透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

カオス渋谷

2020-02-16 | A あれこれ

 「白山通りのいえ」でS君と建築談義をした後、連れ立って渋谷に出た。渋谷には何年も行っていないがその間にすっかり様変わりしている。渋谷の今の様子を見たかった。

渋谷駅は迷路、という印象があるが、今や渋谷駅の周辺も迷路のまちと化した、という印象。案内図を見てもまちを把握できそうにない。



雑誌『新建築』の2019年12月号に渋谷のまちづくりの特集が組まれている。その中の「複雑な都市基盤の更新」という小見出しの記事に渋谷の谷地形を繋ぐ横方向の「スカイウェイ」と縦方向の動線となる「アーバン・コア」の概念図が載っているが、これが渋谷の都市計画で実際にどのように実現されているのか(これから実現するのか)現地では把握できなかった。

「アーバンコア」は単なる移動動線用の狭いスペースに過ぎず(と決めつけてしまう)、大勢の人の移動をきちんと捌くことが機能だとすれば、それは無理ではないか。渋谷スクランブルスクエアの「アーバンコア」に立って、そう思った。

**戦前からの都市の骨格が現代においても変わらず、自然発生的にまちが広がることで生まれた渋谷のダイナミズム。これを壊さずに、まちを再構築するためには(後略)**(「新建築201.12」049頁)

要するに混沌としたまちに秩序を与えようという意図の無いまちづくりがすすめられているということなのだろう。

カオス渋谷はカオスのまま、それが渋谷らしさだよねということ。崩れてしまったかのようなカーテンウォール(下の写真)はこのことを表現しているのだろう。

車にもバスにも定員があり、観光地にもキャパがある(この頃、京都などの観光地ではキャパオーバーによる混乱が起きていると聞く)が、渋谷の駅周辺にも鉄道や屋外空間なども含め、総合的に捉えた場合のキャパがあるだろう。高層の商業ビルが何棟も出現しているが、もうとっくに渋谷のキャパを越えてしまっているのではないだろうか。渋谷カオスの根本にこのことがあるように思う。すり鉢の底のような渋谷の地形的な特徴もカオスと関係しているという指摘もある。だからこそ「スカイウェイ」が構想されたのだろう。でもねぇ、地形まで建築的に何とかしてしまおうなんて発想には無理があるんじゃないかな・・・。



昔、江崎玲於奈氏だったか、が理想的な組織についてオーガナイズドカオス(Organized Chaos)という概念を提示して説明していたことを思い出した。都市然りではなかろうか。渋谷にあるのはカオスであって、オーガナイズドカオスではないなぁ。渋谷を再訪すれば印象が変わるのかな。

渋谷ヒカリエや渋谷スクランブルスクエアをうろついてから、新宿駅に向かうために渋谷スクランブルスクエア3階の改札口(たぶんそうだと思う)から山手線の乗り場に行こうとして、間違えた。「U1さん、そっちじゃない!まっすぐですよ」僕を見送ってくれていたS君が声をかけてくれなければ、帰りのあずさに乗り遅れただろう。判断力の低下、いや、夕方の大混雑で前がよく見えなかったから分からなかった、と言い訳しておこう。

ああ、カオス渋谷。


 


白山通りのいえ・版築のいえ

2020-02-15 | A あれこれ



 久しぶりに大学の後輩S君を「白山通りのいえ」に訪ねた。いつの間にか隣にマンションが建っていて『新建築』に掲載されたころとは様子が変わっていた。モダニズム建築は均質化、規格化された材料によって構成されるがS君が手がけている建築は色にばらつきがあり、寸法にも誤差がある材料を許容する(*1)。


*1 S君が昨年フランスから持ち帰った床タイル 

「白山通りのいえ」の外壁は左官仕上げだが(メモしなかったので詳しく説明できないが、確か地元の土をモルタルに混ぜて作った材料を使っている)、経年変化でいい表情をしていた。




