■ 「信州しおじり本の寺子屋」。今年度は下表のような講演会が予定されている(えんぱーくのウェブサイトより)。16日に行われた山本一力さんの「生き方雑記帖 2024」を聴講した。11月、12月に予定されている関川夏央さん、ねじめ正一さん、ふたりの作家の講演もぜひ聴きたいと思う。
山本さんの直木賞受賞作『あかね空』を読んで、感銘を受けていたので(過去ログ)、講演を是非聴きたいと思っていた。
講演で印象に残ったのは次のような言葉。
時は流れない、流れ去っていかない。時は積み重なる。だからそこに立ち戻って振り返ることができる。私が『あかね空』を読んで感じたのは山本一力という作家は内省的な人なんだろうな、ということだった。上記の言葉を聞いてやはりそうだった、と思った。
山本さんが講演の途中で演台に伏せて置かれていたグラスにそのままペットボトルの水を注いだときはびっくりした。職員がすぐ対応していたが。1948年生まれの山本さんは76歳。視力がかなり衰えているそうで、よく見えないとのこと。講演の後の参加者からの質問もよく聞き取れないようだった。
パソコンで書いているという山本さんは推敲に原稿を読み上げるアプリを使っているとのこと。対象、大正、大将。変換ミスは絶対に避けなければならないという山本さんは出来るだけ大きな文字で表示して確認しているそうだ。
私は読んでいないが、『ジョン・マン』はジョン万次郎の波乱の生涯を描く歴史小説で、現在第7巻まで刊行されている。第8巻はいつ頃出るのかという会場からの質問に、いま書いていますと山本さん。『ジョン・マン』を書き上げたら、またここに来て、皆さんに報告したいです、という山本さんの言葉に誠実な人柄を感じた。
目が見えている限り物書を続けますという言葉に、私は感動した。涙が滲んだ。
講演会終了時の拍手は大きく、そして長く続いた。