透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

「実践 自分で調べる技術」

2020-12-14 | A 読書日記

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 『実践 自分で調べる技術』宮内泰介・上田昌文(岩波新書2020年10月20日第1刷発行)。書名の通り、この本は知りたいことを自分で調べるための方法を具体的に紹介している。ただし国会図書館のデータベースを調べる方法を詳細に説明するなど、大学生や大学院生が論文執筆のために参考にするようなレベルの内容だ。

カバー折り返しに**小中高の探求学習にも活用できる入門書**とあるが、小中高の探求学習の指導にも活用できるという紹介の方が相応しい。少なくとも小中学生にはこの本で説明されていることを実践するのは難しいだろう。

第5章(最終章)は「データ整理からアウトプットへ」という章題だが、アウトプットについては論文にまとめることと、論文発表の方法についてやはり具体的に説明している。

この様な内容であるから、一般素人の読者である私にとって、いや、これから調査研究をする機会はまずないであろう私にとってあまり有用ではなかった。ただし熱心に研究しようという学生には大いに役立つと思う。

**「A市の農業は現在どういう問題をかかえているのか」ということを知りたいと思います。どういう調査をすればよいでしょうか。調査プランを立ててみましょう。**(99頁) 本書に示されている練習問題のひとつ。


 


消えゆく火の見櫓

2020-12-13 | A 火の見櫓っておもしろい



 長野県朝日村の消防団は分団が第一から第五まである。その内、第一分団の詰所はもう何年も前に改築された。第二、第三、第四各分団の詰所は既に改修工事が済んでいる。

現在第五分団の詰所の移転改築工事が行われているが、外構工事を残して詰所本体は完成している。今日(13日)偶々、新しい詰所の前を通り掛ったので、車を停めて様子を見た。外壁に半鐘を吊り下げてあるし、消火ホース乾燥塔も設置してある。第五分団の新しい詰所が完成すれば、今まで使っていた古い詰所は解体撤去されることになる。その時に火の見櫓も撤去されてしまうだろう・・・。ああ、消えゆく火の見櫓。






当然のことながら半鐘は無い。


以前撮影した写真には半鐘が写っている。


やがて姿を消す火の見櫓と詰所 (再)東筑摩郡朝日村 3脚66型 撮影日2020.12.13 

過日この火の見櫓の建設工事契約書を見る機会があった。1955年(昭和30年)の7月から8月にかけて建設され、建設費は13万円だった。


 


「アド・アストラ」

2020-12-12 | E 週末には映画を観よう

 うれしいことに私の年齢だと、毎週金曜日にTSUTAYA北松本店でDVD(旧作)を1枚無料で借りられる。で、昨日(11日)2019年の秋に公開されたSF映画「アド・アストラ」を借り、今朝観た。

ストーリーはシンプル。主人公の宇宙飛行士ロイ(ブラッド・ピット)が、やはり宇宙飛行士で16年前だったかな、消息を絶った父親(缶コーヒーBOSSのおじさん、トミー・リー・ジョーンズ)を探して遙か彼方、海王星まで行くという話。「父を訪ねて43億キロ」。

父親は家族を捨てて(という表現は厳しすぎるのかもしれないが、結果的にはそうなっていた)、地球外生命体を探し求めて深宇宙に飛び去っていた。

海王星近くの宇宙ステーションで父親と再会を果たしたロイ。彼は父親を説得して一緒に地球に帰ろうとするが、父親は拒む・・・。ロイはひとりで地球へ帰還する。で、ある人と再会。そこで映画は終る。

結局、この映画は観る者に、たった独りで生きてゆくのはつらいこと、パートナーを大切に、家族を大切にというメッセージを伝えたかったのだろう。


 


「日本文化の核心」

2020-12-09 | A 読書日記



 今日(9日)、朝カフェ読書で読む本を選ぶために少し早めに家を出た。TSUTAYA北松本店の新書と文庫のコーナーで探す。24時間営業はありがたい。『日本文化の核心 「ジャパン・スタイル」を読み解く』松岡正剛(講談社現代新書2020年第5刷発行)を買い求める。ようやくセルフレジにも慣れた。

