映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

ブンミおじさんの森

2012-01-11 06:24:42 | 映画(アジア)
「ブンミおじさんの森」は2010年カンヌ映画祭でパルミドールを受賞した作品だ。
タイ映画とは驚いた。
今回は審査委員長のティムバートン監督の絶賛を浴びている。絶賛の意味は映画をじっくり見ていくとわかる。確かに今まで見たことのない独特の映像を見せている。
腎臓の病に侵され余命いくばくもないことを悟ったブンミは、自分の後を託すため妻の妹ジェニに久々に会う。その夜亡くなった妻が現れ、さらに十年以上年前に行方不明になった息子も姿を変えて現れた。愛する者たちと再会したブンミの物語だ。


タイ東北部ラオスに近いある村が舞台だ。水牛が逃げ出していくシーンからスタートする。それを追う主人公ブンミ、その影で目を光らせた何かがいる。目の色は赤い。妖怪映画のようなスタートだ。
腎臓の病を患う主人公ブンミ、19年前に死んだブンミの妻の妹ジェンとトンがやってくる。ブンミは家で透析をしている。ブンミとジェン、トンが家の外で夜半に夕食を囲んでいると、ブンミの妻フエイが亡霊のように現われる。19年前に死んだとき42歳だった。その姿のまま現れた。
さらに、目を光らせている動物がいる。毛むくじゃらで赤い目の動物だ。人間の声がする。聞き覚えのある声だ。いかにも数年前に行方不明になったブンミの息子ブンソンの声だ。ブンソンは森で撮影した写真に不思議な生物が写っているのを見つけ、正体をつきとめるため森に入っていった。生きものは猿の精霊だった。いつのまにか彼も猿の精霊となって姿を変えたのだ。


ブンミは妻と息子に、フエイの願いで養蜂場を作った農場や、フエイの葬式の写真を見せる。翌日、ブンミはジェンを養蜂場に連れていく。ジェンは足を引きずっている。2人は小屋で休み、ブンミは透析をする。ブンミは自分の病気を、共産兵や農場の虫を殺したカルマだと言う。

不思議な映画である。主人公はいかにも田舎に住むタイ人、単なる農民という人相だ。派手さはまったくない。こういう人里はなれたエリアに死んだ人たちが現れるというのが本当にありそうだ。死んだ妻があらわれてもみんな冷静だ。非現実的なシーンなのに、いかにも現実のようにみんな自然に受け止めている。幻想が現実に見えてくる瞬間だ。
カット割りは比較的長めに設定、田舎の主人公の家の周辺の森や農場や水場での映像が続く。まったりとした時間が流れる。その時間の長さは悪くない。


ティムバートンはこんなファンタジー見たことがないといった。精霊を伝える映像の中で、西洋人からすると東洋の神秘を感じるのであろう。森に入っていくといつの間にか猿の精霊になるという話は、虎に姿を変えた中島敦の「山月記」のようだ。個人的にはデイヴィッドリンチを思わせるスクリーンづくりをするなあと思った。彼の映画も動物の顔を持った人間が出てくる。森の中を映すバックの音は最初は虫や鳥の声をバックにする。次第にデイヴィッドリンチの映画のような音が鳴り響く。幻想的なシーンにしていく。


印象に残ったシーンがある。その意味自体はいろんな解釈されているが凄いシーンである。
ディズニーシーのショーで「ミスティックリズム」というミュージカルがある。このショーの設定を連想した。ジャングルの滝のそばで水の精霊と動物たちが戯れるショーだ。ここでも小さな滝とそのそばの滝つぼで展開される。王女が出てくる。そして若いタイ人の男と戯れるが、コンプレックスのある王女がすねて別れた後ナマズが出てくる。ナマズは滝つぼの中にいる。声を発する。その声を発するナマズの元に王女が近づいていく。滝つぼの中に入っていくのだ。そして滝つぼの中でナマズが王女の体に触れていく。戯れる。
見ているときめきが言葉でうまく表せられないのが残念。凄い!どっきりした。
コメント
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