設計室には版築のいえの模型が置かれていた。











「版築のいえ」は形も構造も独創的。設計を始めてから完成まで8年かかったと聞いた。『住宅特集』に掲載されている写真は美しいシーンを捉えているが、この住宅の魅力は写真に撮ることができない別のところにあるような気がする。

放射状に配置された版築にはモルタルを充填した竹の芯材(?)が等間隔に並べてある。これが構造上有効なのかどうか。版築は強度の実証実験もしたそうだ。

小屋組みの直交しない仕口は加工が難しい。大工さん泣かせの(大いに喜ばせる)構造だ。

彼はルーチンワークのように同じ手法を繰り返すようなことはしない。常にチャレンジする彼の姿勢に拍手したい。


 


西日暮里 諏訪神社の狛犬

2020-02-14 | C 狛犬



 12日は都内のホテルに宿泊した。翌朝、山手線西日暮里駅近くの諏訪(諏方)神社へ。久しぶりに狛犬を観察した。





江戸後期、1809年(文化6年)生まれの狛犬。古い狛犬は総じて彫りがすばらしい。 目や口に色を付けることで顔の印象が変わってしまっている。無彩色の方が好み、狛犬には彩色しない方が良いと個人的には思う。向かって右側が獅子、左側が狛犬だが、その狛犬の大きな角が折れてしまっているのは残念。


拝殿

 



拝殿前の青銅製の狛犬

この狛犬の来歴が台座に彫ってあるようだが、見落とした。やはり落ち着いてきちんと観察しなければいけない。この狛犬を紹介しているサイトを参照させていただいた。

文化6年(1809年) 石彫狛犬 れ組頭中にて奉納
大正12年(1923年)9月 関東大震災破損修理
昭和20年(1945年)5月 戦災破損修理
昭和43年(1968年)5月 青銅狛犬再建

神社の案内板の説明に**日暮里・谷中の総鎮守として広く信仰を集めた**とあるが、地元の人たちがこの神社を大切に思っていることが、この狛犬の来歴からもうかがえる。


 


140枚目

2020-02-14 | C 名刺 今日の1枚


140 東京の友人のひとり



東京国立博物館 平成館で開催中の「出雲と大和」展を観た。その後、湯島の小料理屋・ふくろう亭で友人と飲んだ。2016年の12月、この店で友人と飲んだとき、火の見櫓巡りの書籍化を勧められたのだった。あの時、ここで飲んでいなければ、出版することにはならなかったかもしれない。


 


139枚目

2020-02-13 | C 名刺 今日の1枚



139 村山君

大学で同期だった村山君と昨日(12日)再会した。彼と会うのは15年ぶりくらいだと思う。学生時代、僕のアパートで酒を飲みながら語り明かしたこともあった。懐かしい・・・。

食事をしながら、お互いに近況報告。彼は毎日1000mくらい泳いでいるという。それも個人メドレーのように4つの泳ぎ方で。

食事の後、彼は進呈した本をパラパラと繰った。「なるほどね、こういう視点でまとめたのか」とコメント。さすが、理解が早い。

村山、次回は飲もう!


写真と名前を掲載することの了解を得ています。


カバンに本を入れて

2020-02-12 | H 「あ、火の見櫓!」


残部僅かとなった『あ、火の見櫓!』

 今日(12日)上京する。今日明日有給休暇を取った。

昼に学生時代の友人M君と会う約束をしている。彼と会うのはずいぶん久しぶりだ。前回会ってから15年くらい経つだろうか。

毎年年賀状を交換しているが、今年彼から届いた年賀状に火の見櫓の本を出したそうですね、とあった。今はすぐに情報が伝わる。カバンに本を入れていく。1冊進呈しようと思う。

あまり予告記事は書かない方がよいだろう。次稿に東京報告を書こう。


 


「ぽすくま」

2020-02-11 | D 切手



 Hさんから届いた封書に貼られていた切手。僕はテディベアだと思って検索してみたが、見つからなかった。ようやく「ぽすくま」というキャラクターだということが分かった。ミカンとくまが繋がらないんだけど・・・。


