映画とライフデザイン

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映画「赤目四十八瀧心中未遂」 寺島しのぶ

2013-01-16 23:12:23 | 映画(日本 2013年以降主演女性)
映画「赤目四十八瀧心中未遂」を久々にみた。
車谷長吉の直木賞作品の映画化である。

年末、関西にいった時尼崎や天王寺に久々に寄った。そういえばこの映画で両方の町が映っていたなあと思い。ふと見てみたくなった。
寺島しのぶ はこの映画と「ヴァイブレータ」の両方で大胆なヌードを披露して映画界の主演女優賞を独占した。彼女が女優として一皮むけるきっかけになった映画である。見直してみると確かに30少し過ぎの寺島が美しい。


兵庫県の尼崎が舞台だ。一人の男生島(大西滝次郎)が尼崎の商店街の一角にやってきた。彼はそれまでは別の労務者街にいた。主人公は焼き鳥屋の店主勢子ねえさん(大楠道代)と会う。元々は育ちも悪くなく、大学も出た主人公だったが、挫折した。さっそくに勢子ねえさんに住処へ連れていかれる。古臭い風呂なしの共同住宅であった。その一室で焼き鳥屋で使うモツ肉や鳥肉の串刺しをする仕事を始める。その共同住宅には社会の底辺を泳ぐいろんな人たちが住んでいた。娼婦やヤクザ、そして刺青の仕事師彫眉(内田裕也)がいた。
無口な主人公はただひたすらに串を刺してゆく。

住んでいるとその共同住宅では異常な出来事が次々起きていた。
勢子ねえさんの知り合いに綾(寺島しのぶ)がいた。姉さんによれば彼女は朝鮮人。自ら「ドブ川の泥の粥すすって育った女」と言う。兄貴はヤクザだ。刺青師と暮らし、女の背中には一面に刺青が翼を広げていた。無口な主人公もいくつかの事件がきっかけで綾と話をするようになる。綾は生島に自分を連れて逃げるよう懇願するが。。。。

長まわし気味の映像だ。2時間半以上の長丁場になるが、だれない。最初見たときに、尼崎の共同住宅のドツボにはまったような連中に驚いたものである。実際に阪神尼崎駅に降りてみると、その雰囲気がつかめてくる。ストーリーの大枠は上記のとおりだが、一緒に住む社会の底辺にいる連中が絡む小さい話を積み重ねている。その中でも強いオーラを出しているのは内田裕也であろう。長髪の刺青師は演じているというより地でいっているような迫力がある。その内田裕也演じる刺青師が我々に一つの謎を与える。紙で包まれた1つの箱を主人公に「数日間という約束」で預ける。ところが、そのままになっている。どうしたら良いのか?戸惑う主人公だ。

大楠道代はここでも貫禄がある。この2人から出てくる何かは違う。

天王寺駅を映し出した後、動物園や四天王寺、新世界あたりを映す。ついこの間四天王寺は見たばかりだ。ホテル街へも2人でいく。「ヴァイブレータ」の時も感じたが寺島しのぶは場末のラブホがよく似合う。梨園の名門で育った割にそう思わせるのは、東映ヤクザ映画の血筋も流れているからかもしれない。母親からはヌードはダメと大反対されたようだけど、ここで決断しなかったら今の彼女はなかったろう。

主題になる赤目四十八瀧は実に美しい。主人公たちは近鉄電車に乗って三重の赤目口に向かう。それまでにドツボな町を映し続けた後にでてくるので、コントラストが強い。栃木に赴任しているころ、滝をよく見て歩いたものだ。日光の代表的な滝ばかりでなく、那須や隣接県の方もよく出かけた。さすがに冬は寒々しいが、夏は滝が発散するイオンの流れがいい。それにしても赤目四十八瀧には多種多様な滝があるものだ。三重の名張は大阪にいた時は仕事で何度か行ったが、この滝は見ていない。生きている間には一度は寄りたい。

傑作というものは何度見てもいいものだ。

(参考作品)

赤目四十八瀧心中未遂
下流社会で泳ぐ人たち


ヴァイブレータ
ゆきずりの関越路
コメント
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