映画「小さいおうち」を映画館で見た。
後味がよかった映画を見た。山田洋次監督作品は欠かさず見ている。
(ちなみに自分の高校の大先輩:最近母校が甲子園に出ることになって周辺は大騒ぎ)
中島京子の直木賞小説を原作にした家族を描くのがうまい山田洋次監督らしい作品だ。(原作は未読)前作「東京家族」が小津安二郎のオマージュを意識しすぎて不自然に自分は感じた。それに比較するとずっと良くなっている。クレジットの主役は格で松たか子であるが、今回は黒木華が純朴な家政婦を好演した。これはうまい。
物語は現代ではじまる。大学生の健史(妻夫木聡)の大伯母タキ(倍賞千恵子)が亡くなった。健史はときどきタキの家に遊びに行き話し相手になっていた。タキは生涯独身だったが、その身の上をノートに綴っておくように健史が勧めていた。
昭和10年、純真な18の娘布宮タキ(黒木華)が雪深い山形から上京してきた。最初は文京区の作家(橋爪)の家で女中奉公したが、すぐに東京雪が谷の住宅地に建つモダンな赤い三角屋根の家に移り、女中として住み込み奉公を始める。家の主人で玩具会社の常務である平井雅樹(片岡孝太郎)、その妻・時子(松たか子)、5歳になる息子の恭一とともに穏やかな日々を過ごしていた。息子の杏一が高熱を出して小児麻痺になる恐れがあった。名医がいる日本橋までタキが連れていって病状が好転したことで家族の信頼も得られていた。
ある日、雅樹は部下の板倉正治(吉岡秀隆)という青年を連れてきた。弘前出身の美大出で他の若い社員とは若干違っていた。時子とは気が合い、下宿も近いので何度も家に遊びに来るようになった。時子も心が板倉へと傾いていく。そんな時、板倉にお見合い話が出てくる。若者が次から次へと出征する中、丙種合格の板倉は適齢期の娘を抱えた親からは貴重な存在と思われていたのだ。夫からこういうのは女性がやった方がいいとお見合いをまとめるように指示を受けるが、時子の気持ちは複雑だった。それでも彼女は板倉の下宿に出向いて、説得にあたろうとするのであるが。。。
松たか子はどちらかというと現代的なお嬢さん顔をしている。一方で「ヴィヨンの妻」でも好演したように戦前の若奥さんを演じても不自然さを感じない。梨園の家庭に育ったせいか、着物もよく似合う。今回は不倫の香りをちらつかせるが、露骨でない。彼女にしては普通の演技といった印象だ。
今回は黒木華がまさに適役である。現代的女性を演じた「舟を編む」とは正反対だ。ウブな家政婦という設定がピッタリの演技で、決して出しゃばらない。その彼女も同じ東北出身という同郷のよしみで、はっきりと言葉にはしないが、板倉に好感を密かに持っている。そこが後半ポイントになってくる。山田監督もぐさっと脚本のセリフでだすわけではない。でも観客にそれとなく感じさせる。この柔らかさがいい。
最初吉岡秀隆が出てきたときに、松たか子が夫の部下にしては「素敵な人」という表現をする。さすがにこれには違和感を感じるが、津軽生まれの美大出身の男という設定からは決して外していない気が徐々にしてくる。「三丁目の夕日」の売れない小説家に通じるキャラクターで演じる。これはこれでいいのではないか。どちらかというと、最初の松たか子のセリフを外せば何も問題なかったのかもしれない。山田洋次作品なので、身近に接触しても露骨に2人が交わるシーンはない。あくまでも想像に任せる。この感覚は昭和30年代の映画のスタイルだ。おそらく別の監督がつくったら違うつくり方をしたかもしれないが、自分はこの映画のスタイルが好きだ。
今回の出演者は前作「東京家族」とかなりダブる。橋爪功、吉行和子夫妻役に加えて小林稔持や三平のせがれ、中島朋子、妻夫木聡と新しい山田組が勢ぞろい。それに加えて約50年の付き合いと言える倍賞千恵子とその息子役だった吉岡秀隆を起用する。使いやすい俳優をベースにした方が監督からするとやりやすいだろう。倍賞千恵子は年とったなあ。意外にもいい味を出していたのはラサール石井だ。もともと松竹では喜劇中心だった山田洋次監督はこういう役者の使い方はうまい。
大きな問題なく心地良く映画が見れたが、ちょっと違うなあ?と思ったのが昭和10年代前半の厨房だ。これって完全な現代のシステムキッチンだ。昭和30年代を映したとしてもここまでは進化していない。あとは概ね大丈夫だけど、ちょっと時代考証おかしいかなあ?あとは妻夫木のトンチンカンな時代考証のセリフはわざとやっている印象を持ったが、それでも最後にかけての手紙のやり取りはちょっと違うかなといった印象を持つ。
時子が手紙を出す住所を見ると、雪が谷の自宅から上池台の下宿に出している。電車は池上線だ。以前「おとうと」でも石川台付近を舞台にしていた。今回最寄駅は石川台と長原と考えるべきだろう。原作を読んでいないのでピントはずれかもしれないが、このエリアって山田洋次監督に何か縁があるのであろうか?
