映画とライフデザイン

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映画「ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリデイ」 アレクサンダーペイン&ポールジアマッティ

2024-06-21 22:02:51 | 映画(洋画:2022年以降主演男性)
映画「ホールドオーバーズ」を映画館で観てきました。


映画「ホールドオーバーズ」「サイドウェイ」監督アレクサンダー・ペインと主演のポール・ジアマッティが再度コンビを組んだ新作である。黒人女優のダヴァイン・ジョイ・ランドルフがアカデミー賞助演女優賞を受賞している。「サイドウェイ」はカリフォルニアの郊外のワイン畑をまわるロードムービーの傑作でこの映画をきっかけにポール・ジアマッティの作品を観るようになる。3人が一緒になるポスターが目につくが、先入観なしに映画館に向かう。

1970年冬、ボストン近郊にある全寮制のバートン校で古代史の教師ハナム(ポール・ジアマッティ)は融通が効かない教師で、斜視で堅物と生徒からも嫌われていた。クリスマス休暇で生徒と教師のほぼ大半が家族と過ごすなか、ハナムは校長から学校に残るようにいわれる。あとは勉強はできるが家族関係が複雑なアンガス・タリー(ドミニク・セッサ)と息子をベトナムの戦場で亡くした料理責任者メアリー(ダヴァイン・ジョイ・ランドルフ)が学校に残ることになった。3人で迎えるクリスマスにアンガスからある提案があった。

気の利いたアメリカ人情劇で自分が好きなタイプのアメリカ映画だ。
脚本の巧みなリードで当初感じた嫌悪感から自分のハートを徐々に情感処理していく。「気の利いたウソ」が映画の主題といった印象をもつ。何せポールジアマッティがいい。

雪景色の学校やボストンの街などのバックに映る背景がすてきだ。ボストンは時代を感じさせる街なので、1970年の設定でも何とかなっちゃう。レストラン、屋外スケート場、博物館、古本市、ボーリング場などを通じてアメリカらしさが伝わる、寮生の部屋に貼っているポスターやペナントで時代を感じさせて、「ノックは3回」や「ヴィーナス」などの全米ヒットチャート1位になったポップスのヒット曲で1970年当時の空気が伝わる。


⒈ポールジアマッティ
ポールジアマッティは名門イェール大学出のインテリで、父親はイェール大学の学長もつとめた血統だ。学校の教師役はお手のもの。でも、ダメ男を演じることが多い。「アメリカンスプレンダー」のオタク男や「win win」の仕事のない弁護士などそうだ。「ラブ&マーシー」でのブライアンウィルソンの主治医のような悪役もある。ともかく役柄は幅広い。


アレクサンダーペインがアカデミー賞脚色賞を受賞した「サイドウェイ」では小説家志望の国語教師だった。女に尻込みするパッとしない奴なのにワインのうんちくを語らせると突如能弁になる主人公である。ここでも世界史の序盤戦ギリシャローマ史は専門でくわしい。ある意味似ている。でも、今回は前回と違ってイヤな奴だ。上位大学に進学が決まった生徒にも平気で悪い点をつける。落第寸前の生徒にクリスマス休暇での勉強を前提とした追試を設定する。われわれがよく知っているイヤな教師だ。

結局、クリスマス休暇に最終的に3人残るわけだが、その辺りから様相が変わってくる。3人の距離が縮まる。そしておもしろくなっていく。本当は学校に残っていなければならないのに「社会科見学」とこじつけて3人でボストンに向かう。そこでハナム先生も二度と会うはずのなかったハーバード大学時代の同級生と偶然出会うのだ。そこに居合わせた生徒のアンガスに意外な事実がわかってしまう「気の利いたウソ」がポイントになるようにストーリーの展開が変わっていく。

⒉ダヴァイン・ジョイ・ランドルフ
自分が好きなエディマーフィ主演のNetflix映画「ルディレイムーア」で主人公の妻役の歌手だったのを思い出した。1970年といえば、1968年のキング牧師暗殺はそんなに昔のことでないし、その年にはメキシコオリンピックで黒人選手が表彰台で抗議した。大学の賄いを受けもつ黒人のメアリーの存在も微妙だ。生徒によっては露骨に差別する奴もいる。そんな複雑な立場だ。

ベトナム戦争で息子を亡くしている。若者にとっては暗い時代だ。そんな時代に息子を亡くした母親の立場は、アメリカ人で胸にしみる人も多いだろう。もちろん表情豊かで個性的な演技は評価すべきだと思うが、アカデミー賞でも同情票も集まっただろう。


⒊人情モノ的要素
実はクリスマス休暇に学校にやむなく残った3人それぞれにドラマがあった。最初は寮の中で好き勝手に振る舞う生徒たちがなんかイヤだなと思っていたら徐々に人情モノ的な要素が出て来る。1人残った生徒も再婚した母が新しい夫と旅行にいくので休暇といっても帰れない。そこで実の父親との交情も含めた話になっていく。ひと時代前の日本映画に多い展開だ。

そういうドラマが展開する中で堅物のハナム教師も変わっていく姿がいい。ネタバレできないが、ラストに向けては、うーんという同情心とほろ苦い感触をもつ。でも、映画の後味は悪くない。


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