■ 寅さんシリーズ第28作「寅次郎紙風船」を観た。
寅さん、柴又小学校の同窓会に出席。深夜にひとりの同級生に付き添われ、酔っぱらった寅さんがとらやに帰って来る。寅さんがこんなに酔っぱらうことってあるんだ・・・。同窓会でみんなに煙たがられ、淋しい思いをしたのだろう。
寅さんはその同級生とも喧嘩して、店からお茶の間に上がる式台(電話が置いてあるところ)で寝てしまう。淋しそうな寅さん。
翌朝早く旅に出た寅さん(今回はとらや一家と大喧嘩して旅に出るという何回もあるパターンではない。自分の振舞いを反省したのだろう)の行き先は福岡の原鶴温泉。駅前旅館で娘(愛子・岸本加世子)と相部屋に。愛子はストーリーでは脇役。愛子は寅さんを慕って一緒に旅をする。
所変わり久留米。久留米水天宮の縁日で寅さん愛子をサクラに啖呵売。寅さんが昼ご飯を食べているとき、若い女性から声をかけらる。テキヤ仲間である常三郎の奥さん、光枝(今回のマドンナ、音無美紀子)だった。光枝から旦那の常三郎(小沢昭一)が病気だと聞いた寅さん、見舞いに行く。本人は知らないが、常三郎は余命幾ばくも無く、病院から見放されて自宅に戻っていたのだった。そのことを奥さんから聞かされた寅さんの厳しい表情が印象的だった。この作品では寅さんの真剣な表情がやけに目立った。
常三郎は、万一オレが死んだら、あいつを女房にしてくれと寅さんに頼む。このことが映画の最後に効いてくる・・・。
寅さんを訪ねて愛子がとらやにやってきて、その愛子を兄さん(地井武男)が迎えに来てひと騒動あるが、その顛末は省略。
しばらして、光枝の旦那は亡くなる。光枝は上京して本郷の旅館で働きだす。このことを光枝からのはがきで知った寅さんは早速、光枝に会いに出かける。光枝は東京生まれということだが、別に上京しなくてもよいはず。ぼくは、光枝に寅さんを頼る気持ちがあったからだと思う。
旅館の前で寅さんが光枝に仕事が休みの日にとらやを訪ねてくるようにと言う。
約束通りとらやを訪ねてきた光枝。「寅ちゃんのおかげでたくさんきれいな人に会えますよ、私たちは」とおばちゃん。確かに。おばちゃん役の三崎千恵子の感想、ともいえるかもしれないなぁ。
光枝は両親の顔をほとんど覚えていないこと、親戚の家をあちこちたらい回しにされて育ったことなど、自身の暗い過去をさくらに話す。
さあ、ラスト。柴又駅まで光枝を送る寅さん。
「まあ、元気出してやれや。オレは当分ここで暮らして、あんたのことを気にしているからよ」と寅さん。
「うん、どうもありがとう」 光枝は「寅さんが見舞いに来てくれた時、うちの亭主変なこと言わなかった?」と訊く。常三郎は亡くなる数日前、光枝に自分が死んだら寅の女房になれ、寅さんにも話してあるからと伝えていたのだった・・・。
光枝は寅さんと一緒になりたかったのだ(そうではなかったという見解もあるようだが、ぼくは一緒になりたかったと断じる)。だが寅さんは、光枝に「寅さん、約束したの?本気で」と訊かれて「ん、ほら、病人の言うことだからよ、まあ適当に相槌打ってたのよ」と答えてしまう。
この時の光枝の淋しそう表情。光枝は幸せを求めていたのに・・・。駅に向かう光枝を見送る寅さん。印象的なシーンだ。
他のマドンナとは違って、光枝とならうまくいくと思うけれど・・・。この場面、切なくて泣いてしまった。
1981年12月公開
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