映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

映画「五番町夕霧楼」 松坂慶子

2012-12-24 15:58:10 | 映画(日本 昭和49~63年)
映画「五番町夕霧楼」は水上勉の2つの原作をもとに映画化した1980年の作品だ。

まだ若き日の松坂慶子が京都の廓町の娼婦役を演じ、奥田詠二がドモリの僧を演じる。金閣寺炎上という大事件の犯人とフィクション上の幼馴染の娼婦とのはかない恋の物語だ。例によってこの当時の松坂慶子は美しい。


昭和25年前後の設定だ。丹後の木樵の娘・夕子(松坂慶子)は、貧しい父、肺病の母と3人の妹と暮らしていた。その村に京都の廓町である五番町の夕霧楼の女将(浜木綿子)が葬儀のために来ていた。友子は母の治療費のために自ら売られて京都へいく。遊郭には同じように不遇で娼婦となった女性がいた。女将は早速西陣の織元の旦那甚造(長門裕之)に夕子を売り込む。旦那は夕子を気にいり、2万円で水揚げする。贔屓を得て、1年後には夕子は五番町で一、二を争う売れっ妓になっていた。


だが夕子には同郷の幼友達であり思いを寄せていた青年僧の正順(奥田詠二)がいた。正順は丹後の禅宗寺の跡取りだったが、ドモリがひどくコンプレックスをもっていた。鳳閣寺の長老(佐分利信)の厳しい指導に耐えていたが、ある時夕子がおとづれて来たのを機に遊郭へ行くようになる。夕子は彼をやさしく迎える。しかし、正順は夕子の身体を欲せず、何もせずに二人で時間を過ごすだけで帰って行ったのであった。だが夕子を妾にしようとしていた甚造は鳳閣寺の長老に彼の廓通いを密告するが。。。


テレビ朝日の2時間ドラマを見ているがごとくである。全盛時代の松坂慶子くらいが見どころだけど、この映画は割と芸達者が数多く出ている。昭和に戻ったようで、何か気分は悪くはない。
朝鮮戦争に突入というのが、映像の中で出てくる。昭和25年6月である。実際の金閣寺炎上事件も同じ年の7月だ。米軍兵が京都の街中を闊歩する場面も多い。実際京都は戦災に遭っていない。戦争相手がまともだったと思うしかない奇跡である。溝口健二の映画の「お遊さま」「祇園囃子」でもこの時代設定と同じような京都が登場する。何か神がかったものがあるのであろう。
2万円で水揚げというと、今で言うとどういう金銭感覚なのであろう。日経平均株価が昭和25年を100として現在が1万円と考えると、貨幣価値がほぼ100倍と考えていいと思う。そうすると約200万か、水揚げしても全部自分のものになるわけではないからちょっと高いかなって気もするけど、戦災に遭っていない旦那衆はそのくらいどうってことないか。

金閣寺炎上事件は三島由紀夫の小説「金閣寺」があまりにも有名だ。水上勉「金閣炎上」を書いたのはこの映画が上映される前年だ。大映映画で市川雷蔵主演で「炎上」というこの事件をもとにした映画があった。本当に暗い映画だった。市川雷蔵も暗かったが、仲代達矢の友人役がもっと暗かった。ここでは松坂慶子という美形をクローズアップするために僧の精神状態に入り込むというよりも、娼婦になった彼女を追いかけていく。


注目すべきは、五番町夕霧楼の女将役を演じた浜木綿子だ。俳優香川照之氏の母上だ。年齢は当時45歳、華やかな夜の街を切り盛りする女将が実に似合っている。最近でこそ見なくなったが、このころはテレビのドラマで変幻自在の活躍を見せていたものだ。女手一つで当代きっての名優を育てたところが凄い。ただこの映画では、いかにも裏も表も知り尽くしたやり手の女将という姿しかない。自分が当時の彼女の年より上のせいもあるけど、非常に魅力的に感じてしまうのは年のせいかな?


