映画とライフデザイン

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太陽に灼かれて ニキータ・ミハルコフ

2012-05-06 07:26:56 | 映画(洋画 99年以前)
映画「太陽に灼かれて」は94年のロシア映画、1930年代のスターリンによる粛清時代を描く。

成宮寛貴君の映画のコメントしていたら、彼が昨年「太陽に灼かれて」を劇で上演していることがわかった。この映画は割と有名だけど、機会がなく見ることがなかった。ロシア料理は大好きなんだけれど、ロシア映画はスケールが大きい割に苦手だ。ずっと後回しになっていた。

別れた恋人が突如戻ってくることに戸惑う妻とその夫の振る舞いを描く。

ロシア革命の英雄コトフ大佐(ニキータ・ミハルコフ)は田園地帯の避暑地「芸術家村」で若妻マルーシャ(インゲボルガ・ダプコウナイテ)とその一族、娘のナージャ(ナージャ・ミハルコフ)とともに幸福な日々を送っていた。映画ではのどかな生活をしばらく描いていく。
ある日サングラスの髭面の老人が訪問してきた。かつて家族同然に親交があったドミトリ(オレグ・メシーコフ)の変装だった。貴族育ちの彼はピアノを弾きながらはしゃぎまわる。昔の恋人であったマルーシャと一家は再会を喜び、ナージャもすぐになついた。しかし、大佐は複雑な心境を顔に表していた。
一家は川に遊びにいく。大佐はナージャと遊んでいた。ドミトリがわざとおぼれたふりをしたりして、彼女を挑発した。二人きりになったマルーシャとドミトリのあいだには昔の情熱がよみがえる。その雰囲気を察した大佐が彼女を真意を確かめようと、強く愛情を求めようとする。ドミトリは何かの意図をもって訪れているようであったが。。。


前置きの長い映画である。ロシアの大草原の中、暮らす家族の偶像をじっくりと描くといえばいいかもしれないが、若干凡長である。退屈な映画だなあと思っているところに元の恋人が現れる。強い化学反応を示す。そこで映画の流れが大きく変わっていく。一人の男の媒介で映画が引き締まる。緊張感が出てきて映画がおもしろくなる。



スターリンの粛清というのは旧ソ連の歴史の中でも非常に暗い場面である。元々のライバルであるトロツキーもこのとき殺された。ヒトラーが悪くいわれるが、それ以上に悪く評価されてもおかしくないような男である。
計画経済に失敗して、国民が困窮した。その時点で反逆する気配の人物を次から次へと抹殺した。「エニグマ」などの映画でドイツよりももっとひどいことをポーランドでしてきたことが指摘されている。
その後、毛沢東主席が大躍進政策に失敗した後、劉少奇、小平が改革政策を打ち出すのに文化大革命で対抗したのと同じだ。社会主義というのはろくなもんじゃない。
主人公はそういうスターリンと仲良く写真に写っていて、自慢しているような男だ。それでもちょっとしたことで粛清を受ける。大変な話だ。


監督兼主演のニキータ・ミハルコフがうまいのは言うまでもない。正反対のキャラを演じるオレグ・メシーコフが貴族出身の秘密警察の男を演じていた。教養を見せつけ、ピアノにギターにサッカーと何でもやる。会話もセンスがある。こんな2つの強い個性には普通の女性であれば戸惑うであろう。
ここで特筆すべきは監督の娘でもある子役のナージャ・ミハルコフである。父と一緒に出演している気楽さもあるせいか、無邪気で屈託のない演技は演技の枠を超えている。まさに天才というべきであろう。自分の映画史の中でもこんなにうまい子役ってみたことがない。彼女を見るだけで価値がある映画ともいえよう。カンヌ映画祭パルミドールとオスカー外国語映画賞となったのもナージャ・ミハルコフが強く評価されてというのが大きく影響している印象を受けた。
コメント
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