劇団で芝居をやりながら学ぶこと。
我々の劇団は上は90歳のおばあちゃんから、下は娘と同世代の22歳まで、
何と年齢差70歳もある、特殊な集団です。
芝居をやるにしても、身体的な差ははっきりと出る。
でも、若い人が懇切丁寧に皆を引っ張ってくれる。
本当に若い人のやる気や、献身的な態度にはいつも頭が下がる。
稽古の準備や、後片付けを黙々とやってもらっている。
もちろん、僕も出来る限り率先して手伝っていますけれどね。
若い人からは会費は徴収していません。
でも彼らはアルバイトをしながら、休みを取ってそういった作業をしてくれている。
むしろ彼らの方が、会費を支払うより代償を払っている気がします。
この集団で僕は『くそガキ』と呼ばれています。
目上の人に向かって、対等な口を利くし、言いたいことも遠慮なく言う。
男性陣のメンバーは、皆さん国立の大学を卒業されているうえに、
一流企業で取締役や社長を歴任された方ばかり。
それでも、僕のような人間をしっかり受け入れる懐の深さがある。
中でも座長に次ぐ、ナンバー2的な存在のT氏は尊敬する人物です。
なにしろ80歳になろうとしているのに、良く食べる。
下手をしなくても、肉やご飯を僕の倍くらい食べる。
『食わんと、長生きできんぞ!』
いつも夕食を同伴させて頂きながら、言われる言葉。
人生の先輩として、色んな話が聞ける。
なんせ、Tさんがお付き合いしている方々は財界のトップクラスの方々。
それでも、僕には一目置いてくれている。
有難いですね。そういう懐の深さが格好いい。
僕が目標としている先輩の一人です。
そのTさん。
僕が若手に『この劇団の人たちは、僕にとって恩人みたいな存在』
と話したことがある。
2年ほど前から職場のストレスで不眠症に陥り、精神科に通っていた時があった。
その途中に劇団の稽古が始まって、そうしたら精神状態が安定してきて、
劇団の公演が終わる頃には精神科のカウンセリングも卒業できた。
芝居の中で別の自分を作る事、他人と関わりながらの半年は大変だったけど
そう云ったコミニュケーションが、心を癒してくれた。
そんな事を若手に話したら
『えぇ…そんな繊細な人には全然見えないけどなぁ…』と言われた(笑)
それを横で聞いていたTさんが
『この人は、皆が思っている以上に繊細なんだよ』とフォローしてくれた。
さらに
『台本をきちんと読み、芝居の内容を咀嚼して稽古に来ているしね…。
それに凄く気を遣って周りへの気配りをしているんだよ』
そんな風に僕を見て頂いているのが嬉しかったですね。
やっぱり上場企業のトップに立つような人は、きちんと人を見ているんだと思った。
劇団の男性陣は本当に大人の集団です。
その中で僕だけは、ずっと精神的に大人になっていない気がします。