 


火の見櫓のある風景

2020-02-10 | A 火の見櫓っておもしろい


松本市新村(再)撮影日2020.02.09

 国道158号を岐阜県の高山方面に向かって松本市内を進む。県道48号との交差点(新村)を過ぎて間もなく、道路はなだらかに左にカーブする。そのカーブにこの火の見櫓は立っている。アイストップになるので、印象に残りやすいだろう。



集落内からはこんな風に見えている。もう少し積雪があって道路の雪かきをしている人がいれば、意図する写真が撮れたかもしれない。








寄贈依頼

2020-02-08 | H 「あ、火の見櫓!」



 先日、長野市の図書館から電話があった。本の寄贈依頼だった。依頼されたことがありがたく、承知した旨伝えた。

スマートレターで1冊お送りした。今日(8日)、図書館から礼状が届いた。これで長野市の皆さんにも『あ、火の見櫓!』読んでいただくことができる。

蔵書登録されていて、既に予約が入っている。



あ、筑北村の図書館にも!

2020-02-08 | H 「あ、火の見櫓!」


東筑摩郡筑北村昭和町 JR坂北駅近く(再)撮影日2013.10.11



3本の柱で支える6角錘の屋根。柱の頂部を水平部材で繋いでできる3角形のフレーム、屋根の補強下地も3角形の水平フレーム。木造の屋根の構造もこんな風につくったら美しいだろうな。教科書的な架構ではなく、創意工夫した架構。





筑北村の図書館の蔵書にも『あ、火の見櫓!』が入っていることに昨日(7日)気がついた。ありがとうございました。


既に書店での販売は終了しているが、先日、平安堂あづみ野店の外商センターから連絡があり、ぜひ購入したいという方がおられると伺った。外商センターのTさんが私のところまでわざわざ本を受け取りに来てくださった。多くの方々に読んでいただき、本当に嬉しく思う。


「日本思想史」

2020-02-06 | A 読書日記



 非日常から日常となった朝カフェ読書。今朝(6日)は7時半のスタバ開店直前にTSUTAYAで『日本思想史』末木文美士(岩波新書2020)を購入。スタバでいつもの通りホットのショートをマグカップで求め、いつもの席に着く。

日本史に関する著書を続けて読んでいる。虫の目より鳥の目、各論より総論を好む私が読みたいと思った『日本思想史』のはじめにから引用する。

**日本の思想がどのような流れをもって展開してきたのか、たとえ大雑把でもよいので、その見取り図を頭に入れた上で、個別の思想を取り上げるのでなければならない。(中略)新書のわずかな分量では、個々の思想に立ち入って詳しく論ずることはできない。しかし、それだけに個別の問題に深入りすることで見えにくくなる全体の流れを、あたかも俯瞰図のように見通すのには好都合かもしれない。**(はじめにⅱ)

巻末に載っている人名索引、書名索引の多さにびっくり。

今週末は多忙、読むことができるかどうか・・・。


 


「幾何学的数寄屋造」

2020-02-04 | A あれこれ

『TOTO通信』に藤森照信さんが連載している「現代住宅併走」、2020年新春号で藤井厚二設計の太田喜二郎邸を取り上げている。タイトルは「幾何学的数寄屋造」。



藤井厚二の作品では代表作「聴竹居」しか知らないから(なんとも情けない)、藤森さんの解説文を興味深く読んだ。

**藤井は数寄屋造を幾何学という数学で洗い、数寄屋造にまとわりつく手技というか味わいというか、そういう長い歴史のなかで染み込んだ垢のようなものを流し去った。だから、その後の木造モダニズムの源となることができた、と今は考えている。**(46頁)

藤森さんは吉田五十八の数寄屋との比較で、**ふたりの差は空間の背後に幾何学が隠れているかどうかの差にほかならない。**(46頁)と分析している。

藤森さんは作品の魅力を簡潔に言い切る。慧眼はさすがだ。


火の見もいいけど建築もね。