映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

映画「小さいおうち」 山田洋次

2014-02-12 21:39:46 | 映画(日本 2013年以降主演女性)
映画「小さいおうち」を映画館で見た。
後味がよかった映画を見た。山田洋次監督作品は欠かさず見ている。
(ちなみに自分の高校の大先輩:最近母校が甲子園に出ることになって周辺は大騒ぎ)

中島京子の直木賞小説を原作にした家族を描くのがうまい山田洋次監督らしい作品だ。(原作は未読)前作「東京家族」が小津安二郎のオマージュを意識しすぎて不自然に自分は感じた。それに比較するとずっと良くなっている。クレジットの主役は格で松たか子であるが、今回は黒木華が純朴な家政婦を好演した。これはうまい。

物語は現代ではじまる。大学生の健史(妻夫木聡)の大伯母タキ(倍賞千恵子)が亡くなった。健史はときどきタキの家に遊びに行き話し相手になっていた。タキは生涯独身だったが、その身の上をノートに綴っておくように健史が勧めていた。

昭和10年、純真な18の娘布宮タキ(黒木華)が雪深い山形から上京してきた。最初は文京区の作家(橋爪)の家で女中奉公したが、すぐに東京雪が谷の住宅地に建つモダンな赤い三角屋根の家に移り、女中として住み込み奉公を始める。家の主人で玩具会社の常務である平井雅樹(片岡孝太郎)、その妻・時子(松たか子)、5歳になる息子の恭一とともに穏やかな日々を過ごしていた。息子の杏一が高熱を出して小児麻痺になる恐れがあった。名医がいる日本橋までタキが連れていって病状が好転したことで家族の信頼も得られていた。

ある日、雅樹は部下の板倉正治(吉岡秀隆)という青年を連れてきた。弘前出身の美大出で他の若い社員とは若干違っていた。時子とは気が合い、下宿も近いので何度も家に遊びに来るようになった。時子も心が板倉へと傾いていく。そんな時、板倉にお見合い話が出てくる。若者が次から次へと出征する中、丙種合格の板倉は適齢期の娘を抱えた親からは貴重な存在と思われていたのだ。夫からこういうのは女性がやった方がいいとお見合いをまとめるように指示を受けるが、時子の気持ちは複雑だった。それでも彼女は板倉の下宿に出向いて、説得にあたろうとするのであるが。。。



松たか子はどちらかというと現代的なお嬢さん顔をしている。一方で「ヴィヨンの妻」でも好演したように戦前の若奥さんを演じても不自然さを感じない。梨園の家庭に育ったせいか、着物もよく似合う。今回は不倫の香りをちらつかせるが、露骨でない。彼女にしては普通の演技といった印象だ。



今回は黒木華がまさに適役である。現代的女性を演じた「舟を編む」とは正反対だ。ウブな家政婦という設定がピッタリの演技で、決して出しゃばらない。その彼女も同じ東北出身という同郷のよしみで、はっきりと言葉にはしないが、板倉に好感を密かに持っている。そこが後半ポイントになってくる。山田監督もぐさっと脚本のセリフでだすわけではない。でも観客にそれとなく感じさせる。この柔らかさがいい。

最初吉岡秀隆が出てきたときに、松たか子が夫の部下にしては「素敵な人」という表現をする。さすがにこれには違和感を感じるが、津軽生まれの美大出身の男という設定からは決して外していない気が徐々にしてくる。「三丁目の夕日」の売れない小説家に通じるキャラクターで演じる。これはこれでいいのではないか。どちらかというと、最初の松たか子のセリフを外せば何も問題なかったのかもしれない。山田洋次作品なので、身近に接触しても露骨に2人が交わるシーンはない。あくまでも想像に任せる。この感覚は昭和30年代の映画のスタイルだ。おそらく別の監督がつくったら違うつくり方をしたかもしれないが、自分はこの映画のスタイルが好きだ。

今回の出演者は前作「東京家族」とかなりダブる。橋爪功、吉行和子夫妻役に加えて小林稔持や三平のせがれ、中島朋子、妻夫木聡と新しい山田組が勢ぞろい。それに加えて約50年の付き合いと言える倍賞千恵子とその息子役だった吉岡秀隆を起用する。使いやすい俳優をベースにした方が監督からするとやりやすいだろう。倍賞千恵子は年とったなあ。意外にもいい味を出していたのはラサール石井だ。もともと松竹では喜劇中心だった山田洋次監督はこういう役者の使い方はうまい。

