透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

寅さんシリーズ 印象に残る場面

2021-08-22 | E 週末には映画を観よう

 映画「男はつらいよ」をかなりのハイペースで観ている。全50作(*1)のうち、既に観た作品数は30作を越えた。このあたりで印象に残る場面を作品順に挙げてみたい。

□ 第10作「寅次郎夢枕」。この作品のマドンナは幼なじみの千代(八千草薫)。 ふたりが亀戸天神でデートする場面は印象的。お千代さんが寅さんにもう4時間も経っているけれど、話しがあるのなら話して欲しいという場面。その後、寅さんに結婚を申し込まれたと勘違いしたお千代さんはいいわよと答える。過去ログ

□ 第11作「寅次郎忘れな草」。マドンナはリリー(浅丘ルリ子)。リリーが夜遅くに酔っぱらってとらやを訪ねてきて、寅さんと飲みながら今から旅に出ようと誘う。でもこんなに遅い時間だともう夜汽車もないと寅さんは断る。この時の寅さんは理性的で良識あるおとなの振る舞いをする。寅さんには家があり、家がなくて根無し草の自分とは違うことに気がついたリリーが寂しさに耐えかねて涙する場面。過去ログ

□ 第28作「寅次郎紙風船」。ラスト、マドンナの光枝(音無美紀子)を柴又駅まで送る寅さん。駅前で光枝は俺が死んだら寅の嫁になれって亡くなった旦那から言われ、寅さんにも話してあると聞いているけれど、と寅さんに伝え、寅さんの気持ちを確認する場面。誠実で優しい寅さんに惹かれていた光枝は、寅さんから本気で約束したという返事を期待していたけれど、相手が病人だから適当に相槌を打っていただけだと聞かされる。この時の淋しそうな光枝の表情。過去ログ

□ 第29作「寅次郎あじさいの恋」。マドンナのかがり(いしだあゆみ)と寅さんがかがりの実家の居間で酒を飲む場面と、その後、離れの2階の寅さんが寝ている部屋にかがりが入ってくる場面。それから鎌倉デート、あじさい寺(成就院)で待ち合わせたふたり。かがりが寅さんに気がついたときのうれしそうな表情。過去ログ

□ 第32作「口笛を吹く寅次郎」。マドンナは結婚に失敗して実家の寺に戻っていた朋子(竹下景子)。第28作と同じような場面。やはりラスト、柴又駅のホームで朋子は父親から今度結婚するならどんな人が好いのか訊かれて・・・、寅さんみたいな人がいいって言っちゃたんでしょと寅さんが朋子に代わって答えた後、朋子は頷く。この後の寅さんの答えを聞いた朋子の悲しそうな表情。過去ログ

竹下景子のちょっとしたしぐさや顔の表情が実にいい。彼女が違うマドンナ役で3作品に出た理由はこのことにあるような気がする。


寅さんシリーズのレンタルDVDをTSUTAYA北松本店で借りて観ている。一通り観終わったら、総括的な記事を書きたいと思う。

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第38作までの欠番はレンタル中か欠品ではないかと思われる作品。

*1 第49作「寅次郎ハイビスカスの花(特別篇)」と第50作「男はつらいよ お帰り 寅さん」をカウントせず、寅さんシリーズの作品数を48作とする寅さんファンも少なくないようだ。第50作は2020年1月13日にシネコンで観た。以降、シネコンでは観ていない。それまでは毎年4、5本観ていたのに。


 


「34 男はつらいよ 寅次郎真実一路」

2021-08-22 | E 週末には映画を観よう

 寅さんシリーズ第34作「寅次郎真実一路」を観た。ストーリーはシンプル。大手証券会社に勤めるエリートサラリーマンがある日失踪。失踪した夫を探しに九州に出かける奧さんに同行した寅さんが彼女に惚れてしまう・・・。九州で夫は見つからず、寅さんはとらやに帰ってくる。何日かして行方不明だった夫がとらやを訪ねてきて、寅さんと一緒に家に帰り、一件落着。

マドンナのふじ子を演じているのは大原麗子。彼女は第22作「噂の寅次郎」でもマドンナの早苗を演じている。ふじ子の夫の富永健吉を演じている米倉斉加年は第10作「寅次郎夢枕」で、マドンナの千代(八千草薫)に恋する大学の助教授の役を演じている。この時は八千草薫、いや千代さんに振られてしまったが、この「真実一路」では美人の大原麗子、いやふじ子が奧さん。

上野の居酒屋のカウンターで飲んでいた寅さん、偶々隣で飲んでいた健吉と知り合いになる。寅さんと意気投合した健吉は寅さんの飲み代まで払う。その夜、なぜか寅さんはさくらの家に泊まる。

翌日、寅さんは健吉にお礼を言うために、健吉からもらっていた名刺を頼りに勤め先の大手証券会社を訪問。応接間で健吉を待つ寅さん。健吉が仕事を終えたのは9時。それから二人は連れ立って上野の飲み屋へ。翌朝、寅さんが目を覚ますとそこは健吉の家だった・・・。健吉は早朝6時に勤めに出てしまっている。寅さんとはあまりに違う健吉の日常。寅さんは寝床から遅くに起き出してきて、ふじ子と出会うことになる。

仕事疲れからだろう、ある日健吉は出社せずに失踪。

ふじ子を元気づけようと、寅さんはとらやにふじ子と息子を招く。
「いいわね、寅さん」
「いつもこんなふうに賑やかにごはんが食べられて」
「家族がそろって賑やかに食事するなんて、なんでもないことのようだけど、幸せってそんなものなのかも知れないわね」
いつも夫・健吉の帰りが遅く、息子とふたりで食事するふじ子がこのように言う。前稿の37作「幸福の青い鳥」でも同じことを書いたが、ふじ子のことばは山田監督の幸せに対する基本的な考え方だろう。

既に書いたようにその後、健吉を探しにふたりは目撃情報を頼りに九州は鹿児島へ。鹿児島は健吉の生まれ故郷。寅さん旅費は? 今回はさくらではなくタコ社長から5万円借りる。

鹿児島での健吉探しは結局空振りに終わり、とらやに帰って来た寅さんはなにやら悩んでいる様子。

「あの奥さんに恋するあまり、蒸発しているご主人が帰ってこないことを心のどこかで願っている自分に気づいてぞっとする、ということかなあ・・・」と博がおばちゃんに解説する。

その後の展開の詳細は省略。

マドンナの状況や寅さんとの関係については、いろんなパターンが設定できるけれど、今回のマドンナは夫が失踪してしまっている人妻。この設定で喜劇はあり得ない。全体のトーンは暗く、声を出して笑う場面などあろうはずもなく、楽しく観るということにはならなかった・・・。第15作「寅次郎相合い傘」でも中年サラリーマン(船越英二)が失踪するが、両作品は設定もストーリーも全く違う。相合い傘は良かったなぁ。

寅さんシリーズもいろいろ、ということ。


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