲んでいる。ああ、いいなぁと思う。ぼくもこんな旅がしたい・・・。
寅さん、小諸駅前のバス停で知り合ったお婆さんに自宅に招かれ、酒を飲み交わし、民謡を歌って楽しい一夜を過ごす。翌朝、小諸病院の真知子先生が車でやってくる。お婆さんは病魔に侵されていて余命いくばくもない身だった。お婆さんは家で死にたいとずっと入院を嫌がっていた様子だが、寅さんに優しく説得されて病院へ。寅さんと一緒に車に乗ったお婆さんが、これが見納めだと自宅をしみじみ眺め、そっと手を合わせて拝む。切なくもいいシーンだ。
お婆さんは小諸病院に入院。お世話になったお礼にご馳走すると、寅さんは真知子先生に食事に誘われる。お婆さんから、先生が旦那さんと死に別れて寂しく暮らしていると聞いた寅さん。さあ、これで条件は整った。
ふたりは商店街を歩きながら小諸駅前へ。駅から由紀ちゃんが手を振りながら走ってくる。由紀ちゃんは時々東京からおばさんのところへ来ているようだ。
3人は真知子先生が下宿している立派な旧家へ。ここは小諸、藤村の例の詩が話題になる。小諸なる古城のほとり 雲白く遊子悲しむ この詩の遊子を寅さんは勇士と思って、ガキの頃真田十勇士にずいぶん憧れたとか、とんちんかんな受け答え。これには真知子さんも由紀ちゃんも大笑い。寅さんっておもしろい人ねぇ、となる。お婆さんにも同じことを言われていた。
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とらやに帰った寅さん、早稲田大学に由紀を訪ねる。構内で男子学生に声をかけて、教室へ案内してもらう(由紀のことを男子学生が事務室へ行き、学生名簿を調べて日本文学を専攻していることが分かる)。
教室で西洋近代史の講義が始まる。産業革命について説明する教授。産業革命と言えば蒸気機関、ワット。にわか聴講生となった寅さん、教授にトンチンカンな質問をしたうえ、ワットという友人がいると言い出す。ワット、寅さんはが演じたワット君のことを話し出す。教授も講義をやめて、寅さんの話しを聞く。こうなればもう寅さんのペース。学生たちに大うけ。
ワット君とは第20作「寅次郎頑張れ!」で、幸子ちゃん(大竹しのぶ)に恋した若者(中村雅俊)のこと。この作品を観たばかりだから、この話はピンときた。で、この作品のマドンナはワット君の姉の藤子さん。藤子さんを演じたのは藤村志保さん。この芸名は島崎藤村から採られ、志保という名前も初出演した「破壊」の役名だったとのこと。第40作「寅次郎サラダ記念日」は舞台が小諸で、藤村の詩も出てくるから、繋がった。
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この作品で由紀ちゃんは寅さんと真知子さんの心を読み取って、それを声に出して相手に伝える役目だと気がついた。
寅さんと再会した由紀は「好意をもってるのよ、寅さんに。死んだ旦那様にこの辺がそっくりでとってもなつかしいって」と告げ、おばさんに電話してあげて、と電話番号を教える。この辺って顔のエラの張った部分のこと。
真知子さんが休みをとって東京の実家に帰ってくる。由紀もここから大学に通っている。
由紀は大学で寅さんに会ったとおばさんに話す。真知子さんは寅さんが柴又に帰っていることを知り、電話して柴又で会うことに。約束の日曜日、とらや(この作品から「とらや」は「くるまや」と名前を変えているが)にやって来たのは真知子さんひとりではなく、真知子の息子、由紀ちゃん、大学で寅さんを案内した学生の茂君(由紀と付き合い始めている)、それから源ちゃんと満男。
夕方、真知子さんたちを柴又駅まで送って行った寅さん。
ホームで「寅さんといると、どうしてこんなに楽しいのかしら」と真知子に言われた寅さん、例によって「いつもバカなことばっかり言ってるから。おれさくらにしょっちゅう怒られてるんだよ」と、まともに返さない。真知子さんは続けて「寅さんと話しているとねぇ、何て言うのかなぁ、私がひとりの女だということを思い出すの」とまで言う。
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小諸病院に帰った真知子さん、いや真知子先生が由紀ちゃんに電話で、寅さんの説得で入院したお婆さんが重篤で、明日まで持つか持たないかの状態になり、寅さんに会いたがっていると伝える。
このことを聞いた寅さんは、夜遅くに由紀ちゃんと茂君と車で小諸に向かう。翌朝、小諸病院に着く。でも間に合わなかった・・・。
霊安室でお婆ちゃんと対面して焼香する寅さん。泣きながら外に出ていく真知子先生。廊下で寅さんの胸に顔をうずめて泣く真知子先生。ここだけ切り取ったらなかなか好いシーン。
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真知子先生の下宿先、由紀ちゃんが食事の支度をしている。
「青年」と茂君に声を掛け「駅まで送ってくれるか?」と寅さん。
「帰るの~? 今一所懸命晩ごはんの支度してるのに」
仲間が松本で待ってるんだと答える寅さんに
「ダメよぉ、おばちゃまに叱られるわ、あたし」と由紀ちゃん。
「いいか、由紀ちゃん。おばさまは女だ、悲しいことやつらいことがあった時にちゃーんと筋道を立てて、どうしたらいいかなぁと考えてくれる人が必要なんだよ。由紀ちゃんそういう人探してやんな、な」
「でも、その人が寅さんじゃいけないの?」「バカなこと言っちゃいけねぇ おばさまが聞いたら怒るよ」
「寅さん、好きなのね・・・、おばちゃまが」と淋しげに。由紀ちゃんがここでは寅さんの心を言葉にする。
寅さんテーブルのサラダをフォークで一口食べて、「いい味だ」。
寅さんが「この味いいね」と言ったから 師走六日はサラダ記念日
年が明けて由紀から真知子に届いた年賀状
旅だってゆくのはいつも男にて カッコよすぎる背中見ている
この作品で印象に残ったのは、真知子先生が院長室で、仕事から離れて自分を見つめ直したい、と病院をやめたいと院長に相談する場面。院長が強引ともいえる言葉で病院に留まるように説得する。院長を演じたすまけいは第38作「知床慕情」では船長を好演していた。みんなでバーベキューをした時の挨拶はなかなか好かった。そして、この作品で院長として真知子先生に説く力強い言葉もなかなか好かった。院長の話を聞き、病院で働き続けることを決める真知子さんを演じた三田佳子も実に好かった。ここだけでなくホームで寅さんに語り掛ける場面の演技も実に上手いと思った。
寅さんと真知子さんの恋とは言えぬ淡い淡い恋の物語
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