透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

ブックレビュー 2024.05

2024-06-01 | A ブックレビュー


 2024年5月に読んだ本は写真の5冊と図書館本2冊、計7冊だった。

3月に始めた手元にある新潮文庫の安部公房作品22冊に未購入の『(霊媒の話より)題未定 安部公房初期短編集』を加えた23冊を年内に一通り読もうプロジェクト。5月は3冊読んだ。これで10冊読み終えた。残りは13冊。 

『カンガルー・ノート』安部公房(新潮文庫1995年)
1993年に急性心不全で急逝した安部公房の最後の長編小説。
安部公房も死の恐怖に脅えていたのだなと、小説最後の一節を読んで思った。でも、それを小説に仕立て上げてしまった安部公房は最期まで作家であった。

『死に急ぐ鯨たち』安部公房(新潮文庫1991年)
評論集。話題は多岐に亘り、収録されているインタビューでは自作についても語っていて、その背景にも話が及んでいる。本書の絶版は大変残念だ。

『津田梅子』大庭みな子(朝日文庫2019年7月30日第1刷発行、2024年2月20日第2刷発行)
新5000円札の顔、津田梅子は津田塾大学の前身である女子英学塾の創設者。津田塾大学で発見された多くの手紙を紐解きながら津田梅子の生涯を辿る。吉川弘文館の人物叢書にも『津田梅子』がある。この本も読まなければ・・・。

『都会の鳥の生態学 カラス、ツバメ、スズメ、水鳥、猛禽の栄枯盛衰』唐沢孝一(中公新書2023年)
漫然と鳥を見ていても分からない生態が観察を続けていると徐々に分かってくるだろう。そうすれば私の環世界に野鳥が入り込んでくるかもしれない・・・。
知らない世界を覗いてみるのは楽しい。新書はそのガイドブック。

『壁』安部公房(新潮文庫1969年発行、1975年15刷)
名前、顔、体、帰属社会、そして故郷。属性を次々捨ててしまった(喪失してしまった)人間の存在を根拠づけるのもは何か、人間は何を以って存在していると言うことができるのか・・・。人間の存在の条件とは? 安部公房はこの哲学的な問いについて思考実験を重ね、小説に仕立て上げた。安部公房の作品はこれからも読み続けられるだろう。人間とは何か、これは根源的な問いだから。


『タンポポの綿毛』藤森照信(朝日新聞社2000年 図書館本)
野山を駆け巡て遊んでいた少年時代の出来事あれこれが、魅力的な、そう、藤森さんの建築にも通じるようなテイストの文章で活き活きと描かれている。図書館で偶々目にして借りて来て読んだ。


『源氏物語はいかに創られたか』柴井博四郎(信濃毎日新聞社2024年 図書館本)
本書で柴井さんはズバリ『源氏物語』の主人公は浮舟だとし、紫式部が意図したのは浮舟の「死と再生」、さらに平安貴族社会の「死と再生」を意味していると考えられる、と説いている。
やはり紫式部は貴族社会の退廃を嘆き、その再生の願いをこの長大な物語に託したのだ。
『源氏物語』関連本を読み続けよう。吉川弘文館の人物叢書には『紫式部』も入っている。

読みたい本は次々出現する・・・。