映画とライフデザイン

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映画「笑いのカイブツ」 岡山天音

2024-01-05 22:29:00 | 映画(日本 2022年以降 主演男性)
映画「笑いのカイブツ」を映画館で観てきました。


映画「笑いのカイブツ」はお笑い番組に投稿し続け、お笑いにとりつかれた実在の若者の生き様を描く。岡山天音主演で、菅田将暉、仲野太賀、松本穂香の主演級が脇を固める。監督は数々の名作で助監督をつとめてきた滝本憲吾である。正直なところ、映画ポスターの岡山天音の雰囲気にはいい印象を持たず、どうしようかと思ったが、選択してよかった

観てみると、なかなか強烈な映画だ。岡山天音怪演が際立つ。あえて作品情報を引用する。

大阪。何をするにも不器用で人間関係も不得意な16歳のツチヤタカユキ(岡山天音)の生きがいは、「レジェンド」になるためにテレビの大喜利番組にネタを投稿すること。狂ったように毎日ネタを考え続けて6年。自作のネタ100本を携えて訪れたお笑い劇場で、その才能が認められ、念願叶って作家見習いになる。しかし、笑いだけを追求し、他者と交わらずに常識から逸脱した行動をとり続けるツチヤは周囲から理解されず、志半ばで劇場を去ることに。

自暴自棄になりながらも笑いを諦め切れずに、ラジオ番組にネタを投稿する“ハガキ職人”として再起をかけると、次第に注目を集め、尊敬する芸人・西寺(仲野太賀)から声が掛かる。ツチヤは構成作家を目指し、上京を決意する。(作品情報 引用)


お笑いに取り憑かれた尋常でないキャラクターの男を描く今まで観たことがないタイプの映画である。観る価値はある。

スポーツでも、クリエイターでも特異な人物の成長にスポットをあてるストーリーは割と好きなジャンルだ。男性の場合、映画と相性の良いボクシングなどのスポーツ系が多く、女性だとクリエイターの方が多い。一昨年の吉岡里帆「ハケンアニメ」とか昨年の松岡茉優「愛にイナズマ」なんてその類で、頑張る女性を応援したくなる成長物語だった。脇役にまわる菅田将暉はスポーツ、クリエイター両方とも主役を演じている。ただ、この主人公はちょっとこれまでの成長物語の人物像にはいないタイプだ。


映画を見始めると、乱雑な主人公の部屋がすごいのに気づくだろう。家の中にある紙という紙に書ききったペン書きのお笑いのネタが所狭しと置いてある。アイディアが浮かんだらすぐ机に向かって何かに取り憑かれたようにペンを走らせる。投稿した自らのネタがTVやラジオで取り上げられると喜ぶ。お笑いが好きなのだ。

好きなことに一心不乱に取り組む映画は随分とあるけど、もう少し常識人であることが多い。他と比べても主人公のツチヤは生きることに不器用と解説されるけど、「人間関係不得意」だけでは片付けられないかなりの性格異常である。別に自閉症的症状ではない。生計を立てようと、飲み屋やスーパーなど色んなところでバイトしてもクビになる。アル中に近いくらい酒も飲む。酒グセも悪い。スカウトされて放送作家になろうとしても周囲と問題を起こす。取り巻く連中にも問題はあれど、本人に帰することも多い。ともかく普通じゃない。

そんな主人公ツチヤタカユキを演じた岡山天音の怪演が光る。「伝説のはがき職人」と呼ばれたツチヤタカユキの私小説をもとに映画化している。実際にこんな奴がいたのだ。成長物語によくあるキレイなストーリーではない。認められたい本能が満たされない。笑いのネタを提供しているのが自分なのに手柄は別の人だ。そのジレンマで心身のバランスを崩すことの繰り返しだ。


ショッピングモールのファーストフードの座席でお笑いネタを書き続けるツチヤに好意を寄せる中卒の店員役の松本穂香やさしさに満ちあふれていていい感じだ。お笑い漫才の片割れで番組のDJをやっている芸人役の仲野太賀が、変人だけどお笑いに関しての才能をもつツチヤを何とかしてかばおうとする姿がいい。「オカン」を演じた片岡礼子の肝っ玉かあちゃんも良かった。


それに増してうまいし、まさに適役と思ったのが菅田将暉だ。ツチヤがバイトするスナックの店主で、居酒屋の店員もこなす。別名ピンク。髪の毛をピンクに染めて、半グレ系若者によくいる町のならず者だ。ケンカがバレると刑務所に逆戻りといった危ない筋でもある。

今や、日本のメジャー作品で主演級と出世した菅田将暉も、初期は「ディストラクションベイビー」「そこのみにて光輝く」などの名作でこの映画と似たようなハチャメチャな若者を演じていた。今回は菅田将暉のルーツの大阪が舞台だし、原点回帰といった感じだ。主演級になると自惚れる俳優が多い中で、脇役にまわる菅田将暉の意気込みを賞賛する。

でもこうやって自分のことが主題になる映画ができると、主人公のツチヤタカユキも少しは気が晴れただろう。
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