講談社現代新書は今のカバーデザインに変わってから、あまり読まなくなった。決して悪くないデザインだけれど、なぜだろう・・・。

その足で隣のスタバへ。今日のカウンター内のふたりの店員さんとは顔なじみ。ふたりとも「火の見櫓のある風景 スケッチ展」に足を運んでいただいている。 2階のいつもの席に着く。写真がワンパターンだな、と反省し、上掲の写真を撮った。

松岡氏は様々なジャンルの本を数多く精読していて、知の巨人と言われている方だが(*1)、この本の日本文化に関する論考も多方面に及ぶ。

松岡氏で思い出すのは2010年(だったかと思う)、東京駅前の丸善本店の4階に設けられた「松丸本舗」という氏がプロデュースした売り場。無関係と思われる本たちが氏の視点によって関係づけられ、同じところに並べられていて、大変興味深かった。知の編集の妙と言えば良いか、この本にも通じる魅力だと思う。


*1 HP「千夜千冊」


「はやぶさ2 最強ミッションの真実」

2020-12-08 | A 読書日記

320

 『はやぶさ2 最強ミッションの真実』津田雄一(NHK出版新書2020年11月10日第1刷発行)を読み終えた。本の帯の写真は小惑星リュウグウの表面。一番明るいところの黒点は降下中の「はやぶさ2」の機影。  

「着陸可能な領域は一つもありません」

はやぶさ2のメンバーは次々難局に直面する。**挑戦のレベルは絶望的に高かったが、メンバーはその状況を良い意味で楽しんでいた。探査機の運用は時々刻々重要な判断を迫られ、一つの間違いが大事故につながる。メンバーはそういうプレッシャーを常に感じながら、その状況を前向きな力に変えていた。(後略)**(256頁)

はやぶさ2は着陸可能な領域がないと判断された小惑星リュウグウにタッチダウンを2回成功させたが、2回目のタッチダウンの誤差はたったの60センチメートルだったという。この時リュウグウは地球から太陽より遠い2.4億キロメートル彼方。凄いとしか言いようがない。このように凄いとしか言いようがないことがこの本ではいくつも紹介されている。

**あるプロジェクトメンバーが、はやぶさ2がリュウグウを離れるときに、次のような感想を漏らしました。「このミッションは誰もが『自分がいなければ成功しなかった』と思えるミッションだよなあ」私はその言葉に目頭が熱くなりました。**(268頁)

優れた組織(チーム)とはどんな組織か。組織としての意思決定はどのように行われたのか。組織論としても読むこともできるだろう。組織に必要なのはOrganized Chaosだと指摘したのは江崎玲於奈氏だったが、確かにそうだな、と本書を読んで感じた。

年末に「今年の3冊」を選ぶがこの本はその内の1冊になるだろう。





この本を読むなら今

2020-12-05 | A 読書日記



 今日(5日)朝カフェ読書で読み始めたのは『はやぶさ2 最強ミッションの真実』津田雄一(NHK出版新書2020年第1刷発行)。5日の午後にはやぶさ2から投下されたカプセルは6日の早朝オーストラリア大陸のウーメラ砂漠に緩降下する予定だから、この本を読むなら今だ。著者の津田さんは2015年4月、史上最年少でプロジェクトマネージャーに就任している(*1)。

読みやすく、読み物としてもとてもおもしろい。綴られている開発の苦闘から打ち上げに至るプロセスは実に感動的だ。それにしてもすごい技術。

**11月11日(*2)、打上前最終確認会が種子島で開催された。JAXAの幹部やシニアの技術者が、完成したはやぶさ2を確認しながら、その製造工程に問題がなかったか、打ち上げに向けてロケットに搭載してよいかを審査する会議だ。
朝、宿の前で幹部に出くわした。ずっと親身に開発を見守り、時には厳しいアドバイスをくれた方だ。私の顔に不安の色を見てとってか「津田君、ここまで来たら大丈夫だよ。自信をもって送り出しなさい」といつになく優しく声をかけてくれた。**(102頁)
この件(くだり)を読んで涙ぐんでしまった。『小惑星探査機はやぶさ』川口淳一郎(中公新書2010年発行)を読んだ時も涙ぐんだが(はやぶさ・過去ログ)、新書を読んで涙ぐむとは・・・。

はやぶさ2は52.4億キロメートルもの距離(地球から太陽までの距離は約1億5000万キロメートルだからその35倍!)を航行して地球近くまで帰還してくる。そしてカプセルを切り離して再び宇宙へ・・・。