娼婦には中島葵や風吹じゅん、根岸季衣が名を連ねる。中島葵はにっかつポルノで見せたような存在感はない。いずれにせよ、今で考えると全然色の香りがしない。ジャケットとは正反対に松坂慶子もほとんどその裸体を見せないし、バストトップも姿を現さない。そう言った意味では見る人たちを落胆させるかもしれない。




(参考作品)
五番町夕霧楼」
妖艶な松坂慶子


炎上
市川雷蔵演じる修行僧
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映画「ひまわり」 ソフィアローレン

2012-12-24 07:54:36 | 映画(洋画 89年以前)
映画「ひまわり」を久々に見た。
イタリア映画の巨匠ヴィットリオ・デ・シーカ監督が2人の大スターソフィアローレンとマルチェロ・マストロヤンニを率いて製作した名作だ。第2次世界大戦時に別れ別れになっていた元夫婦の悲哀映画だ。ストーリーの大筋はあまりにも有名だが、ディテールはすっかり忘れていた。地平線まで続くひまわり畑と哀愁こもったヘンリーマンシー二の主題歌が繰り返し流れるのが印象に残っていた。

二次大戦終結後のイタリア。
出征したきり行方不明の夫の消息を求め、役所へ日参する女性の姿があった。
戦時中、お針子のジョバンナ(ソフィア・ローレン)とアフリカ戦線行きを控えた兵士・アントニオ(マルチェロ・マストロヤンニ)は海岸で出会い恋に落ちた。結婚休暇を目当てに結婚式を挙げたふたりは幸せな新婚の日々を過ごす。精神疾患による除隊を目論んだアントニオは首尾よく精神病院に入院するが、仮病がわかってしまう。懲罰の為、ソ連戦線へと送られる。

終戦後、ジョバンナは年老いたアントニオの母親を励ましながら夫の帰りを何年も待ち続けた。同じ部隊にいたという男に出会う。男の話によるとアントニオは敗走中、極寒の雪原で倒れたという。ジョバンナは生存を確かめるため、ソ連へと足を運ぶ。

かつてイタリア軍が戦闘していたという街でアントニオの写真を見せて回るジョバンナだったが、一向に消息が掴めない。 言葉も通じない異国で懸命にアントニオを探し続けているうちに、写真を見た人からあの家の主人じゃないのかなと一軒の家を紹介される。家に向かうと洗濯物を干す若い女性がいた。無言でその女性を見つめる主人公だ。幼い女の子供もいる。そして主人公はその女性にアントニオの写真を見せる。

ロシア人女性・マーシャ(リュドミラ・サベーリエワ)は家の中にジョバンナを向かい入れる。動揺しながらも家の中で待つジョバンナだ。やがて汽笛が聴こえ、マーシャはジョバンナを駅に連れて行く。汽車から次々と降り立つ労働者たちの中にアントニオの姿があったが。。。

ロシアに向かって夫を探しに行ったあとで2人が出会うシーンは映画史上に残る名シーンであろう。そのシーンだけはさすがに背筋がぞくっとする。でも2人が知り合ってから出征する途中までは比較的緩慢だ。ソフィアが懸命に夫を探そうと、役所に怒鳴りこんだり、ロシアの役所と人と現地をまわるシーンとなってくると、グイッと引き締まってくる。同時にソフィアの表情が幸せだったころより美しく見えてくる。

主演2人の存在感があまりに強いので、すっかりその存在を忘れていたが、現地で妻になったマーシャを演じたリュドミラ・サベーリエワがかわいい。濃い女ソフィアローレンと対照的なやさしい匂いのする女性である。旧ソ連の体操選手クチンスカヤを連想する可憐な姿に惹かれる。監督はあえて正反対の彼女を起用したのだと思う。旧ソ連の名作「戦争と平和」にも出ていた美人のロシア人だ。我々が日本で酔った勢いで行くロシア人パブにはアバズレばかりでこんな可憐な美人はいない。

この映画の脚本にはいくつか欠点もある。ネタばれ系なので控えるが明らかにおかしい部分がある。当然この映画の撮影当時は冷戦が続いているわけで映画撮影の許可をもらうのも大変だったろう。それを差し引いて考えねばならないだろう。ヴィットリオ・デ・シーカ監督は映画「終着駅」ジェニファージョーンズとモンゴメリークリフトを起用し、駅での名シーンをつくった。ここでもその流れを組む。駅というのはドラマを生む。

初めてみたのが小学生、次に見たのは名画座で20代だったかな?
それぞれに違う思いがある。もう一度出会ったときに2人が交わす会話は大人になった時でないとわからないものがある気がした。

ひまわり
戦争で離れ離れの2人とその再会
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