■ 寅さんシリーズを続けて観る。で、第37作の「幸福の青い鳥」。
この作品のマドンナ・美保(志穂美悦子)は、寅さんが昔ひいきにしていた旅芸人一座の花形的存在だった大空小百合(丸顔の岡本 茉利が演じた)。小百合が大人の女性となって寅さんと再会する。あの子が大きくなっても、美保のような風貌にはならないだろうな、と思うし、寅さんと再会した時、「寅さん・・・」と声に出したけれど、「車先生・・・」と言ってほしかった。だが、まあ、そこは割り切って、過去の作品とは全く関係の無い独立した作品として観た。
九州に渡った寅さん、筑豊の嘉穂劇場(*1)をのぞき、そこに居合わせた裏方のおじさんから、旅芸人一座の座長が亡くなっていたことを聞く。人が集まらない寂しい葬式だったとも。で、線香をあげに座長の家を訪ねて炭鉱住宅へ。そこで座長の娘、この作品のマドンナ・美保と再会、となった次第。
その晩、寅さんは美保の紹介である旅館に泊まる。現在美保は酒席で客の相手をするコンパニオンをして暮らしていて、寅さんの泊まった旅館でその夜も団体客相手に歌を歌い、酌をしていた。その様子を寅さんは自分が泊まる部屋から静かに見ている。
翌朝、駅のホームで列車を待つ寅さんのところへ美保が香典返しを持って駆け付ける。寅さんは東京に向かうと美保に伝える。
一緒について行きたいという美保に寅さん、「欲しいものはねえのか?」と訊く。「青い鳥」と美保が答える。童話にでてくる青い鳥のことだ。寅さん、カバンから売ネタの残り物の青い鳥の笛を取り出して美保に渡す。
東京に出てくるようなことがあったら、柴又、帝釈天のとらやに寄るように伝え(他の作品でもマドンナに同じことを言う。で、マドンナが後日とらやを訪ねてくることになる)、「幸せになるんだぞ」と寅さんが言うのと同時にドアが閉まり、列車がホームを離れていく・・・。
ストーリーをトレースしていくと長くなるのでこのあたりで端折る。
その後、美保は上京、とらやに電話するも寅さん不在で会えず・・・。その後何日かして、美保は健吾という鹿児島出身の青年(長渕 剛)と知り合う。健吾は画家を目指しながら、看板屋で働いている。健吾も九州出身ということもあり、彼に親近感を抱く美保。
とらやでもめた寅さんが旅に出ようとするところへ、美保がやってくる、というお決まりのパターン。美保はとらやに下宿して近くの中華料理屋で働くことに。寅さん一家の団らんに加わって、美保はいいなぁ、これが幸せということなんだなと思う。そう、家族の団らんこそ、幸せの原点。山田洋次監督もこのことを一番に伝えたいのだと思う。
寅さんは美保の結婚相手探しに奔走。葛飾区役所の結婚相談室を源ちゃんと訪ねて相談員(笹野高史)に相談するが、その時、自分の好みのタイプをしゃべる。
丸ぽちゃが好きなんだよ、と寅さん。八重歯八重歯と源ちゃんが冷やかすように言うと、お前、知ってるなと寅さんは返す。そうか・・・、今までに見てきたシリーズでは誰だろう・・・。朋子さん、りん子さん(ともに竹下景子)かな。
何日かして健吾がとらやに来て・・・、ちょうどそこへ美保が出前でとらやに来て、ふたりは再会。ふたりはそこでもめて、健吾は美保に別れを告げてとらやを後にする。
「おまえはあの男が好きだし、あいつはおまえに惚れてるよ。おれから見りゃ、よぉ~くわかるんだ」と寅さん。さくらにも促されて健吾を追いかける美保。
柴又駅のホームでふたりはすぐ仲直り。健吾は美保と手を繋ぎ、そのまま自分のジャケットのポケットに入れる。まあ、よくある表現だと思うけれど、観ていて気持ちがほんわか・・・・。
その後ふたりは結婚。なんと婚姻届の保証人のひとりは寅さん。寅さんは区役所の結婚相談所を訪ねたとき、用紙をもらってきていたのだった。
ラスト、旅に出た寅さんは芦ノ湖の遊覧船乗り場で鳥の笛を売っている。そこへ若い女性が数人集まって、その内の一人が笛を手にして吹いてみる。なんともかわいい横顔、ストライクゾーンど真ん中、鄙里のおじさん好みではないか。誰だろう・・・、有森也実だった。彼女をマドンナにした作品が観たかったなぁ・・・。
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*1 登録有形文化財