大きな問題なく心地良く映画が見れたが、ちょっと違うなあ?と思ったのが昭和10年代前半の厨房だ。これって完全な現代のシステムキッチンだ。昭和30年代を映したとしてもここまでは進化していない。あとは概ね大丈夫だけど、ちょっと時代考証おかしいかなあ?あとは妻夫木のトンチンカンな時代考証のセリフはわざとやっている印象を持ったが、それでも最後にかけての手紙のやり取りはちょっと違うかなといった印象を持つ。
時子が手紙を出す住所を見ると、雪が谷の自宅から上池台の下宿に出している。電車は池上線だ。以前「おとうと」でも石川台付近を舞台にしていた。今回最寄駅は石川台と長原と考えるべきだろう。原作を読んでいないのでピントはずれかもしれないが、このエリアって山田洋次監督に何か縁があるのであろうか?

快適な2時間半だった。
この映画をみると、とんかつが食べたくなる。見終わってから大盛りのキャベツと厚切りのロースを食べた。
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映画「暗黒街大通り」 高倉健

2014-02-12 17:07:04 | 映画(日本 昭和35年~49年)
映画「暗黒街大通り」は昭和39年の東映映画
東映が徐々に時代劇から方向転換しているころだ。
若き日の高倉健、梅宮辰夫が兄弟分として出ている。映画としては普通だが、高倉健はさすがの存在感だ。
昭和30年代後半の東京が写しだされる。

博徒中万組の中田万造(金子信雄)とグレン隊東京地下警察会長黒岩元(安倍徹)が手打ち式を行っていた。「成金」の刺青をした任侠人忍朝二郎(大木実)は、中万から黒岩を叩くよう依頼された。失敗に終わった後、狙われ自宅で命を落した。忍鉄也、銀二郎、健三の三兄弟は、まだ幼かった。死ぬ前に父からは何があっても三兄弟で行動を共にするように言われた。
元凶を黒岩とみた三兄弟はこの手打式の会場に殴りこんだ。子供ながらに復讐に向かう姿を見て中万は三人を引き取った。
十数年のち、中万は関東総代となり、黒岩はグレン隊の大組織東京クラブのボスにおさまっていた。中万と黒岩は暗黒街で牙を競い合う。鉄也(高倉健)、銀二郎(梅宮辰夫)、健三(待田京介)の兄弟は関西から九州へと流れたが、育ててくれた中万の元へ戻っていた。

中万の長男勝雄が興行主となった人気歌手三条早苗(中原早苗)の公演が黒岩組の手で邪魔されていた。三兄弟は早速に手際良く黒岩組の愚連隊を捌く。中万組には3人と幼なじみである組長の娘(三田佳子)がいた。彼女は密かに鉄也に心を寄せていた。兄弟は彼らの父の通称であった「成金一家」の再興を条件に、黒岩傘下のシマを次々と奪っていった。黒岩組にとっては今や勝雄に代ったこの兄弟の存在が大きかった。黒岩は色仕掛けや様々な方法で兄弟を危地に陥しいれようとしたが。。。

この昭和39年当時の映画製作でアラが目立つ。ストーリーもありがちで大きな変化はない。
ここでは俳優を追いかけるべきだろう。

高倉健の芸歴でいえば、この年は時代劇では「宮本武蔵」の佐々木小次郎役、「飢餓海峡」の刑事役を演じている。任侠映画は前年の鶴田浩二との共演「飛車角」から演じはじめてきている。このころは、演じればすべて主役というわけではない。それでも後年でも感じる彼でなくてはならない強いオーラがある。どちらかと言えば、二枚目俳優の色彩だ。

梅宮辰夫も後年の「仁義なき戦い」あたりと比較すると、まだまだ若い。ピストル扱いの名手で、人気歌手と恋仲になる役だ。相手はのちの深作欣二監督夫人の中原早苗が演じる。梅宮辰夫はある意味同郷で、彼の父上は自分の小学校の校医だった。風邪引いた時よく診察してもらった。母に言わせると、父上の方がハンサムだと。梅宮医院には美人の看護婦がそろっていたのが子供心に印象に残る。

脇役が自分の役割を心得ているのがいい。
金子信雄は「仁義なき戦い」で見せる意気地のないずるい親分役がここでもうまい。この間見た「総長賭博」でも同じようなテイストだった。晩年の料理評論家ぶりもよかった。

安倍徹はこのあといったいどのくらい悪役を演じたのであろうか?自分が初めてドラマを見るようになってから中年になるまで彼は徹底して悪役だった。ここまで徹することが大事なんだろう。

大木実の任侠人も悪くない。

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