快適な2時間半だった。
この映画をみると、とんかつが食べたくなる。見終わってから大盛りのキャベツと厚切りのロースを食べた。
後味がよかった映画を見た。山田洋次監督作品は欠かさず見ている。
(ちなみに自分の高校の大先輩:最近母校が甲子園に出ることになって周辺は大騒ぎ)
中島京子の直木賞小説を原作にした家族を描くのがうまい山田洋次監督らしい作品だ。(原作は未読)前作「東京家族」が小津安二郎のオマージュを意識しすぎて不自然に自分は感じた。それに比較するとずっと良くなっている。クレジットの主役は格で松たか子であるが、今回は黒木華が純朴な家政婦を好演した。これはうまい。
物語は現代ではじまる。大学生の健史(妻夫木聡)の大伯母タキ(倍賞千恵子)が亡くなった。健史はときどきタキの家に遊びに行き話し相手になっていた。タキは生涯独身だったが、その身の上をノートに綴っておくように健史が勧めていた。
昭和10年、純真な18の娘布宮タキ(黒木華)が雪深い山形から上京してきた。最初は文京区の作家(橋爪)の家で女中奉公したが、すぐに東京雪が谷の住宅地に建つモダンな赤い三角屋根の家に移り、女中として住み込み奉公を始める。家の主人で玩具会社の常務である平井雅樹(片岡孝太郎)、その妻・時子(松たか子)、5歳になる息子の恭一とともに穏やかな日々を過ごしていた。息子の杏一が高熱を出して小児麻痺になる恐れがあった。名医がいる日本橋までタキが連れていって病状が好転したことで家族の信頼も得られていた。
ある日、雅樹は部下の板倉正治(吉岡秀隆)という青年を連れてきた。弘前出身の美大出で他の若い社員とは若干違っていた。時子とは気が合い、下宿も近いので何度も家に遊びに来るようになった。時子も心が板倉へと傾いていく。そんな時、板倉にお見合い話が出てくる。若者が次から次へと出征する中、丙種合格の板倉は適齢期の娘を抱えた親からは貴重な存在と思われていたのだ。夫からこういうのは女性がやった方がいいとお見合いをまとめるように指示を受けるが、時子の気持ちは複雑だった。それでも彼女は板倉の下宿に出向いて、説得にあたろうとするのであるが。。。
松たか子はどちらかというと現代的なお嬢さん顔をしている。一方で「ヴィヨンの妻」でも好演したように戦前の若奥さんを演じても不自然さを感じない。梨園の家庭に育ったせいか、着物もよく似合う。今回は不倫の香りをちらつかせるが、露骨でない。彼女にしては普通の演技といった印象だ。
今回は黒木華がまさに適役である。現代的女性を演じた「舟を編む」とは正反対だ。ウブな家政婦という設定がピッタリの演技で、決して出しゃばらない。その彼女も同じ東北出身という同郷のよしみで、はっきりと言葉にはしないが、板倉に好感を密かに持っている。そこが後半ポイントになってくる。山田監督もぐさっと脚本のセリフでだすわけではない。でも観客にそれとなく感じさせる。この柔らかさがいい。
最初吉岡秀隆が出てきたときに、松たか子が夫の部下にしては「素敵な人」という表現をする。さすがにこれには違和感を感じるが、津軽生まれの美大出身の男という設定からは決して外していない気が徐々にしてくる。「三丁目の夕日」の売れない小説家に通じるキャラクターで演じる。これはこれでいいのではないか。どちらかというと、最初の松たか子のセリフを外せば何も問題なかったのかもしれない。山田洋次作品なので、身近に接触しても露骨に2人が交わるシーンはない。あくまでも想像に任せる。この感覚は昭和30年代の映画のスタイルだ。おそらく別の監督がつくったら違うつくり方をしたかもしれないが、自分はこの映画のスタイルが好きだ。
今回の出演者は前作「東京家族」とかなりダブる。橋爪功、吉行和子夫妻役に加えて小林稔持や三平のせがれ、中島朋子、妻夫木聡と新しい山田組が勢ぞろい。それに加えて約50年の付き合いと言える倍賞千恵子とその息子役だった吉岡秀隆を起用する。使いやすい俳優をベースにした方が監督からするとやりやすいだろう。倍賞千恵子は年とったなあ。意外にもいい味を出していたのはラサール石井だ。もともと松竹では喜劇中心だった山田洋次監督はこういう役者の使い方はうまい。
大きな問題なく心地良く映画が見れたが、ちょっと違うなあ?と思ったのが昭和10年代前半の厨房だ。これって完全な現代のシステムキッチンだ。昭和30年代を映したとしてもここまでは進化していない。あとは概ね大丈夫だけど、ちょっと時代考証おかしいかなあ?あとは妻夫木のトンチンカンな時代考証のセリフはわざとやっている印象を持ったが、それでも最後にかけての手紙のやり取りはちょっと違うかなといった印象を持つ。
時子が手紙を出す住所を見ると、雪が谷の自宅から上池台の下宿に出している。電車は池上線だ。以前「おとうと」でも石川台付近を舞台にしていた。今回最寄駅は石川台と長原と考えるべきだろう。原作を読んでいないのでピントはずれかもしれないが、このエリアって山田洋次監督に何か縁があるのであろうか?
快適な2時間半だった。
この映画をみると、とんかつが食べたくなる。見終わってから大盛りのキャベツと厚切りのロースを食べた。