後藤和弘のブログ

写真付きで趣味の話や国際関係や日本の社会時評を毎日書いています。
中央が甲斐駒岳で山麓に私の小屋があります。

人間が好きだから旅をする(5)温泉とサウナと人とのふれ合い

2008年11月01日 | 旅行記

今年は紅葉が早く、肌寒くなってきました。この季節になるとあたたかい温泉に浸かったりサウナを楽しむことを考えます。

特に東北地方の乳頭温泉や酸ヶ湯は混浴で老若男女が世間話をしながらゆっくり硫黄温泉に浸かります。実に家庭的な雰囲気で、他人でも家族のように自由に話し合います。家人も寛いで話していました。

そんな雰囲気は北欧のサウナにもあります。外国体験のいろいろ(25)の一部を再録します。現役のころストックホルム工科大学へ滞在したことがありました。その折に時々、同僚と大学内にあるサウナに一緒に入りまいした。

昔から旅人を家族のようにもてなすためにサウナに一緒に入るそうです。ですからサウナは各家庭の他に職場の片隅に大きめのものが設置されています。

サウナは北国の香り高い白木で内装されています。隣に談笑する部屋があり、バスタオルを巻いただけの姿で話をします。

酒は雑穀を発酵させ蒸留した透明な強い酒。ロシアのウオッカや中国東北地方の白酒に似ています。この蒸留酒に、学生が自宅の裏庭で摘んできたラズベリーやコケモモの実の汁を入れて風味を付け、大きなボールに入れてあります。それを木製の大さじで各自グラスに取り乾杯するのです。

つまみはバルト海で捕れる小形のロブスターを真っ赤にゆでたもの。それだけです。

サウナの中では、熱すぎると叫ぶ者、もっと熱くしようと焼け石に水を掛ける者の笑い声で大騒ぎになります。十分温まったら談笑する部屋に出て、酒を飲み、ロブスターを割り、勝手な話をします。裸の人間同士は寛いで親しくなります。職場の懇親会にもなります。 サウナに入る度に、はるか日本の混浴の温泉場を思い出していました。

またある年の晩秋、北極圏にあるキルナ市のスウェーデン鋼の会社を訪問しました。そのころ、キルナの会社は斜陽になっていました。豪華なゲストハウスは森閑とし、お客は筆者一人。マホガニーで内装された食堂で夕食を摂っていると、中年のウェイトレスが入って来て「私はこれで帰りますが、食事が終わったら食卓はそのままにして、サウナへ是非入っておやすみください」と言う。

サウナは一段と立派です。前室には、ピンク色の強い酒とライ麦の粉を煎餅のように焼いたものがチーズとともに皿に乗っています。旅人へサウナを提供するのがスウェーデンの伝統であることが分かりました。豊かな気持ちになって眠りについたものです。

最後に日本にあるサウナについて一言します。大きな入浴施設によく立派なサウナは付属的についています。でもその隣にビールやワインを飲んで談笑する白木で内装した部屋が有りません。これではサウナの本当の楽しさが分かりません。それに温泉の浴槽と一緒にしてはいけません。いけませんと言っても両方楽しもうとする人も居ますから文句を言っている訳では有りません。ただ、日本のサウナと北欧のサウナはすごく違うものだとご理解頂きたいのです。(終わり)