映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

映画「僕らの世界が交わるまで」 ジェシーアイゼンバーグ&ジュリアンムーア

2024-01-21 19:55:22 | 映画(洋画 2022年以降主演女性)
映画「僕らの世界が交わるまで」を映画館で観てきました。


映画「僕らの世界が交わるまで」は俳優ジェシー・アイゼンバーグの初監督作品である。ジェシー・アイゼンバーグというと、出世作「ソーシャルネットワーク」の早口言葉が記憶に残る。今回はちょっとおせっかいな母と息子にスポットをあてる。世間でリベラルと言われるような人物を登場させる。

DV被害に遭った人々のためのシェルターを運営する母・エヴリン(ジュリアン・ムーア)と、ネットのライブ配信で人気の高校生ジギー(フィン・ウォルフハード)。社会奉仕に身を捧げる母親と、能天気に自分のフォロワーのことしか頭にない息子は、お互いわかりあえない状態だ。

DV被害を受けシェルターにかくまった母親と17歳の高校生がいる。エヴリンは気の優しい少年が気に入り、奨学金を得て大学で福祉を学ぶことを熱心に勧める。でも、少年は父親と同じ自動車修理工を目指しているのでいい迷惑だった。


エヴリンの息子ジギーは音楽活動でSNSのフォロワーを増して投げ銭をもらうことしか考えていない。好きな同級生の女子生徒は政治問題や環境問題に関心を持っていた。でも、ジギーに知識がなく話題にはついていけない。彼女の気を引こうと集会を訪れたり、政治ネタを仕込もうとする。加えて、彼女の作った詩に曲をつけて自分のSNSで歌って,課金をもらう。これでカネを稼ぐという感覚がリベラルなませた女子高生にはガマンならない。余計なことするなというわけだ。


良かれと思って相手にしてあげることが,受ける当人にとってはおせっかいだと言う話

感動するとか心に残るといった話ではない。宣伝文句にあるような共感するといった気持ちには全くなれない。アイゼンバーグがこういった2人を取り上げるのは,現代アメリカ社会にこういったすれ違いがあるからなのであろうか?

エヴリンに熱心に福祉系の大学進学を勧められた少年が,「もし大学に行かなかったら自分はこのシェルターを出て行かなければならないのでしょうか」と言うセリフが印象に残る。そんな悩みをしなければいけない少年がかわいそう


自分も初老の域に入ったので,周囲からおせっかいな勧めごとをされる事はなくなったが,若い頃は目上の人から無理矢理こうした方がいいよとおせっかいをされた経験はある。死んだ自分の母親もジュリアンムーアのようにでしゃばりでおせっかいな女だった。さぞかしイヤな思いをした人もいるのではとこの映画を観て感じる。

先日大学のOB会があり,現役の大学生たちとも懇談した。若い人から元気をいただいた。ついつい余計なお世話にもつながるアドバイスをしてしまうことがある。相手にとってはいい迷惑なんだろうなと考えずに,何か言ってしまうのはやっぱりだめだな。自分自身への戒めのような映画だ。
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映画「サンセバスチャンへ、ようこそ」 ウディアレン

2024-01-21 11:14:26 | 映画(洋画:2022年以降主演男性)
映画「サンセバスチャンへようこそ」を映画館で観てきました。


映画「サン・セバスチャンへ、ようこそ」は久々日本公開のウディ・アレン監督脚本のコメディ作品である。いろんな問題で干されているウディ・アレンだけれども,自分は大好きだ。新作をずっと心待ちにしていた。今回の舞台はスペイン,アメリカから映画祭に来ている映画の元大学教授が主人公だ。主演のウォーレスショーンは初期のウディ・アレン作品から出演している名脇役だ。自分にはルイマル監督「my dinner with Andre」の主演としての印象が強い。ここではウディアレン監督の分身のような存在だ。フランス,スペイン,ドイツの名俳優たちが脇を固める。