追記:6日の早朝、ラジオのニュースでカプセルが発見されたことを知った。スタッフの皆さん、おめでとうございます。
6日の朝刊(信濃毎日新聞)でもこのニュースを紙面を大きく割いて報じている。記事に、小惑星りゅうぐう(*3)の着陸地点は「たまてばこ」と名付けられたとあるが、この名前はカプセルに付けて欲しかった。


*1 『小惑星探査機はやぶさ』中公新書の著者川口淳一郎さんは「はやぶさ」のプロジェクトマネージャーだった。
*2 私の注:2014年11月11日 はやぶさ2の打ち上げは同年12月3日
*3 信濃毎日新聞の記事の表記はひらがなでりゅうぐう、読んでいる本などではリュウグウ。 

 


「人・本・旅」

2020-12-04 | D 新聞を読んで

 「性別・年齢からフリーで生きよう」という見出しの記事が12月1日付信濃毎日新聞のくらし面(13面)に掲載されていた。記事で紹介されていたのは立命館アジア太平洋大学学長の出口治明さんの著書『還暦からの底力』(講談社現代新書)。この本で訴えたかったことは「性別・年齢からフリーで生きよう」ということだと文中の出口さんのコメントにある。



紙面を大きく割いた記事には「高齢者も支え手の役割を担う」と「「人・本・旅」を通じ 思考力を養う」という見出しもある。これら3つの見出しが『還暦からの底力』で出口さんが説きたかったことの趣旨だろう。

「人・本・旅」については**会社人間を脱却して、いろんな人に出会い、本を読み、面白い場所に行く―。それによって、自分の頭で物を考えて自由に生きられる人間になることを勧める。**と記事にある(このブログでは**で引用範囲を示しています。)。

私の場合、自由に生きられる人間になるためなどということは意識していないが、いろんな人に出会いたいなと思っているし(過去ログ)、本も読んではいる。あと旅か・・・。旅と言っても何も遠出をすることではないだろう。面白い場所、興味がある場所に行くということは普段から実践しているかな。

まあ、このように自分を正当化してしまうと、反省もしなくなってしまう。ここは謙虚に、謙虚に。

『還暦からの底力』、読んでみようかな。


 

 


来年はこんなふうに・・・

2020-12-03 | A 火の見櫓っておもしろい

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 師走、来年のことをあれこれ考える時期になった。

火の見櫓のこと。

今年は「火の見櫓のある風景」を写真に撮ったし、スケッチもした。だが、大半は火の見櫓そのものにフォーカスして撮り、ブログに書く記事も火の見櫓そのものを分析的に捉えたものだった。

来年は火の見櫓と地域の人々との関わり、火の見櫓のある集落の人々の暮らしを捉えてみたい。このようなことの手本になるのが葛飾北斎の「富嶽三十六景」だ。中でも上掲の「尾州不二見原」はその好例。主題の富士山をはるか遠くに配し、大きな桶をつくる職人を描いている。私が考えているイメージを具体的に示す浮世絵だ。ここで富士山を火の見櫓に置き換えれば良い。桶をつくる職人はどんな人に替えることができるだろう・・・。

雪降る朝、鮮やかな傘をさして歩いて行く小学生たちを見守るように立つ火の見櫓
火の見櫓のすぐ近くのバス停でスマホ、いや、本を読みながらバスを待つ高校生
火の見櫓の下に置かれたプランターボックスの花に水やりをするおばあさん 

映像のイメージは次々浮かぶ。あとはプライバシーに配慮して写真を撮り、文章を書くだけだが、さて・・・。


 


朝カフェ読書

2020-12-01 | A 読書日記





 日本の近代建築に関する教科書的な新書を挙げよと言われれば私は藤森照信さんの『日本の近代建築』岩波新書を挙げる。今日(1日)、朝カフェで読み始めた『近代建築で読み解く日本』祝田秀全(祥伝社新書2020年初版第1刷発行)も日本の近代建築の教科書的な新書と言っていいかもしれない、少し表現は柔らかめだが。数多く掲載されている珍しい写真を見るだけでも楽しい。よく集めたものだ。

今年も残すところあとひと月。年末年始は巣ごもり読書かな。