透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

ブックレビュー 1502

2015-03-01 | A ブックレビュー

 

 



 本を読むことは食事することと同様に生活の基本的な営みであって趣味といえるのかどうか。
2月の読了本は以下の5冊。内、景観関連本が3冊。

『吉田松陰』桐原健真/ちくま新書
『日本の風景・西欧の景観』オギュスタン・ベルク/講談社現代新書
『駅をデザインする』赤瀬達三/ちくま新書
『日本の景観』樋口忠彦/春秋社
『まとまりの景観デザイン』小浦久子/学芸出版社

景観論、風景論は幅が広くかつ奥が深いということが例えば『日本の風景・西欧の景観』から分かる。空間認識、風景認識は日本と西欧とではやはり違っていて、そのことが絵画や庭園の構成にも表れている。

『吉田松陰』 **日本に生まれながら、日本が日本である根拠を知らなければ、どうして生きていけようか**(81頁)という松陰の反省、このことに尽きるような気がする。

『駅をデザインする』 この国と欧米の駅の空間構成やサインの違い、そもそもデザインに対する認識の違いは一体何に因るのか・・・。


本も読みたいし、エリアを県外にも広げて火の見櫓巡りもしたい。風景スケッチもしたい。美女対談もしたいし、ひとり寂しく旅もしたい・・・。

 中年、もとい、初老おじや、ノン、初老おやじのすることはいっぱいあるぞ。   アルコール効果が出て来たのでこの辺でやめておく。


 


藤森照信さんの講演@松本市美術館

2015-03-01 | A あれこれ

 建築史家であり建築家でもある(いまや逆かもしれない)藤森照信さんの講演会が昨日(2月28日)の午後に松本市美術館2階の多目的ホールであり、聴講した。講演のテーマは「戦後住宅は何を求めてきたか」。

戦後の住宅の変遷を概観するという内容だったが、藤森さん流のざっくりとした捉え方、説明になるほど!例えば「家の中心は床柱から流し台へ」という捉え方。

長屋を始点とする戦後復興前の集合住宅、日本住宅金融公庫と日本住宅公団という国主導の集合住宅で実現した寝食分離、ステンレスシンクとダイニングテーブルのあるDK。その一方で建築家が試みた狭くても(狭いことなど気にしない)印象的な住宅作品。

大半の住宅は前者の実用住宅と後者の建築表現としての住宅(建築家の建築観、住宅観を表現した住宅)の間にあるが、この大半を占めるごく一般的な住宅についてはほとんど研究されてこなかった、という。

建築家が試みて来た作品紹介の後自作紹介。

毛綱毅曠「反住器」、石山修武「幻庵」、伊東豊雄「アルミの家」、安藤忠雄「住吉の長屋」、妹島和世(作品名は覚えていない)、西沢立衛「森山邸」、それから藤森さんが縄文住居と評した藤本壮介「T-HOUSE」などが紹介された。

その後、藤森さんの作品もいくつか紹介された。長野の「焼杉ハウス」(名刺67枚目の川上さんが共同設計者)や「高過庵」、「空飛ぶ泥舟」、「ツバキ城」、「ニラハウス」などよく知らている作品のほか、初めて見るオーストリアのリストの生誕地にある「鸛(こうのとり)庵」、最新作の「ラ コリーナ近江八幡」など。素材の質感をストレートに表現した作品。

フジモリワールドに圧倒され、また建築表現の多様性に改めて気付かされた。有意義かつ楽しい講演だった。


  
高過庵と空飛ぶ泥舟 撮影11年08月