シッドモア女史の「日本紀行」と並行してこの文庫を読み進めたが、訳文である「日本紀行」よりずっと読み易くて半分まで行かないうちに、読み終えてしまった。
表題作を含む七作品を収めた短編集である。うち「明治新選組」「近江屋に来た男」「尾張忍び駕籠」「五稜郭の夕日」の四作品が幕末維新に関係する作品である。
「明治新選組」は今から三十年ほど前に書かれた中村彰彦氏の処女作らしいが、「歴史の裏でさしたる評価も受けずに消えて行った人々に何とか花束を捧げたいという」姿勢は今に至るまで氏の作品に一貫していることを思い知ることができる。
この短編は、最後の新選組隊長相馬主計(本作では主殿)を主人公としたもの。流刑地である新島で妻を娶った相馬主計は、赦免されて東京に住むが突如謎の自殺を遂げた。自殺に至る経緯は歴史の闇の中であるが、中村彰彦氏は想像をたくましくして、一種のミステリー小説に仕上げた。
「近江屋に来た男」では、坂本龍馬暗殺実行犯の一人、今井信郎を取り上げた。龍馬を暗殺したのは佐々木只三郎率いる見廻組というのは疑いのないところであるが、その生き残りである今井信郎は証言をひるがえしている。そこに着目して龍馬暗殺事件の新解釈を提示した。
「尾張忍び駕籠」は、青松葉事件に題材を取ったコメディタッチの作品。青松葉事件という陰惨な事件に題材をとりながら、お殿様がいざ脱出というときのための駕籠を預かる家に生れたノンポリのサムライという設定が絶妙である。
「五稜郭の夕日」では、土方歳三に近侍した市村鉄之助を取り上げる。わずか十六歳で箱館戦争を経験し、土方の命を受けて日野の佐藤彦五郎を訪ねる。彦五郎の保護を受けて、何一つ不足のない生活を送っていたように見える鉄之助だが、ある日突然姿を消したかと思うと、西南戦争に身を投じて若い命を散らしてしまう。市村鉄之助の心理描写やロマンティックな夕日が印象的な作品である。
表題作を含む七作品を収めた短編集である。うち「明治新選組」「近江屋に来た男」「尾張忍び駕籠」「五稜郭の夕日」の四作品が幕末維新に関係する作品である。
「明治新選組」は今から三十年ほど前に書かれた中村彰彦氏の処女作らしいが、「歴史の裏でさしたる評価も受けずに消えて行った人々に何とか花束を捧げたいという」姿勢は今に至るまで氏の作品に一貫していることを思い知ることができる。
この短編は、最後の新選組隊長相馬主計(本作では主殿)を主人公としたもの。流刑地である新島で妻を娶った相馬主計は、赦免されて東京に住むが突如謎の自殺を遂げた。自殺に至る経緯は歴史の闇の中であるが、中村彰彦氏は想像をたくましくして、一種のミステリー小説に仕上げた。
「近江屋に来た男」では、坂本龍馬暗殺実行犯の一人、今井信郎を取り上げた。龍馬を暗殺したのは佐々木只三郎率いる見廻組というのは疑いのないところであるが、その生き残りである今井信郎は証言をひるがえしている。そこに着目して龍馬暗殺事件の新解釈を提示した。
「尾張忍び駕籠」は、青松葉事件に題材を取ったコメディタッチの作品。青松葉事件という陰惨な事件に題材をとりながら、お殿様がいざ脱出というときのための駕籠を預かる家に生れたノンポリのサムライという設定が絶妙である。
「五稜郭の夕日」では、土方歳三に近侍した市村鉄之助を取り上げる。わずか十六歳で箱館戦争を経験し、土方の命を受けて日野の佐藤彦五郎を訪ねる。彦五郎の保護を受けて、何一つ不足のない生活を送っていたように見える鉄之助だが、ある日突然姿を消したかと思うと、西南戦争に身を投じて若い命を散らしてしまう。市村鉄之助の心理描写やロマンティックな夕日が印象的な作品である。