かつて大学で映画を教えていたモート・リフキン(ウォーレス・ショーン)は、今は人生初の小説の執筆に取り組んでいる。映画の広報の妻スー(ジーナ・ガーション)に同行し、サン・セバスチャン映画祭に参加。スーとフランス人監督フィリップ(ルイ・ガレル)の浮気を疑うモートはストレスに苛まれ診療所に赴くはめに。そこで人柄も容姿も魅力的な医師ジョー(エレナ・アナヤ)とめぐり合い、浮気癖のある芸術家の夫(セルジ・ロペス)との結婚生活に悩む彼女への恋心を抱き始めるが…。(作品情報引用)


久々ウディ・アレン作品に出会えてうれしい。
例によってウディ・アレン監督自らの分身とも言える男に独白させるシーンが多く,独りよがりなテイストが強い。その分身は映画祭に来ても現代の映画にはなじめない。妻の浮気を疑って悶々とする一方で診察を受けた女医に心をときめかして近づく。分身の主人公と一般人のセリフがかみ合わないのもいつも通りだ。ただ、ウディ・アレン作品らしくて良い。

それにしても,バックに映るサンセバスチャンの街の美しさに驚く。尋常じゃない。海辺の街並みが色鮮やかだ。デイヴィッドリーン監督の「旅情」のように観光案内的にバックの風景にこだわって映像コンテを作る。つい先日ブログアップした「ミツバチと私」も同じスペインのバスク地方が舞台だった。この映画は海辺が中心で、「ミツバチ」がの方だ。映画はいいね。簡単にはいけない所に連れて行ってくれる。

主人公の妻役のジーナ・ガーションはかつてポールヴァーホーヴェン「ショーガール」やウォシャウスキー姉妹「バウンド」のようなエロチックなテイストを持つ作品で存在感を示した。今でもフェロモンムンムンでボリュームたっぷりだ。浮気性の奥さんはフランスの人気俳優ルイガレルが演じる若き映画監督と逢引きをする。夫に関係を問われて、最初は「何もない」と言ったのに、「実は1回、いや2回」と思わず言ってしまうのが笑える。



診療所の魅力的な女医を演じるエレナ・アナヤはペドロアルモドバルの「私が生きる肌」「トークトゥハー」で主演を張った。解説を見るまでまったく気づかなかった。主人公はぞっこんになり、病気でもないのに仮病を使って強引に近づく。夫の浮気にわめき散らすシーンでは荒っぽいスペイン語だ。ペドロアルモドバルの映画を観てからずいぶん経つが、エレナ・アナヤは相変わらず魅力的だ。


ウォーレスショーンはハーバードとオックスフォードで学んだインテリだ。俳優でもあり、脚本家でもある。若い時からはげている。「死刑台のエレベーター」のルイマル監督「my dinner with Andre」は日本未公開だけど、アメリカの知識人に人気が高い1981年の隠れた名作だ。マンハッタンのレストランで繰り広げられるダイアログ観念的なセリフが続く。自分の高校の恩師から自ら翻訳した字幕付きのvideoを頂いて観た。むしろブ男の部類に入るウォーレスショーンもスペインで美人女優に囲まれさぞかしご満悦だったろう。

どんな映画がオススメと言われたウォーレスショーン演じる主人公は稲垣浩監督「忠臣蔵」と黒澤明「影武者」を薦める。これには驚く。薦められた方は唖然としていた。


最後に向けては、イングマールベルイマン監督の「第七の封印」の名シーンである死神とのチェスを再現する。ドイツのアカデミー賞俳優クリストフ・ヴァルツ死神を演じて主人公と一局指す。出てきた時には思わずゾクッとする。死神にチェスで負けたらあの世行きだ。他にも「男と女」「勝手にしやがれ」など古い映画などからの引用が多い。ベテラン映画ファンはその流れにすんなり入っていけるけど、若い人はわけがわからず戸惑うのでは?
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